エステの回数券・コース契約と中途解約の実務|特定継続的役務提供の書面と精算
最終更新: 2026年7月28日
Summary
1か月超・5万円超のエステ契約は特定継続的役務提供に該当します。概要書面と契約書面の違い、中途解約を断れない理由、精算額の決め方、返金でキャッシュが詰まらない備え方を整理します。
エステの回数券やコースを売り始めると、避けて通れないのが特定商取引法の「特定継続的役務提供」です。1か月を超える期間で5万円を超える契約は、原則としてこの規制の対象になり、契約前と契約時に決められた書面を渡す義務と、途中でやめたいと言われたときに応じる義務が生じます。
ここでつまずくサロンは少なくありません。「回数券は前払いだから返金しない」と決めていたのに、法律上は中途解約に応じなければならず、揉めてから知る、という順序になりがちだからです。

契約書面の様式や解約時の精算額の妥当性は、事案によって判断が変わります。最終的な文面と運用は弁護士・行政書士など専門家の確認を受けてください。この記事は一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。
そもそも自店の契約が規制対象かを見極める
特定継続的役務提供は、業種と期間と金額の3つで決まります。エステティックは対象業種に挙げられており、期間が1か月を超え、かつ支払総額が5万円を超えると該当するとされています。
判断を誤りやすいのが次の3点です。
第一に、金額は1回あたりではなく総額で見ます。1回8,000円の施術でも、10回で80,000円のコースにすれば5万円を超えます。
第二に、期間は「有効期限」で見ます。10回券に6か月の有効期限を付ければ1か月を超えます。「回数券だから期間の定めはない」という運用でも、実態として長期間にわたって役務を提供するのであれば、期間の要件を満たすと判断されうる点に注意が必要です。
第三に、関連商品も対象に含まれます。コース契約とあわせて化粧品やサプリメントを販売した場合、それらも解約時の精算対象になりえます。ホームケア商品をセットで売る設計にしているなら、ここは必ず確認してください。
| 判定項目 | 該当しやすい例 | 該当しにくい例 |
|---|---|---|
| 期間 | 有効期限6か月の10回券 | 当日中に使い切る単発施術 |
| 金額 | 総額80,000円のコース | 都度払い8,000円 |
| 関連商品 | コースと同時に売るホームケア化粧品 | 来店時にその都度買う店販品 |
自店がどちらに当たるかを迷ったら、消費者庁や所轄の窓口に事実関係を伝えて確認するのが確実です。判定を誤ると、書面の不交付という形式的な違反が生じ、後述するとおりクーリング・オフの起算点にも影響します。
渡すべき書面は2種類ある
該当する場合、契約の前と契約の時点で、それぞれ書面を渡す義務があります。1枚で兼ねることはできません。
契約前に渡すのが概要書面です。これから結ぶ契約がどういうものかを、申し込む前に落ち着いて読んでもらうための書類です。事業者の氏名・住所・電話番号、役務の内容、期間と回数、支払総額、中途解約の条件、クーリング・オフができることなどを記載します。
契約時に渡すのが契約書面です。実際に結んだ契約の中身を確定させる書類で、記載事項は概要書面と重なりますが、契約年月日や実際の金額など、その契約に固有の情報が入ります。

実務でよくある誤りを挙げます。
- 申込書にサインをもらうのと同時に1枚だけ渡している。概要書面を事前に渡す手順が抜けている
- 概要書面と契約書面を1枚にまとめている
- 電話番号を携帯だけにしている。所在が確認できる連絡先の記載が求められる
- クーリング・オフの記載を小さな文字で目立たない位置に置いている
書面の不備は、それ自体が是正の対象になるだけでなく、クーリング・オフの期間が進まないという結果を招きます。契約書面を受け取った日から8日間という数え方をするため、書面を渡していない、あるいは記載が欠けている場合、期間が起算されず、いつまでも解除されうる状態が続きます。
書面の記載事項は細かく定められています。項目の網羅と表現の適否は、消費者庁 特定商取引法ガイドで確認したうえで、専門家に見てもらってください。
中途解約は断れない
契約期間中はいつでも中途解約できるとされており、これを契約書で否定することはできません。「回数券の返金は一切不可」という条項を置いても、その部分は無効と判断されうるということです。
解約時に事業者が請求できる額には上限があります。すでに提供した役務の対価に加えて、法令が定める上限額までの損害賠償等を請求できる、という組み立てです。上限を超える違約金を設定していれば、超える部分は無効になります。
ここで実務上の分かれ目になるのが「すでに提供した役務の対価をいくらとするか」です。10回80,000円のコースを3回消化した時点で解約された場合、1回あたり8,000円として24,000円とするのか、それとも通常価格の1回12,000円で計算して36,000円とするのか。後者のほうが店の取り分は大きくなりますが、契約書面にその計算方法を明示していなければ、後から主張しても通りません。
つまり、揉めないための要点は解約を断ることではなく、次の2つを契約前に文章で決めておくことです。
- 消化済み1回あたりをいくらで計算するか
- 未消化分から差し引く金額をどう算定するか
そのうえで、金額の水準そのものが法令の上限に収まっているかを専門家に確認します。上限額は契約の区分によって定めが異なるため、自店の契約形態に当てはめた確認が必要です。
解約を申し出られたときの手順
現場で慌てないよう、順序を決めておきます。
- 申し出を受けた日を記録する。口頭でも解約の意思表示は有効に成立しうるため、「書面でないと受け付けない」という対応は避ける
- 契約書面の控えと施術履歴を突き合わせ、消化回数を確定する
- 契約書面に書いた計算方法どおりに精算額を出す
- 内訳を書いた精算書を渡し、返金額と返金予定日を伝える
- 関連商品がある場合、未開封かどうかなど返品の可否を確認する
このうち2の「消化回数の確定」でつまずくサロンが多くあります。紙の回数券にスタンプを押す運用だと、券を紛失された、押し忘れがある、といった食い違いが起きます。来店ごとに施術記録が自動で残る仕組みにしておけば、履歴が客観的な根拠になります。

記録として残しておくもの
解約の場面で店を守るのは、契約時と施術ごとの記録です。次の5つを残す運用にしてください。
| 残すもの | いつ | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 概要書面を渡した日 | 契約前 | 事前交付の事実を示す |
| 契約書面の控えと交付日 | 契約時 | クーリング・オフの起算点になる |
| カウンセリングの内容 | 契約前と初回 | 効果を保証する説明をしていないことの裏づけ |
| 施術ごとの来店日と施術内容 | 毎回 | 消化回数の根拠になる |
| 解約の申し出日と精算の内訳 | 解約時 | 返金額の妥当性を説明できる |
このうち手書きに頼りやすいのが4番目です。予約表に来店の印を付けるだけだと、キャンセルや振替が発生したときに消化なのか未消化なのかが曖昧になります。予約と顧客ごとの履歴が同じ場所に残る仕組みであれば、この曖昧さは生じません。
返金でキャッシュが詰まらないようにする
回数券やコースは前払いなので、契約時点で現金が入ります。ここで注意したいのは、その現金の一部が「まだ提供していない役務の預かり」だということです。
10回券を10人に売れば、手元には80万円が入ります。しかし全員が3回で解約すれば、消化分を差し引いた相当額を返す必要が生じます。入金時点で全額を使ってしまう運用だと、返金の場面で資金が足りなくなります。
現実的な備え方は次のとおりです。
- 前受金として入った額のうち、未消化分に相当する額は運転資金と分けて把握する
- 月次で「未消化残高」を出す。回数券の発行残数×1回あたりの金額で概算できる
- 有効期限が集中しないよう、販売時期を分散する
なお、前払式の販売は規模によって資金決済法の適用も論点になります。自家発行の前払式支払手段に該当する場合、基準日の未使用残高が一定額を超えると供託などの義務が生じる仕組みがあるため、回数券の発行残高が大きくなってきたら、該当性を専門家に確認してください。
クーリング・オフと中途解約は別のもの
現場で混同されやすいので、整理しておきます。
クーリング・オフは、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、理由を問わず契約をなかったことにできる制度です。原則として支払った額は全額返り、事業者は損害賠償や違約金を請求できません。すでに施術を1回受けていた場合の扱いは契約類型によって定めがあるため、該当する場面では専門家に確認してください。
中途解約は、8日を過ぎた後に「これ以上は続けない」と申し出るものです。こちらは提供済みの対価と法定の上限内の額を差し引いたうえで、残りを返します。
| クーリング・オフ | 中途解約 | |
|---|---|---|
| いつ | 契約書面の交付から8日以内 | 契約期間中いつでも |
| 理由 | 不要 | 不要 |
| 返金 | 原則として全額 | 消化分と所定額を差し引いた残額 |
| 起算点 | 契約書面の交付日 | 解約の意思表示をした日 |
書面の交付が遅れれば遅れるほど、クーリング・オフの窓が閉じません。契約日に必ず渡し、渡した事実を記録に残してください。
有効期限の設定は慎重に決める
回数券に有効期限を付けること自体は一般的な運用ですが、期限が短すぎる、期限切れで一切返金しない、といった設計は消費者契約法の観点から問題になりえます。
考え方の目安を挙げます。
- 提供する回数を無理なく消化できる期間か。10回券に3か月の期限を付ければ、月3回以上通う前提になる
- 期限が近づいたときに知らせる仕組みがあるか。通知せずに失効させる運用は、後で説明を求められたときに苦しい
- 延長の可否と条件を決めているか。病気や転居など、本人の責めに帰さない事情での延長を一律に断らない
期限を過ぎた回数券をどう扱うかは、契約書面に書いた内容がすべてです。「期限後は無効」と書いていても、その条項の有効性は個別に判断されます。返金を一切しない設計にするのではなく、期限内に使い切ってもらう運用のほうが結果的に揉めません。
契約前の説明でトラブルの大半は防げる
解約でこじれる原因は、金額の計算方法そのものよりも、「聞いていない」という認識のずれにあります。契約前の説明で次の4点を口頭でも伝え、書面のどこに書いてあるかを指し示すだけで、後の紛争はかなり減ります。
| 伝えること | 伝え方の例 |
|---|---|
| 期限がある | 有効期限は初回来店日から6か月です |
| 途中でやめられる | 途中解約できます。消化済みの回数分を差し引いて精算します |
| 精算の計算方法 | 消化1回あたり◯円で計算し、残額から所定の額を差し引きます |
| 効果を保証しない | 施術の感じ方には個人差があります |
4つ目は景品表示法と薬機法の観点からも重要です。「必ず痩せます」「シミが消えます」といった説明は、書面に書いていなくても口頭であれば問題になりえます。カウンセリングの台本を作り、スタッフ間で表現を揃えてください。表現の線引きは消費者庁 景品表示法も参照しつつ、迷う表現は使わない判断が安全です。
予約と台帳を分けて持たない
ここまでの実務は、突き詰めると「誰が・いつ・何回受けたか」を正確に持てているかに帰着します。契約書面の控えは紙のファイル、予約はポータル、施術記録はノート、という三分割で運用していると、解約の申し出があった瞬間に3か所を突き合わせる作業が発生します。
VANNAでは予約と顧客台帳が同じ画面にあり、来店の記録が顧客ごとに残ります。メニューごとに所要時間を登録しておけば、カレンダー予約で空き枠が自動計算され、指名や事前決済にも対応します。カレンダー予約はMaxプランの機能で、来店前のメールリマインドは全プランで使えます。料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。決済を使う場合のStripe決済手数料は店舗負担で別途かかります。
回数券の残数管理そのものを自動で行う機能はないため、消化回数は顧客ごとの来店履歴とメモで運用することになります。この点は導入前に把握しておいてください。
現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。申し込みにはクレジットカードの登録が必要で、無料期間の終了後は選択したプランへ自動的に移行します。期間中の解約は無料で、縛りはありません。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。
よくある質問
回数券に「返金不可」と書いておけば中途解約を断れますか
断れません。特定継続的役務提供に該当する契約では中途解約の権利が認められており、これを契約で排除することはできないとされています。返金不可の条項を置いても、その部分は効力を持たないと判断されうるため、断る前提の設計はしないでください。
有効期限が切れた回数券は返金しなくてよいですか
期限切れを理由に一律で返金を拒めるとは限りません。有効期限の設定自体が消費者契約法の観点から問題視される可能性もあります。期限の長さ、期限切れ時の扱い、延長の可否については、契約書面に明記したうえで専門家の確認を受けてください。
契約書面を渡し忘れていた場合はどうなりますか
クーリング・オフの8日間は契約書面を受け取った日から起算されるため、渡していなければ期間が進みません。結果として、契約から相当の時間が経った後でも解除されうる状態が続きます。気づいた時点で速やかに交付し、以後の運用を改めてください。
ホームケア化粧品をセット販売した場合、解約時に返品を受ける必要がありますか
関連商品として販売した場合、解約時の返品の対象になりえます。未開封かどうか、使用済みかどうかで扱いが変わるため、販売時に条件を書面で示しておくことが実務上の備えになります。
5万円以下のコースなら書面は不要ですか
特定継続的役務提供には該当しませんが、それは特定商取引法のこの規制が及ばないというだけです。契約内容を書面で示すこと自体は、トラブル防止の観点で有効です。また、通信販売やオンライン決済を伴う場合は別の表示義務が生じることがあります。
消化1回あたりの単価を通常価格で計算してよいですか
契約書面に計算方法を明示していれば、その方法によることになります。ただし金額の水準が法令の上限を超えていないかは別途確認が必要です。明示していない場合、後から通常価格での計算を主張しても認められないおそれがあります。
出典
本記事は2026年7月時点の一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。契約書面の様式、精算額の算定、有効期限の設定については、必ず弁護士・行政書士等の専門家、または消費者庁・所轄の窓口にご確認ください。VANNAの料金・機能・キャンペーン条件は変更される場合があります。



