本文へスキップ
多店舗展開・事業承継

サロンを閉めずに譲る|事業譲渡で渡すものと、顧客情報の扱い

最終更新: 2026年7月28日

Summary

続けられなくなった店を閉めるのではなく引き継いでもらう選択肢です。譲る対象の分け方、賃借権の承諾、顧客情報の引き継ぎ、価格の考え方、進め方の順序を整理します。

続けられなくなったサロンを、閉めるのではなく引き継いでもらう。この選択肢を知らずに廃業する店があります。

譲渡が成立すれば、設備の廃棄も原状回復も相手が引き受けることがあります。譲る側は費用の負担を減らし、譲り受ける側は初期投資と集客の時間を節約できます。

事業譲渡で渡すものと障害になりうること
事業譲渡で渡すものと障害になりうること

何を譲るのかを分ける

「店を売る」と言っても、実際に渡すものは複数あります。分けて考えてください。

設備と造作です。施術用の椅子やベッド、機器、内装。これらは物として引き渡せます。

賃借権です。物件を引き継ぐには、貸主の承諾が要ります。承諾を得られなければ、譲渡そのものが成立しません。

屋号です。同じ名前で続けるかどうか。既存のお客様にとっては、名前が変わるかどうかが大きな違いになります。

顧客情報です。ここが最も慎重を要する部分で、後述します。

スタッフの雇用です。働いている人がいる場合、そのまま引き継ぐのか、いったん退職するのか。本人の同意なく雇用主を変えることはできません。

譲るもの障害になりうること
設備と造作リース中のものは所有権が自分にない
賃借権貸主の承諾が得られない
屋号商標として他者が登録している場合がある
顧客情報本人の同意なく渡せない場合がある
スタッフの雇用本人の同意が必要

このうち、賃借権の承諾が取れるかどうかが最初の関門です。承諾しない貸主もいるため、話を進める前に確認してください。

顧客情報の引き継ぎ

譲渡で最も慎重に扱うべき部分です。

顧客の個人情報は、取得した際に示した利用目的の範囲内で扱うことが原則です。第三者へ提供するには、原則として本人の同意が必要になります。

一方で、事業の承継に伴って個人データが提供される場合について、第三者提供に該当しないとする扱いが定められています。ただし、この扱いが適用されるかどうかは、承継の形態と実態によります。

実務としては、次の点を確認してください。

譲渡の形態が事業の承継にあたるか。単なる顧客名簿の売買であれば、この扱いは使えません。

承継後の利用目的が、当初の範囲を超えないか。超える場合、本人の同意が必要になります。

お客様への通知をどうするか。法律上の要否とは別に、知らせずに引き継ぐと信頼を損ないます。

顧客情報の引き継ぎで確認することと価格の要素
顧客情報の引き継ぎで確認することと価格の要素

判断は個別の事情に左右されます。顧客情報を含む譲渡を検討するなら、契約を結ぶ前に弁護士に確認してください。ここを誤ると、譲った後に問題が生じます。

価格をどう考えるか

小規模なサロンの譲渡で、価格の相場を示す公式なものはありません。次の要素を積み上げて交渉することになります。

設備の価値です。購入価格ではなく、いま売ったらいくらかで考えます。年式と状態によります。

内装の残存価値です。工事から日が浅く、そのまま使えるなら価値があります。ただし、譲り受ける側が別のコンセプトにしたい場合、価値になりません。

顧客の存在です。継続して来店している方がどれくらいいるか。ただし、譲渡後に残るかは分かりません。過大に評価しないでください。

利益です。継続して利益が出ているなら、その数年分を上乗せする考え方があります。赤字の店では成立しません。

譲る側は高く、譲り受ける側は安く見積もります。数字の根拠を示せるものから積み上げ、それ以外は交渉になります。

なお、負債がある場合、それをどう扱うかも決める必要があります。リースの残債、借入金、未払いの買掛金。引き継ぐのか、譲る側が精算するのか。

譲り受ける側から見た確認事項

買う立場になる場合、確認すべきことがあります。

契約書と許認可です。賃貸借契約の内容、承諾の可否、美容所の登録を引き継げるか。登録は自動的には引き継げないため、手続きが必要になります。

設備の状態です。動作するか、保守を受けられるか、リース中のものはないか。

顧客の実態です。何人が継続して来ているか。名簿の人数ではなく、直近数か月に来店した人数で見てください。

売上と経費の実績です。申告書や帳簿で確認します。口頭の説明だけを信じないでください。

近隣との関係です。過去にトラブルがなかったか。引き継ぐと、その関係も引き継ぐことになります。

譲る理由も聞いてください。体調や家庭の事情なら妥当ですが、立地や競合が原因なら、同じ問題に直面します。

譲渡が成立しやすい店、しにくい店

すべての店が譲れるわけではありません。成立の可能性を左右する要素があります。

成立しやすいのは、次のような店です。

立地に価値がある。駅から近い、通りに面している。譲り受ける側にとって、自分で探す手間が省けます。

設備が使える状態にある。年式が新しく、保守を受けられる。そのまま営業を始められます。

継続して来店している方がいる。開業直後の集客が要らないことは、大きな利点です。

数字を示せる。売上と経費の記録があり、実態を確認できる。判断の材料が揃っていると、話が進みます。

一方、成立しにくいのは次のような場合です。

賃貸借契約が譲渡を認めていない。承諾が得られなければ、物件ごと引き継ぐことはできません。

設備が古く、更新が必要。譲り受ける側から見れば、追加の投資が要ります。

赤字が続いている。立地や競合に構造的な問題がある場合、相手も同じ結果になります。

顧客が特定の施術者に強く結び付いている。その人が辞めれば、顧客も離れます。

自店がどちらに近いかを見て、現実的な期待値を持ってください。

進め方の順序

話が動き出してからの流れを整理します。

まず、条件の大枠を口頭で確認します。何を譲るか、いくらか、いつか。ここで折り合わなければ、詳細に進む意味がありません。

次に、秘密保持の取り決めをします。売上や顧客に関する情報を開示する前に必要です。

次に、譲り受ける側による確認の期間を設けます。書類の確認、設備の点検、必要なら店の見学。

次に、賃貸借の承諾を取ります。貸主が承諾しなければ成立しないため、この時点で確認します。

そのうえで、契約書を作ります。何をいつ引き渡すか、代金の支払い方法、譲る側が負う責任の範囲。ここは専門家に作成を依頼してください。

最後に、引き渡しと各種の手続きを行います。

譲渡を進める6つの順序
譲渡を進める6つの順序

引き継ぎ期間を設ける

契約が成立しても、引き渡した翌日から相手がすべてを回せるわけではありません。期間を設けてください。

期間の長さは、1か月から3か月が現実的です。短すぎると引き継ぎきれず、長すぎると譲る側の負担が続きます。

この期間にやることを挙げます。

お客様への紹介です。譲る側が在店し、新しい担当者を紹介します。顔をつないでおくと、その後の継続率が変わります。

業務の手順の共有です。予約の受け方、記録の書き方、仕入先とのやり取り。文書にできるものは文書にし、それ以外は実際にやりながら伝えます。

近隣や取引先への挨拶です。同行して回ると、関係が引き継がれやすくなります。

トラブル時の対応です。引き渡し後に問題が起きたとき、どこまで譲る側が関与するか。契約書に定めておいてください。

期間中の対価も決めてください。無償で在店するのか、報酬を受けるのか。曖昧にすると、後で不満が出ます。

引き継ぎ期間にやること目的
お客様への紹介継続率を保つ
業務の手順の共有運営が止まらないようにする
近隣と取引先への挨拶関係を引き継ぐ
トラブル時の対応の取り決め後の紛争を防ぐ

引き渡し後にやること

譲る側にも、渡した後の手続きが残ります。

廃業に関する届出をしてください。税務署への廃業届、保健所への廃止届。事業を続けないなら必要です。

契約の解除をしてください。譲渡の対象にならなかった契約は、自分で解約します。予約システム、通信、保険。

確定申告をしてください。譲渡した年の所得を申告します。譲渡による所得の扱いは、内容によって区分が変わるため、税理士に確認してください。

お客様への挨拶をしてください。法律上の義務ではありませんが、長く通っていただいた方への礼儀です。

VANNAを使っている場合、顧客データはCSVで書き出せます。譲渡の対象に含めるかどうかは前述のとおり慎重な判断が要りますが、いずれにせよ契約の解約前に必要な処理を済ませてください。解約後はデータを取り出せません。契約はいつでも解約でき、縛りはありません。

譲り受ける側が続けて使う場合、契約は引き継げないため、新たに契約することになります。この点は事前に伝えてください。

料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。

スタッフへ譲る場合

働いているスタッフが引き継ぐ形は、小規模なサロンで最も現実的な選択肢の一つです。

利点があります。店の運営を知っているため、引き継ぎが短くて済みます。お客様も担当者を知っているため、離れにくくなります。近隣や取引先との関係も既にできています。

一方、注意する点もあります。

資金が用意できるかです。従業員の立場では、まとまった資金を持っていないことが普通です。分割での支払いや、一定期間かけて権利を移す形を検討することになります。

条件の交渉が難しくなることです。雇用の関係があると、対等な交渉になりにくくなります。断りづらい状況で進めると、後で不満が残ります。

他のスタッフへの影響です。1人が引き継ぐと決まったとき、他の人がどう受け止めるか。事前に考えておいてください。

譲る側が完全に離れるかどうかも決めてください。相談役として残るのか、きれいに手を引くのか。曖昧なままだと、経営の判断が二重になります。

いずれの場合も、条件は書面にしてください。関係が近いほど、口約束で済ませたくなりますが、後で認識がずれます。

相手をどう探すか

譲渡の相手は、次のような経路で見つかります。

同業者のつながりです。近隣の店、講習会で知り合った人、取引先からの紹介。小規模な譲渡では、この経路が最も現実的です。

自店のスタッフです。独立を考えている人がいれば、のれん分けに近い形になります。関係を知っているため、引き継ぎが円滑に進みます。

仲介する業者です。手数料がかかりますが、相手を探す手間は減ります。ただし、小規模な案件を扱わない業者もあります。

物件の貸主や不動産業者です。次の借主を探す立場にあるため、興味を持つ人を知っていることがあります。

いずれの場合も、話が固まる前に周囲へ広めないでください。譲渡を検討していることがお客様やスタッフに伝わると、動揺を招きます。

よくある質問

赤字の店でも譲渡できますか

設備や立地に価値があれば成立することがあります。ただし、利益を根拠とした価格は付きません。廃棄費用と原状回復費を相手が負担してくれるだけでも、閉めるより負担が軽くなる場合があります。

美容所の登録は引き継げますか

自動的には引き継げません。譲り受ける側が新たに手続きをする必要があります。構造設備が基準を満たしているかの確認も改めて必要になる場合があるため、所轄の保健所に確認してください。

顧客名簿だけを売ることはできますか

顧客情報を単独で第三者へ提供することは、原則として本人の同意が必要です。事業の承継に伴う提供とは扱いが異なります。安易に進めず、弁護士に確認してください。

スタッフはそのまま引き継げますか

本人の同意なく雇用主を変えることはできません。譲渡の形態によって手続きが変わるため、社会保険労務士に確認してください。本人への説明は、早い段階で行ってください。

譲渡の話をお客様にいつ伝えますか

契約が成立し、引き渡しの日が確定してから伝えてください。検討の段階で伝えると、成立しなかったときに混乱します。伝える際は、いつから誰が担当するかを明確にしてください。

譲った後に責任を問われることはありますか

契約書に定めた範囲によります。設備の不具合や、開示していなかった負債について、責任を負う取り決めになっていることがあります。契約書の内容は必ず専門家に確認してください。

引き継ぎ期間はどれくらい必要ですか

1か月から3か月が現実的です。短すぎると引き継ぎきれず、長すぎると譲る側の負担が続きます。期間中に報酬を受けるかどうかも、あらかじめ決めてください。

譲渡を検討していることは誰に相談できますか

税理士、弁護士、取引のある金融機関が相談先になります。同業者に相談する場合、情報が広まる可能性を考慮してください。話が固まる前にお客様やスタッフへ伝わると、動揺を招きます。

出典

本記事は2026年7月時点の一般的な情報の整理であり、個別の法的助言や税務上の助言ではありません。顧客情報の引き継ぎ、契約書の内容、譲渡による所得の扱い、雇用の承継については、弁護士・税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。VANNAの料金・機能・キャンペーン条件は変更される場合があります。