サロンを閉めるときの手続き|届出の期限・回数券の返金・顧客データの扱い
最終更新: 2026年7月28日
Summary
閉店は開業と同じくらい手順があり、期限のある手続きが同時に走ります。閉店日を決める前に確認する3つ、告知の順序、前受金の返金、行政への届出、契約の解除、顧客データの扱いを整理します。
店を閉めることは、開くことと同じくらい手順があります。しかも開業時と違って、期限のある手続きが同時に走り、遅れると加算税や違約金という形で費用が発生します。
閉店を決めたら、まず順序を確認してください。順番を間違えると、契約が切れているのに設備が残っている、といった状態になります。

閉めると決めてから最初にすること
決断したら、次の3つを最初に確認してください。ここが以降のすべての段取りを縛ります。
第一に、賃貸借契約の解約予告期間です。多くの事業用物件では3か月から6か月前の通知が必要とされています。契約書を読み、いつまでに通知すれば希望の日に退去できるかを逆算してください。
第二に、原状回復の範囲です。内装をどこまで戻すかで費用が大きく変わります。数十万円から数百万円になることがあり、この見積もりを取らずに閉店日を決めると資金が足りなくなります。
第三に、残っている前受金です。回数券やコースを販売しているなら、未消化分の返金義務が生じます。何枚の回数券が未消化で、合計いくらになるかを把握してください。
| 最初に確認すること | 確認先 |
|---|---|
| 解約予告期間 | 賃貸借契約書 |
| 原状回復の範囲と費用 | 契約書と内装業者の見積もり |
| 未消化の前受金 | 自店の販売記録 |
この3つが分かってはじめて、閉店日を決められます。逆に言えば、これを確認する前に日付を公表しないでください。
お客様への告知
告知は、閉店日から逆算して余裕を持って行います。最終営業日の直前に伝えると、来店できないまま終わる方が出ます。
伝える内容は4つです。
いつ閉めるか。最終営業日を明示します。
なぜ閉めるか。詳細に説明する必要はありませんが、一言は添えてください。何も言わないと憶測を招きます。
回数券やコースをどうするか。これがいちばん重要です。残りをどう扱うか、返金するのか、いつまでに使ってもらうのかを明確に示します。
今後どうするか。別の場所で続けるのか、完全にやめるのか。移転や独立なら、行き先を案内できます。

告知の順序は、値上げと同じです。来店してくださっている方には口頭で先に伝え、その後にメールや掲示で広く知らせます。掲示で先に知られると、大切にされていないという受け取り方をされます。
スタッフへの対応
雇っている人がいる場合、お客様への告知より先に伝えてください。人づてに知ることになると、信頼を大きく損ないます。
伝えるときに、次の点を明確にしてください。
いつまで働いてもらうか。最終営業日と、その後の片付けに入ってもらうかどうか。
退職の扱いをどうするか。事業の廃止による解雇にあたる場合、解雇予告が必要になります。原則として30日前までの予告か、予告手当の支払いが求められます。
離職票をいつ渡すか。失業給付の手続きに必要な書類です。交付が遅れると本人の受給が遅れます。
有給休暇の残りをどうするか。退職までに取得してもらうのか、他の方法で処理するのか。買い取りの可否は状況によるため、社会保険労務士に確認してください。
次の職場を探す時間も必要です。可能であれば、面接のための休みに配慮してください。
閉店は経営者の判断ですが、働いている人にとっては生活の問題です。手続きを事務的に済ませるのではなく、事情を説明したうえで進めてください。
回数券と前受金の扱い
閉店で最も揉めるのが、未消化の回数券です。
原則として、提供できなくなる分は返金の対象になります。「閉店だから使えなくなる」という理由で一方的に権利を消すことはできません。特に特定継続的役務提供に該当する契約では、中途解約の権利が認められています。
現実的な進め方は次のとおりです。
閉店の告知と同時に、未消化分の扱いを示します。期限までに使い切っていただく、または返金する、という2つの選択肢を提示するのが一般的です。
使い切っていただく場合、閉店日までに予約が集中します。1日の受入数には限りがあるため、予約枠が足りるかを先に計算してください。足りないなら、返金を基本にするか、閉店日を後ろにずらす判断が必要です。
返金の計算方法は、契約書面に記載した方法によります。記載がない場合、購入額を回数で割った単価で計算する形が説明しやすくなります。
返金の原資も確認してください。前受金をすでに運転資金として使っているなら、返金の時点で手元にない可能性があります。
行政への届出
事業をやめる際の届出は、複数の窓口に分かれます。期限があるものから片付けてください。
| 届出 | 提出先 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 廃業届 | 税務署 | 廃業から1か月以内 |
| 事業廃止等申告書 | 都道府県税事務所 | 自治体の定めによる |
| 美容所廃止届 | 保健所 | 廃止から10日以内など自治体の定めによる |
| 青色申告の取りやめ届出書 | 税務署 | 翌年3月15日まで |
| 雇用保険・社会保険の資格喪失 | ハローワーク・年金事務所 | 5日以内など |
| 労働保険の確定精算 | 労働基準監督署 | 50日以内など |
期限は制度と自治体によって異なるため、必ず所轄の窓口で確認してください。特に美容所の廃止届は、保健所ごとに様式と期限が違います。
スタッフを雇っている場合、社会保険と雇用保険の手続きが加わります。離職票の交付が遅れると、本人の失業給付の受給が遅れるため、優先して進めてください。
契約の解除を洗い出す
見落としやすいのが、自動更新される契約です。閉店したのに引き落としが続く、という状態になります。
洗い出す対象を挙げます。
- 賃貸借契約と、それに付随する駐車場や倉庫
- 電気、ガス、水道、通信
- 予約システム、会計ソフトなどの月額サービス
- 各種の保険
- リース契約
- ポータルサイトの掲載契約
- 定期的な清掃やリネンの委託
このうちリース契約は、中途解約ができないことが一般的です。残りの期間分の支払いが必要になるため、閉店の判断をする前に残債を確認してください。
ポータルサイトの掲載も、解約の申し出に期限があることがあります。掲載が続いていると、閉店後も予約が入ってしまいます。
閉める以外の選択肢を先に確認する
決断の前に、閉店以外の道がないかを確認してください。理由によっては、別の形で続けられます。
体力や時間の問題であれば、規模を縮小する選択があります。営業日を減らす、施術メニューを絞る、面貸しに切り替えて自分は施術しない。固定費を下げれば、少ない売上でも成り立つことがあります。
物件の問題であれば、移転という選択があります。家賃の安い場所、自宅の一室、シェアサロンの一席。設備を持ち運べる業態なら、移転のほうが閉店より費用が少ない場合があります。
資金繰りの問題であれば、支払いの猶予を相談する余地があります。家賃の減額交渉、融資の返済条件の変更。手遅れになる前に、金融機関や貸主へ相談してください。返済が滞ってからでは選択肢が減ります。
続ける意思はあるが自分では続けられない場合、事業譲渡という選択があります。設備と顧客と場所をまとめて引き継いでもらう形です。買い手が見つかれば、廃棄費用も原状回復費も相手が負うことがあります。
| 閉店の理由 | 検討できる代替 |
|---|---|
| 体力・時間 | 規模の縮小、面貸しへの切り替え |
| 家賃が重い | 移転、自宅への切り替え |
| 資金繰り | 返済条件の変更、家賃の減額交渉 |
| 続けられないが需要はある | 事業譲渡、のれん分け |
これらを検討したうえで、なお閉めると決めたなら、以降の手順を進めてください。
設備と在庫をどうするか
残る資産の処分方法を決めてください。
売却できるものは、専門の買取業者に見積もりを取ります。美容機器、シャンプー台、セット面。状態と年式によりますが、廃棄より手元に残るものがあります。
譲渡という選択もあります。居抜きで次の借主が決まれば、造作を譲渡して費用を回収できることがあります。原状回復の義務が免除される場合もあるため、貸主に相談する価値があります。
廃棄する場合、事業活動で生じた廃棄物は産業廃棄物として扱われることがあります。家庭ごみとして出せないものがあるため、処分方法を確認してください。
在庫の薬剤や化粧品は、開封済みのものは処分するしかない場合が多くあります。閉店を決めたら、発注を早めに止めてください。
顧客データの扱い
閉店後、顧客の個人情報をどうするかを決めてください。ここは法的な論点が絡みます。
事業を続けない場合、保有し続ける理由がないため、適切な方法で削除または廃棄することになります。紙のカルテはシュレッダーや溶解処理、電子データは復元できない形での消去です。
移転や別業態で続ける場合、引き続き利用することがありえますが、当初の利用目的の範囲内かを確認してください。目的の範囲を超えるなら、本人の同意が必要になる場合があります。
事業を譲渡する場合、顧客情報の引き継ぎには注意が必要です。事業承継に伴う提供として整理できる場合がありますが、実際の可否と手続きは個別の事情によります。弁護士に確認してください。

VANNAを使っている場合、顧客データはCSVで書き出せます。閉店の前に手元へ保存し、その後に契約を解約してください。解約後はデータを取り出せなくなります。書き出したデータを保管し続けるなら、その保管にも安全管理の義務が及ぶ点に注意してください。
契約はいつでも解約でき、縛りはありません。料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。決済を使っている場合、Stripe側の残高と入金予定も確認してください。詳細はVANNA公式 料金でご確認ください。
最終営業日までの3か月
やることを時期で分けておくと、抜けが減ります。解約予告が3か月前の場合の目安です。
3か月前は、契約と見積もりです。貸主へ解約の通知を出し、原状回復の見積もりを取ります。未消化の前受金を集計し、返金の原資を確保します。スタッフへ伝えるのもこの時期です。
2か月前は、告知と調整です。来店中のお客様へ口頭で伝え、その後に広く告知します。回数券の消化予約が集中するため、枠の配分を決めます。設備の売却先を探し始めます。
1か月前は、解除と処分です。各種契約の解約手続き、在庫の消化、廃棄の手配。行政への届出のうち、事前にできるものを確認します。
閉店後は、届出と精算です。廃業届、美容所廃止届、保険の資格喪失。原状回復の工事と引き渡し。顧客データの処理。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3か月前 | 解約通知、原状回復の見積もり、前受金の集計、スタッフへの連絡 |
| 2か月前 | お客様への告知、回数券の消化調整、設備の売却先探し |
| 1か月前 | 各種契約の解約、在庫の処分、届出の準備 |
| 閉店後 | 行政への届出、原状回復と引き渡し、顧客データの処理 |
このうち最も遅れやすいのが、閉店後の届出です。店を閉めた安心感で手が止まりがちですが、期限があるものが残っています。閉店日にリストを作り、順に消していってください。
確定申告を忘れない
廃業した年も確定申告が必要です。1月から廃業日までの所得を申告します。
注意する点を挙げます。
廃業後に発生する費用があります。原状回復費、廃棄費用、税理士への報酬など。これらを経費として扱えるかは状況によるため、税理士に確認してください。
回収できていない売掛金と、支払っていない買掛金の処理が必要です。
減価償却の途中だった資産は、廃業時点までの償却と、売却または廃棄の処理を行います。
前年に納めた税金との精算で、還付を受けられる場合があります。
これらは廃業した年の申告で処理するため、記録を残したまま閉店してください。閉店の忙しさで書類を捨ててしまうと、後から困ります。
よくある質問
閉店の何か月前に決断すべきですか
賃貸借契約の解約予告期間から逆算してください。6か月前の通知が必要なら、実質的にその時点で決断していることになります。加えて、原状回復の見積もりと前受金の把握に時間がかかります。
回数券の返金を分割にできますか
一括で返せない場合、分割の相談をすること自体は可能ですが、応じるかどうかは相手次第です。合意が得られた場合は、金額と時期を書面にしてください。そもそも返金できる資金を確保しておくのが本筋です。
美容所の廃止届を出し忘れるとどうなりますか
自治体によって扱いが異なりますが、届出義務があるものを出していない状態になります。気づいた時点で速やかに所轄の保健所へ相談してください。
屋号やSNSのアカウントはどうすべきですか
続ける予定がないなら、閉店の告知を残したうえで更新を止める形が現実的です。削除すると、過去のお客様が情報を確認できなくなります。移転する場合は、新しい情報へ誘導してください。
開業から短期間で閉める場合、補助金の返還が必要ですか
補助金の種類と交付の条件によります。一定期間の事業継続が条件になっているものがあり、その場合は返還を求められることがあります。交付決定の通知書を確認し、交付元に相談してください。
スタッフにはいつ伝えるべきですか
お客様への告知より前に伝えてください。人づてに知ることになると、信頼を大きく損ないます。次の就職先を探す時間も必要なため、可能な限り早く伝えるのが誠実です。
出典
本記事は2026年7月時点の一般的な情報の整理であり、個別の法的助言や税務上の助言ではありません。届出の期限と様式、前受金の返金、顧客データの扱い、補助金の返還については、所轄の窓口および税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。VANNAの料金・機能・キャンペーン条件は変更される場合があります。



