サロンの定額制・通い放題の設計|向く条件と価格の逆算、やめ方
公開: 2026年7月28日最終更新: 2026年8月1日
Summary
売上が読める一方、設計を誤ると赤字になります。向く条件の4項目、想定利用回数からの価格の逆算、上限の設け方、特定継続的役務提供の該当性、始めた後に見る5つの数字を整理します。
毎月定額で通い放題。この形をサロンで取り入れる店が増えています。
売上が読めるようになる一方で、設計を誤ると赤字になります。使う人と使わない人の差が大きいため、その差を吸収できる価格にしないと成立しません。

定額制が向く条件
すべてのサロンに向く形では、ありません。次の条件を満たすかを、確認してください。
一つは、1回あたりの原価が低いこと。材料をほとんど使わない施術なら、回数が増えても負担が限られます。逆に薬剤を多く使う施術では、来店が増えるほど赤字が近づきます。
二つ目は、施術時間が短いこと。1回30分なら、月に何回来ても枠を圧迫しません。90分の施術で通い放題にすると、枠が埋まって新規を受けられなくなります。
三つ目は、来店の頻度に上限があること。物理的に毎日は来られない施術なら、無制限にしても回数は限られます。
そして、空いている時間帯があること。埋まっていない枠を活用する形なら、追加の負担が小さくなります。
| 条件 | 向く例 | 向かない例 |
|---|---|---|
| 1回の原価 | 低い施術 | 薬剤を多く使う施術 |
| 施術時間 | 短い | 長時間 |
| 頻度の上限 | 物理的に限られる | 何度でも受けられる |
| 枠の余裕 | 空き時間がある | 常に満席 |
これらを満たさない場合は、定額制ではなく回数券や次回予約の割引といった別の形を検討してください。
価格の決め方
価格は、平均的な利用回数から逆算します。
まず、想定する月あたりの利用回数を出してください。全員が上限まで使うわけでは、ありません。実際にはよく使う人と、ほとんど使わない人に分かれます。
次に、1回あたりの原価と施術に使う時間を出します。
そのうえで想定回数を掛けた原価と、その時間で得られたはずの売上を足して、それを上回る価格にしてください。
たとえば想定利用が月4回、1回の原価が500円、1回30分の施術だとします。この場合、原価は2,000円で時間は2時間です。その2時間を通常の施術に使えば得られたはずの粗利を考慮して、価格を決めます。
想定を外すと、赤字になります。月4回のつもりが月8回使われれば、原価も時間も倍になるためです。上限を設けるか、価格に余裕を持たせてください。

上限の設け方
無制限は、危険です。上限を設ける方法を、挙げます。
一つは、回数で制限する方法。「月4回まで」と明示します。分かりやすく、計算もしやすくなります。
二つ目は、時間帯で制限する方法。「平日の14時から16時のみ」といった形で、空いている枠に誘導します。稼働率の改善にも、つながります。
三つ目は、メニューで制限する方法。対象を特定の施術に限り、それ以外は通常料金にします。
そして、予約の取り方で制限する方法。「前日以降の空き枠のみ」とすることで、繁忙期の枠を守れます。
これらは、組み合わせられます。ただし条件が複雑になるほど説明が難しくなり、誤解も生まれます。2つ程度にとどめるのが、現実的です。
法令上の確認事項
定額制を設計する際は、確認すべき点があります。
契約の期間と金額によっては、特定継続的役務提供に該当する可能性があります。エステティックで1か月を超え、支払総額が5万円を超える場合が該当しうるとされています。月額であっても契約期間の定めがあれば、総額で判断されることがあります。
該当する場合は、契約前と契約時の書面の交付と中途解約への対応が必要になります。
また前払いの形で受け取る場合は、資金決済法の適用が論点になることもあります。未使用の残高が大きくなる設計では、該当性を確認してください。
解約の条件も、明示してください。いつまでに申し出れば翌月から止まるのか、日割りはあるのか。曖昧だと、揉めるためです。
自動更新にする場合は、その旨と解約の方法を分かりやすく示します。誤認を招く表示は、問題になるためです。
いずれも個別の事情で、判断が変わります。設計の段階で、専門家に確認してください。
何を売っているのかを決める
定額制は、施術を安く売る仕組みではありません。何を提供しているのかを、言葉にしてください。
一つは、通う習慣を提供する形。継続して来ていただくこと自体に、価値を置きます。1回ごとの価格を比べると割高でも、続けやすさで選ばれます。
二つ目は、優先権を提供する形。予約が取りやすい、特定の枠を確保できる。混雑する店では、これが価値になります。
三つ目は、組み合わせを提供する形。複数のメニューから選べる、追加のオプションが含まれる。単品では受けにくいものを試していただく、機会になります。
そして、安心を提供する形。予算が読める、追加料金が発生しない。金額の見通しが立つことに、価値を感じる方がいます。
何を売っているかが曖昧だと、価格の根拠も曖昧になります。「1回あたりが安い」だけを訴えると、値引きと変わらなくなります。
| 提供するもの | 価値を感じる方 |
|---|---|
| 通う習慣 | 続けたいが途切れがちな方 |
| 優先権 | 予約が取りにくいと感じている方 |
| 組み合わせ | いろいろ試したい方 |
| 安心 | 予算を固定したい方 |
運用で起きること
始めてから直面する問題を、挙げます。
一つは、予約が取れないという不満。定額の方が優先的に枠を取ると、通常のお客様が入れません。逆に定額の方が取れないと、支払っている意味がないと言われます。枠の配分を、先に決めてください。
二つ目は、使わない方への対応。契約したものの、来店しない方が出ます。使っていないことを知らせるか、放置するか。知らせると解約されるかもしれませんが、後で「使っていないのに引き落とされていた」と言われるより誠実です。
三つ目は、想定以上に使う方への対応。上限内であれば、断れません。上限の設定が適切だったかを見直す材料に、してください。
そして、解約の集中。特定の時期に解約が重なると、売上が急に落ちます。契約の開始時期を分散させる工夫も、あります。

始める前に小さく試す
いきなり本格的に、始めないでください。試す方法が、あります。
一つは、期間を区切って試験的に募集する方法。「3か月間の試験導入」として、人数も絞ります。合わなければ、期間の終了とともに終えられます。
二つ目は、既存のお客様だけに案内する方法。来店の頻度が分かっている方に限ることで、利用回数の見積もりが立ちます。
三つ目は、対象のメニューを1つに絞る方法。範囲が狭ければ、負担の計算も簡単になります。
そして、人数の上限を設ける方法。「先着10名」とすれば、想定を超える負担が生じません。
試験導入であることは、明示してください。本格導入しない可能性があること、条件が変わる可能性があることを伝えておくことで、後の変更がしやすくなります。
試験期間の終わりには、数字で判断してください。続けるか、条件を変えるか、やめるか。曖昧に延長すると、判断の機会を失うためです。
収支を月次で見る
始めた後は、必ず数字を見てください。感覚では、判断できません。
まず、契約者数の推移。増えているか、減っているか。
次に、平均の利用回数。想定と比べて、どうか。想定を上回っているなら、価格か上限の見直しが要ります。
利用者ごとの、ばらつき。よく使う方と使わない方の差が、どれくらいか。
定額制に使った、時間。その時間を通常の施術に使った場合の売上と、比べてください。
そして、解約率。何か月で、解約されているか。短いなら、期待と実際にずれがあります。
これらを3か月続けることで、成立しているかどうかが分かります。赤字なら、価格を上げるか上限を厳しくするか、やめるかです。
やめるときの手順
うまくいかない場合は、続ける必要はありません。ただし、手順が要ります。
まず、新規の受付を止めます。既存の契約者には、継続してください。
次に、契約者に伝えます。いつ終了するか、それまでどう使えるかを明示してください。
そのうえで、期限を設けます。契約の期間や更新の時期を踏まえて、余裕を持った日程にしてください。
あわせて、代わりの提案もします。回数券、次回予約の割引。定額制で通っていた方が続けられる形を、示してください。
なお前払いを受けている場合は、残っている分の扱いを決めてください。返金するか、施術で消化していただくか。
告知と説明で誤解を防ぐ
条件が伝わっていないと、後で不満になります。ですから、書き方に注意してください。
「通い放題」と書く場合は、上限があるならそれを同じ大きさで書いてください。小さな注記だけでは、誤認を招く表示にあたるおそれがあります。
月額の総額も、書きます。「1回あたり◯円」だけを大きく出す書き方では、実際の負担が伝わらないためです。
契約期間も、書いてください。最低の利用期間があるなら、明示します。
解約の方法と期限も、書きます。「いつまでに、どこへ、どうやって」を、具体的に。
含まれないものも、書いてください。指名料、追加のオプション、物販。別途かかるものがあるなら、明示します。
対象外の時間帯や曜日があれば、それも書きます。「一部除外日あり」ではなく、具体的にどの日かを示してください。
説明の際は、口頭でも同じ内容を伝えてください。書面を渡しただけでは、読まれないことがあるためです。とくに解約の条件は、契約の場で口頭でも確認します。
予約と会員の管理
定額制の運用には、誰が契約者で今月何回使ったかを把握する必要があります。
VANNAでは、予約が顧客と紐づき、来店ごとの記録が顧客の画面に残ります。来店の履歴から、回数を確認できます。カレンダー予約はMaxプランの機能で、来店前のメールリマインドは全プランで使えます。
一方、定額制の契約を管理する機能や、毎月の自動課金を行う機能、利用回数を自動でカウントする機能はありません。契約者の管理と課金は、別の方法で行うことになります。この点は導入前に把握しておいてください。
料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。決済を使う場合のStripe決済手数料は店舗負担で別途かかります。現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。
定額制でなくても売上は読める
売上を安定させたいだけなら、他の方法もあります。
一つは、次回予約をその場で取る運用。数週間先の予約が入っていれば、売上の見通しが立ちます。
二つ目は、回数券。前払いを受ける点は同じですが、期限内に使い切る形のため無制限の負担が生じません。
そして、来店周期の管理。適切な間隔で通っていただければ、定額制でなくても来店は安定します。
定額制は、手段の1つにすぎません。目的が売上の安定なら、まず既存のお客様の来店周期を整えるほうが負担も少なく確実です。
次回の予約をその場で取っていただく形でも、先の売上は読めます。
よくある質問
無制限にしてもよいですか
原価と時間の負担を計算したうえで判断してください。物理的に来られる回数に限りがある施術なら成立しますが、そうでなければ上限を設けるほうが安全です。
価格はどう決めますか
想定する利用回数から逆算します。原価だけでなく、その時間を通常の施術に使った場合の粗利も考慮してください。想定を外すと赤字になるため、余裕を持たせてください。
特定継続的役務提供に該当しますか
契約の内容によります。エステティックで期間が1か月を超え、支払総額が5万円を超える場合が該当しうるとされています。月額でも契約期間の定めがあれば総額で判断されることがあります。専門家に確認してください。
使っていない方に知らせるべきですか
知らせるほうが誠実です。解約される可能性はありますが、後で「使っていないのに引き落とされていた」と言われるほうが問題になります。
予約が取れないと言われます
枠の配分を決めていないことが原因です。定額の方に割り当てる枠と、通常の予約の枠を分けてください。時間帯を限定する方法もあります。
やめたくなったらどうしますか
新規の受付を止め、既存の契約者に終了時期を伝えてください。代わりの提案を用意し、前払いを受けている分の扱いも決めてください。契約の期間を踏まえ、余裕を持った日程にしてください。
まず小さく試す方法はありますか
期間を区切る、既存のお客様だけに案内する、対象メニューを1つに絞る、人数の上限を設ける。この4つを組み合わせると、想定を超える負担が生じません。試験導入であることを明示しておくと、後の変更がしやすくなります。
「通い放題」と書いてもよいですか
上限があるなら、それを同じ大きさで書いてください。小さな注記だけでは誤認を招く表示にあたるおそれがあります。含まれないもの、対象外の時間帯も具体的に示してください。
何を売っているのかが分かりません
通う習慣、優先権、組み合わせ、安心のいずれかです。何を提供しているかが曖昧だと価格の根拠も曖昧になり、「1回あたりが安い」という値引きと変わらなくなります。
出典
本記事は2026年7月時点の一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。契約の設計、書面の要否、前払いの扱いについては、弁護士等の専門家にご確認ください。VANNAの料金・機能・キャンペーン条件は変更される場合があります。



