買った機器を帳簿でどう扱うか|買った日から、捨てる日まで
公開: 2026年8月26日
Summary
開業後に買った機器の経理を、購入から処分まで通して整理します。経費と資産の分かれ目、固定資産台帳に書くこと、支払いと経費がずれる理由、修理と改良の違い、捨てた・売った・下取りに出したときの処理、年に一度の突き合わせまでを扱います。
シャンプー台を買い替えました。古いほうは業者に引き取ってもらい、その費用も払いました。領収書はきちんと取ってあります。ところが、帳簿にどう書けばよいのかが分かりません。
開業のときに買ったものについては、当時それなりに調べて処理しました。けれども、その後に買い足したもの、そして捨てたものについては、誰にも教わっていませんでした。開業のときだけ説明されて、そのあとは自分で続けることになる。この分野は、たいていそういう形になっています。
機器は、買った日で終わりません。台帳に載り、毎年少しずつ経費になり、処分した日にもう一度出てきます。この一連の流れを一度つかんでおくと、毎年の作業がぐっと短くなります。逆に、つかまないまま数年続けると、あとから遡って直すことになります。
買った時点で、2つに分かれる
まず、ここが出発点です。
その年の経費として全額を落とせる場合と、資産として計上して数年に分けて経費にしていく場合があります。同じ「買い物」でも、扱いがまったく違います。
分かれ目は、主に金額です。ただし、区分の基準は制度によって定められていて、変わることがあります。ですからこの記事では、具体的な金額を書きません。ここに数字を書いてしまうと、それが古くなったときに、この記事を読んだ方が困ります。
開業前に買ったものの扱いは開業前に購入した施術機器・什器は開業費と減価償却どちらで処理するかで扱っています。開業後に買ったものも、考え方の枠は同じです。
そして、迷ったら買った年のうちに確認してください。翌年に持ち越すと、直すのが面倒になりますし、選べる処理が減ることもあります。
資産にしたら、台帳を作る
ここを作らないまま数年経ってしまう店は、かなり多くあります。
固定資産台帳には、何を、いつ、いくらで買い、何年で経費にしていくかを書きます。それだけのものです。
会計ソフトを使っているのであれば、資産として登録した時点で自動的に作られることが多くあります。作られていないようなら、自分で作ってください。表計算のソフトでも十分です。
台帳がないまま3年経つと、あとから復元するのに購入時の書類を全部探すことになります。引き出しの奥から領収書を掘り出す作業を、確定申告の直前にやることになります。
支払いと経費は、別々に動く
ここが、感覚といちばん合わないところです。
現金で買えば、支払いはその日で終わります。財布からお金は出ていきました。ところが経費のほうは、その後何年かに分かれて出てきます。
つまり、お金は出ていったのに経費にならない年と、お金は出ていないのに経費になる年ができます。この2つがずれることが、帳簿を分かりにくくしています。
利益が出ているはずなのに手元にお金がない、という状態の一因も、ここにあります。逆に、大きな買い物をした翌年以降は、お金を使っていないのに経費が立ちます。資金繰りの見方はサロンの経費管理を月末30分で回すで扱っている記帳の習慣と合わせて考えてください。
分割払いやローンで買った場合
支払い方は、経費の出方を変えません。ここは誤解されやすいところです。
分割でもローンでも、資産として計上するかどうかは金額で決まります。毎月の支払額が、そのまま毎月の経費になるわけではありません。
そして、利息にあたる部分は別に扱われます。支払い明細で、元本と利息が分かれているかを確認してください。分かれていない明細であれば、販売店や信販会社に内訳を出してもらってください。
中古で買った場合
新品と同じにならないことがあります。
何年で経費にしていくかは、新品を前提にした年数が定められています。中古の場合は、その年数の考え方が変わる仕組みがあります。すでに何年か使われたものを、新品と同じ年数で扱うのは実態に合わないからです。
具体的な計算は制度によりますので、この記事では書きません。中古で大きなものを買ったら、その年に一度確認してください。
なお、中古で買ったこと自体は何も問題ありません。記録として、購入先と状態を残しておいてください。あとから「これは中古だった」と思い出せる形にしておけば十分です。
修理したときは、経費か資産か
ここは判断が分かれるところです。
元の状態に戻すための修理と、性能を上げたり長持ちさせたりする改良とでは、扱いが変わることがあります。
前者は修繕としてその年の経費、後者は資産として計上する形になりえます。同じ「業者に来てもらって直した」でも、中身によって違うということです。
判断に迷う場合は、何をしたかが分かる記録を残してください。見積書や作業内容の明細があれば、あとから相談できます。「修理代」としか書かれていない領収書1枚では、判断のしようがありません。
そして、金額が大きい修理ほど、確認する価値があります。
壊れて捨てたとき
ここが、いちばん抜けるところです。
台帳に載っている機器を処分した場合、まだ経費にしていない分が残っています。この残りをどう扱うかは、処分した年の処理になります。捨てた瞬間に消えるわけではありません。
そして、台帳から消してください。消さないと、もう店にない機器の償却が翌年も続きます。数年後に台帳を見て、載っているはずの機器がどこにもない、という状態になります。
処分した事実の記録も残してください。日付、処分の方法、引き取ってもらった業者。写真があれば、なお確かです。
処分にかかった費用も、忘れずに記録してください。運搬や引き取りの費用が発生する場合があります。これも立派な支出です。
下取りや売却は、処分とは違う
お金が入るという点が、決定的に違います。
売れた金額と、台帳に残っている金額の差が問題になります。差が出れば、その分の処理が必要です。
そして、下取りはとくに分かりにくくなりがちです。新しい機器の請求書の上で、下取り分が値引きとして処理されていることがあるからです。見た目には「安く買えた」ようにしか見えません。
しかしその場合、実際には売却と購入が同時に起きています。請求書の内訳を必ず残しておいてください。合計額だけでは、あとから分解できません。
使わなくなったが、置いてある
処分していない状態です。これも意外と多くあります。
使っていないというだけでは、扱いが変わらないことがあります。倉庫の隅に置いてあるだけで、台帳には残り続けます。
そして、置き場所そのものも費用です。倉庫を借りている、施術スペースが狭くなっている。帳簿には出てこない負担が発生しています。
処分すると決めたなら、年内に決めてください。年をまたぐと、処理も1年ずれます。「そのうち」と思っているうちに、また1年が過ぎます。
決算前に買えば節税になる、とはかぎらない
年末が近づくと、決まってこの話が出ます。
まず、資産として計上するものは、買った年に全額が経費になるわけではありません。数年に分かれますから、その年に減る利益は一部です。100万円使っても、その年の経費になるのはその一部ということになります。
そして、買っただけでは足りない場合があります。実際に使い始めていることが求められる仕組みがあるためです。年末に届いて、箱のまま置いてある状態では対象にならないことがあります。
つまり、税金のために買うと、現金だけが先に出ていきます。手元のお金が減って、思ったほど税金は減らない。これが実際に起きることです。必要なものを、必要な時期に買ってください。
判断に迷う金額であれば、買う前に確認してください。買ったあとでは、選べる処理が減ります。
盗まれた、災害で失った場合
処分とは扱いが違います。
まず、失った事実を記録してください。日付、状況、被害届の番号や罹災の証明。あとから必要になります。動揺しているときですが、ここだけは押さえておいてください。
そして、保険金を受け取った場合は、その扱いも関わってきます。台帳に残っている金額と、受け取った金額の関係が問題になります。
いずれも通常の処分より複雑になりますので、その年のうちに専門家へ確認してください。翌年に回すと、記憶も書類も揃わなくなります。
台帳と現物を、突き合わせる
年に一度、やってください。これをやるかどうかで、台帳の信頼度がまるで変わります。
台帳を印刷して、店内を歩きながら現物を確認します。無い資産が載っていないか、載っていない資産が無いか。
やってみると、たいてい両方が見つかります。捨てたのに残っている、買ったのに登録していない。どちらも悪気があってのことではなく、単に忙しかっただけです。
やる時期は、決算の前が向いています。数字が固まる前であれば、その場で直せます。
少額のものを、どう扱うか
方針を決めておくと、毎回悩まずに済みます。
全部を資産にすると、台帳が膨らんで管理できなくなります。ドライヤー1台まで台帳に載せていたら、翌年からは追いきれません。追えなくなった台帳は、あってもないのと同じです。
区分の基準は制度で定められていますが、その範囲のなかで自分の店の方針を決めてください。基準に沿った処理をしたうえで、記録の粗さを揃える、という意味です。
経費として落とせるものの整理は確定申告で経費にできるもの一覧を見てください。
補助金を使って買った場合
扱いが変わることがあります。
補助を受けた分について、別の処理が必要になる仕組みがあります。何も知らずに通常どおり処理してしまうと、あとから直すことになります。
ですから、補助金を使った買い物は、そのことが分かるように記録を分けてください。交付の決定通知も、あわせて保管しておきます。
そして、その年のうちに専門家へ確認してください。補助金の申請そのものに手間をかけたのですから、最後の処理でつまずくのはもったいない話です。
自宅を兼ねている場合
事業で使う割合が関わってきます。
生活と共用しているものについては、事業に使っている割合の分だけが対象になる、という考え方があります。
割合の決め方は、家事按分と同じ考え方です。何を根拠にその割合にしたのかを説明できる形にしておいてください。面積で分けたのか、使用時間で分けたのか。その根拠が残っていれば、聞かれても答えられます。
なお、割合を毎年変えるのであれば、変えた理由も残しておいてください。
保険と台帳は、つながっている
思わぬところで役に立ちます。
火災や水漏れで機器が被害を受けたとき、いくらの被害だったのかを示す必要があります。台帳があれば、購入日と金額がすぐに出せます。無ければ、記憶と領収書探しから始めることになります。
そして、加入している保険が何を対象にしているかを、台帳と突き合わせてみてください。高額な機器が対象外になっていることがあります。買ったときには保険のことまで考えていなかった、という場合はとくに確認する価値があります。
リースは、買うのとは違う
同じ機器でも、扱いが変わります。
リースは、契約の形によって処理が変わります。毎月の支払いがそのまま経費になる形もあれば、資産として扱う形もあります。契約書を見ないと判断できません。
そして、途中で解約できない契約が多くあります。仕組みはリース契約で困ったときで扱っています。
買うかリースかの判断そのものはエステ機器の選び方と回収計算で扱っています。帳簿の扱いは、その判断の材料の1つになります。
記録として残すもの
書類は、機器ごとにまとめてください。日付順ではなく、機器ごとです。
残すのは、領収書または請求書、保証書、型番と製造番号、設置した日、そして処分したときの記録です。
型番を残しておくと、修理を頼むときに探さずに済みます。故障して困っているときに、機器の裏側をのぞき込んで型番を読み取る作業をせずに済むのは、思っている以上に助かります。
そして、保管の期間は制度で定められています。自分で決めないでください。
廃業するときに、残る
まだ先の話かもしれませんが、知っておいてください。
資産が残ったまま店を閉めると、その処理が必要になります。売るのか、処分するのか、自分のものとして持ち帰るのか。
いずれも扱いが変わります。閉める判断をした時点で、台帳を出して確認してください。閉店の手続きに追われるなかで後回しにすると、最後に残った作業として重くのしかかります。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 買ったとき | 経費か資産かを判断し、資産なら台帳に登録する |
| 毎年 | 台帳に沿って償却する。支払いと経費は別に動く |
| 修理したとき | 元に戻す修理か、性能を上げる改良かで扱いが変わる |
| 捨てたとき | 台帳から消す。日付・方法・業者・処分費用を記録 |
| 売った・下取り | 売却額と台帳の残りの差を処理する。請求書の内訳を残す |
| 年に一度 | 台帳を印刷して現物と突き合わせる(決算の前) |
| 補助金を使った | 記録を分け、その年のうちに専門家へ確認 |
今日やる一つ
固定資産台帳を印刷して、店内を一周してください。載っているのに無いもの、あるのに載っていないもの。どちらか1つでも見つかれば、それが今年直す項目です。歩いて回る時間は15分ほどですが、確定申告の直前に慌てる時間はそれよりずっと長くなります。
よくある質問
買ったとき、全額を経費にできますか
金額によって、その年の経費にできる場合と、資産として数年に分ける場合があります。区分の基準は制度で定められていて変わることがありますので、この記事では金額を書きません。買った年のうちに確認してください。
固定資産台帳は必要ですか
資産として計上したなら必要です。会計ソフトなら登録時に自動で作られることが多くあります。無いまま数年経つと、購入時の書類を全部探すことになります。表計算のソフトでも十分に作れます。
支払いは終わったのに、経費が続くのはなぜですか
資産として計上したものは、時間をかけて経費になるためです。お金が出ていったのに経費にならない年と、お金は出ていないのに経費になる年ができます。この2つがずれることが、帳簿を分かりにくくしています。
分割払いだと変わりますか
支払い方は経費の出方を変えません。毎月の支払額がそのまま経費になるわけではありません。利息にあたる部分は別に扱われますので、明細で元本と利息が分かれているか確認してください。
中古で買った場合は
何年で経費にしていくかの考え方が変わる仕組みがあります。すでに何年か使われたものを新品と同じ年数で扱うのは実態に合わないためです。計算は制度によりますので、大きなものを中古で買ったら、その年に一度確認してください。
修理代はどう扱いますか
元の状態に戻す修理か、性能を上げる改良かで扱いが変わることがあります。「修理代」としか書かれていない領収書1枚では判断できませんので、見積書や作業内容の明細を残しておいてください。金額が大きいほど確認する価値があります。
壊れて捨てたときは
台帳に、まだ経費にしていない分が残っています。処分した年の処理が必要です。台帳から消さないと、もう店にない機器の償却が翌年も続きます。日付・方法・業者・処分費用を記録してください。
下取りに出した場合は
売却と購入が同時に起きています。新しい機器の請求書で下取り分が値引きとして処理されていることがありますので、内訳を残してください。合計額だけでは、あとから分解できません。
使っていないが置いてあります
使っていないというだけでは扱いが変わらないことがあります。置き場所そのものも費用です。処分するなら年内に決めてください。年をまたぐと処理も1年ずれます。
台帳と現物の確認は、いつやりますか
年に一度、決算の前が向いています。台帳を印刷して店内を歩き、無い資産が載っていないか、載っていない資産が無いかを見ます。やってみると、たいてい両方が見つかります。
決算前に買えば節税になりますか
資産として計上するものは、買った年に全額が経費になるわけではありません。実際に使い始めていることが求められる仕組みもあり、年末に届いて箱のままでは対象にならないことがあります。手元のお金が減って、思ったほど税金は減らない、ということが起こります。
盗まれた、災害で失った場合は
処分とは扱いが違います。日付、状況、被害届の番号や罹災の証明を残してください。保険金を受け取った場合は、台帳に残っている金額との関係も関わります。翌年に回すと記憶も書類も揃わなくなりますので、その年のうちに専門家へ確認してください。
補助金で買ったものは
補助を受けた分について別の処理が必要になる仕組みがあります。記録を分け、交付の決定通知も保管したうえで、その年のうちに専門家へ確認してください。申請に手間をかけたのですから、最後の処理でつまずくのはもったいない話です。
自宅を兼ねている場合は
事業で使っている割合の分だけが対象になる考え方があります。家事按分と同じで、何を根拠にその割合にしたのかを説明できる形にしてください。割合を変えるなら、変えた理由も残します。



