営業中の店が使える補助|「古いから買い替える」では通らない
公開: 2026年8月25日
Summary
すでに営業しているサロンが設備の入れ替えや改装に使える補助を整理します。開業支援とは見られるものが違うこと、探す先が国・自治体・分野ごとの3つに分かれること、決定より前の工事が対象外になること、業者より先に窓口へ聞く理由、賃貸なら大家の承諾が先であること、税で軽くする別の入口までを扱います。
シャンプー台が、そろそろ限界です。
開店のときに入れたものですから、もう何年も使いました。お湯の出が安定せず、レバーも固い。お客様に「大丈夫ですよ」と言われるようになったら、それは大丈夫ではありません。
入れ替えたい。けれど、まとまった金額になります。
そこで補助金を調べたのですが、出てくるのは開業する人向けのものばかりでした。もう開業している店は、対象外なのだろうか。
そんなことはありません。ただ、探し方と、通る書き方が、開業のときとは違うのです。
開業のときとは、見られるものが違う
まず、この違いを押さえてください。
開業するときの支援は、「これから始める人を後押しする」ことが目的です。ですから、計画と自己資金が見られます。実績がまだ無いためです。
一方、営業している店への支援は、目的が違います。多くは「この投資によって、事業がどう良くなるのか」を見ています。
つまり、聞かれることが変わります。何を買うかではなく、それを入れると何が変わるのか。ここを答えられるかどうかが分かれ目です。
そして、こちらには実績があります。何年やってきて、どういうお客様が来ていて、いま何に困っているのか。この実績は、開業する人には無いものです。
制度の考え方そのものは創業融資と補助金の違いで扱っていますが、営業中の店の場合、そこに実績という材料が加わると考えてください。
「壊れたから買い替える」は、通りにくい
ここが、いちばんつまずくところです。
古くなったから入れ替える。壊れたから買う。これは、店にとっては切実な理由です。ところが、支援する側から見ると、理由になりません。
なぜなら、それは元の状態に戻すだけだからです。
では、どう書くか。同じ入れ替えでも、入れ替えた結果として何が変わるかを書きます。
- 施術の時間が短くなり、一日に受けられる人数が変わる
- お湯や電気の使う量が減り、毎月の固定費が変わる
- これまで断っていた施術ができるようになる
- 体への負担が減り、長く働けるようになる
このうち、どれかが本当に当てはまるなら、それを書いてください。当てはまらないものを書くと、あとの報告で行き詰まります。
設備が壊れたときの対応そのものはサロンの設備が壊れたときで扱っています。ただ、補助を使いたいなら、壊れる前に動くほうが選択肢が広くなります。
探す先は、3つに分かれます
営業中の店が見るべき先を整理します。
1つめは、国の制度です。小規模な事業者向けのものがあり、設備や改装が対象に入ることがあります。
2つめは、自治体です。市区町村や都道府県が独自に設けているもので、店舗の改装、看板、省エネの設備などが対象になることがあります。こちらのほうが規模は小さいのですが、競争が緩く、通りやすい傾向があります。
3つめは、業界や設備の分野ごとのものです。省エネ、衛生、バリアフリーといった観点で用意されているものがあります。
そして、この3つを一度に調べるのは大変です。ですから、まず自治体の産業に関する窓口に電話してください。「店の設備を入れ替えたいのですが、使えるものはありますか」。この一言で、地域のものは教えてもらえます。
工事を始めてからでは、間に合いません
これは、何度でも書きます。
補助を使う場合、申請して、決定を受けてから工事を始めるのが原則です。決定より前に契約したり、支払ったりしたものは、対象外になることがあります。
つまり、業者に見積もりを取り、日程を決め、着工してから「そういえば補助金があるらしい」と気づいても、もう遅いのです。
ですから、順番を逆にしてください。設備を入れ替えようと思った時点で、まず窓口に電話する。業者を決めるのは、そのあとです。
改装そのものの判断はサロンの改装をどう決めるかで扱っています。その記事でも触れていますが、資金の側から見ると、この順番が決定的です。
業者に「補助金は使えますか」と聞かない
意外に思われるかもしれませんが、理由があります。
設備の業者や工事の業者は、補助金に詳しいことがあります。実際、申請を手伝ってくれる場合もあります。
ただ、業者は売る側です。「使えます」と言われたときに、それが本当に自分の店に合っているかは、別の話です。
そして、業者が扱っている制度が、自分の地域で使える制度とはかぎりません。
ですから、順番としては、先に公的な窓口で確かめてください。そのうえで、業者に相談してください。逆にすると、業者が知っているものだけが選択肢になります。
借りている物件なら、大家の承諾が先
見落とされやすい順番が、もう一つあります。
内装や、建物に手を入れる設備を替える場合、賃貸なら大家や管理会社の承諾が要ります。契約に書かれていることも多いのですが、読み返していない方がほとんどです。
そして、承諾されないことがあります。あるいは、退去のときに元に戻す条件が付くことがあります。
つまり、補助が通っても、物件の側で止まる可能性があるのです。そうなると、決定を受けたのに実施できないという、いちばん面倒な状態になります。
ですから、申請の前に、契約書を読み返してください。書かれていることが分からなければ、大家か管理会社に確認してください。
なお、据え置くだけの機器や、システムの導入なら、この確認は要らないことが多くあります。予約や会計の仕組みを入れる形は持続化補助金・IT導入補助金はサロンで使えるかで扱っています。
補助金でなく、税で軽くする形もある
入口は一つではありません。
一定の設備を入れた場合に、税の側で軽くなる仕組みが用意されていることがあります。早めに経費にできる形と、納める税から差し引く形があります。
こちらは、補助金と性質が違います。申請して選ばれるのではなく、条件に当てはまれば申告のときに使う形です。ですから、公募の時期を気にする必要がありません。
ただし、対象になる設備や、事業者の要件が細かく決まっています。そして、内容は見直されます。
ですから、設備を入れる前に、税理士か税務署で「この設備は何か使えるものがありますか」と確認してください。買ったあとでは選べないことがあります。
対象になりやすいもの、なりにくいもの
一般的な傾向を書きます。ただし、制度によって違いますので、必ず窓口で確認してください。
対象になりやすいのは、形として残る設備や工事です。機器、内装、看板、システムの導入。
対象になりにくいのは、日々の運転にかかるものです。材料、家賃、人件費、そして自分への支払い。
そして、判断が分かれやすいのが中古品と、リースです。中古は認められないことがありますし、リースは所有が自分にならないため、扱いが変わります。
購入とリースで税の扱いが変わることは開業前に購入した施術機器の処理で扱っています。補助を使う場合も、同じところが効いてきます。
使うかどうかは、金額だけで決めない
ここは、正直に書きます。
補助金を使うと、書類が増えます。申請の書類、決定後の手続き、終わったあとの報告。制度によっては、その後も数年にわたって状況を報告することがあります。
そして、先に全額を払い、あとから戻ってくる形が多くあります。つまり、一度は自分で用意する必要があります。
ですから、判断は次の3つで行ってください。
- 補助が無くても、一度は払える金額か
- 戻ってくるまでの数か月、資金が持つか
- その手間に見合う金額か
3つめが効きます。小さい金額のために何日も書類を作ると、その時間で施術をしたほうが多いことがあります。
実績があることを、使ってください
営業中の店の強みを、もう一度書きます。
申請の書類には、たいてい現状を書く欄があります。開業する人は、ここを想定で埋めるしかありません。
こちらは違います。何年やってきたか。どういうお客様が来ているか。売上がどう動いてきたか。全部、実際の数字で書けます。
そして、その数字があると、「この設備を入れるとどう変わるか」の見込みにも根拠が出ます。想定ではなく、いまの数字からの変化として書けるからです。
ですから、書きにくいと感じたら、まず数字を並べてください。文章は、そのあとです。
通らなかった場合
落ちることもあります。
このとき、多くの方が「うちは対象外だった」と結論します。ところが、理由は別のところにあることが多いのです。
書類の不足、書き方の問題、そして単に応募が多かったこと。次の回で通ることも珍しくありません。
ですから、落ちたら理由を聞いてください。教えてもらえる範囲は制度によりますが、窓口で相談していれば、次にどうすればよいかの見当はつきます。
そして、その回に通らなくても設備が必要なら、補助を待たずに入れるという判断もあります。待っている間に営業に支障が出るなら、そのほうが正しいこともあります。
省エネという切り口
一つ、見落とされやすい入口を書いておきます。
サロンは、水とお湯と電気を多く使います。給湯、空調、照明、そして施術の機器。
この分野には、環境や省エネの観点から用意されている支援があります。そして、これは「美容室向け」とは書かれていないため、探しても見つかりにくいのです。
つまり、業種で探すのではなく、入れ替えるものの種類で探すという方法があります。給湯器を替えるなら給湯、照明を替えるなら照明。この探し方をすると、見つかるものが変わります。
| 場面 | 動き方 |
|---|---|
| 入れ替えを思いついた | まず自治体の産業の窓口へ電話。業者に聞くのはそのあと |
| 理由の書き方 | 「古いから」ではなく、入れ替えた結果として何が変わるか |
| 順番 | 申請 → 決定 → 契約・工事。決定前の契約や支払いは対象外になりうる |
| 探す先 | 国の制度/自治体/設備の分野ごと(省エネ・衛生など) |
| 対象 | 形として残るものは入りやすい。材料・家賃・人件費は入りにくい |
| 中古とリース | 扱いが分かれる。事前に確認する |
| 判断 | 一度払えるか/戻るまで持つか/手間に見合うか |
| 落ちたとき | 対象外とはかぎらない。理由を聞いて次の回へ |
今日やる一つ
入れ替えたい設備が一つでもあるなら、店の住所の市区町村の産業に関する窓口に電話してください。制度名は要りません。「店の設備を入れ替えたいのですが、使えるものはありますか」で通じます。業者に見積もりを頼むのは、そのあとです。
よくある質問
もう開業しているので対象外ですか
そんなことはありません。営業している事業者向けの支援もあります。ただし、探し方と、通る書き方が開業のときとは違います。開業支援は計画と自己資金が見られますが、営業中の店では「この投資で事業がどう良くなるか」が見られます。
古くなったから買い替える、では通りませんか
通りにくくなります。元の状態に戻すだけだと受け取られるためです。同じ入れ替えでも、施術の時間が短くなる、固定費が下がる、断っていた施術ができるようになる、といった変化として書いてください。当てはまらないことを書くと、あとの報告で行き詰まります。
どこを探せばよいですか
国の制度、自治体、設備の分野ごとのもの、の3つです。一度に調べるのは大変ですので、まず市区町村の産業に関する窓口に電話してください。地域のものはそこで教えてもらえます。
自治体のものは金額が小さいのでは
小さいことが多いのですが、競争が緩く通りやすい傾向があります。手間と金額の釣り合いで判断してください。
工事を始めてしまいました
決定より前に契約したり支払ったりしたものは、対象外になることがあります。入れ替えようと思った時点で窓口に電話し、業者を決めるのはそのあとにしてください。
業者が「補助金が使えます」と言っています
業者は売る側です。使えるかどうかと、自分の店に合っているかは別の話ですし、業者が扱っている制度が自分の地域で使えるとはかぎりません。先に公的な窓口で確かめてから、業者に相談してください。
中古品でもよいですか
認められないことがあります。リースも、所有が自分にならないため扱いが変わります。どちらも事前に窓口で確認してください。
対象になりやすいのは何ですか
形として残る設備や工事です。機器、内装、看板、システムの導入。逆に、材料・家賃・人件費・自分への支払いといった日々の運転にかかるものは入りにくい傾向があります。
補助金があれば設備を入れられますか
先に全額を払い、あとから戻ってくる形が多くあります。補助が無くても一度は払える金額か、戻るまでの数か月資金が持つか、その手間に見合う金額か。この3つで判断してください。
書類が書けそうにありません
まず数字を並べてください。何年やってきたか、どういうお客様が来ているか、売上がどう動いてきたか。営業している店は、ここを実際の数字で書けます。文章はそのあとです。
落ちたらもう無理ですか
書類の不足、書き方、応募が多かったこと。理由は対象外以外にもあります。次の回で通ることも珍しくありませんので、落ちたら理由を聞いてください。
待っている間に設備が壊れそうです
補助を待たずに入れるという判断もあります。待つことで営業に支障が出るなら、そのほうが正しいこともあります。
美容室向けの制度が見つかりません
業種ではなく、入れ替えるものの種類で探してみてください。給湯器なら給湯、照明なら照明。省エネや環境の観点で用意されている支援は「美容室向け」とは書かれていないため、業種で探すと見つかりません。

