本文へスキップ
資金・融資・補助金

個人事業税|申告していないのに、金額が決まって届く税

公開: 2026年8月25日

Summary

サロンにかかる個人事業税を整理します。都道府県に納めること、申告が原則不要で計算されて届くこと、控除があるため所得が一定以下ならかからないこと、青色申告特別控除がこの計算では引けないこと、業種の区分で扱いが変わること、面貸しや業務委託でも対象になりうること、納めた分は経費になることを扱います。

開業して4年目の夏に、見慣れない封筒が届きました。

差出人は、都道府県の税事務所です。所得税は税務署、住民税は市区町村。そのどちらでもない相手から書類が来るのは、初めてでした。

中身は納付書でした。個人事業税、と書いてあります。

確定申告は済ませています。所得税も住民税も納めました。それなのに、また納めるものがある。しかも、こちらから何も申告していないのに、金額が決まっています。

この税は、静かにやってきます。そして、来ないうちは存在にすら気づきません。

納める相手が3つに分かれることを示した図。所得税は国(税務署)に納め、自分で申告し、経費にはならない。住民税は市区町村で、申告の内容から計算され、経費にはならない。個人事業税は都道府県で、申告は原則不要、納めた分は経費になる。確定申告の内容が都道府県に回り、向こうで計算されて納付書が届く。
納める相手が3つに分かれることを示した図。所得税は国(税務署)に納め、自分で申告し、経費にはならない。住民税は市区町村で、申告の内容から計算され、経費にはならない。個人事業税は都道府県で、申告は原則不要、納めた分は経費になる。確定申告の内容が都道府県に回り、向こうで計算されて納付書が届く。

誰に納めるのか

まず、位置づけを整理します。

個人事業主が納めるものには、いくつかあります。所得税は国に、住民税は市区町村に。そして、この個人事業税は都道府県に納めます。

つまり、相手が3つに分かれています。窓口も別々です。

そして、これは事業を行っていることに対してかかるものです。給与で暮らしている方には、そもそも関係がありません。

開業した時点で、この税の対象になる可能性が生まれています。ただし、後で書くとおり、実際にかかるかどうかは別の話です。

申告は、要りません

ここが、ほかの税と大きく違うところです。

所得税は、自分で申告します。ところが個人事業税は、原則としてこちらから申告する必要がありません。

確定申告をしていれば、その内容が都道府県に回ります。そして、向こうで計算され、納付書として送られてきます。

つまり、何もしていないのに、ある日いきなり金額が決まって届くのです。

これが、驚きの正体です。忘れているというより、そもそも知らなかった、という方が多いのはこのためです。

申告そのものの時期はサロン開業1年目の確定申告スケジュールで扱っています。

開業のときに、別の届出があります

意外に知られていないところです。

税務署に出す開業届とは別に、都道府県の税事務所に対して事業を始めたことを届け出る書類があります。

ただ、この書類の名称も、提出の期限も、そもそも提出を求めるかどうかも、自治体によって違います。

ですから、開業のときにここまで案内されなかったとしても、珍しいことではありません。

開業時の届出をまとめて確認したいなら、青色申告承認申請書の書き方を見てください。この書類にも触れています。

所得が一定以下なら、かかりません

ここが、いちばん知っておく価値のあるところです。

この税には、事業を行う人のために、一定の額を差し引く仕組みがあります。そして、その額を引いた残りに対して税がかかります。

ということは、所得がその額以下であれば、税額はゼロになります。

開業して数年は、これに当てはまることが多いのです。だから通知が来ません。そして、来ないことに慣れたころ、事業が伸びて初めて届くことになります。

なお、年の途中で開業した場合、この差し引く額は月割になります。ですから、開業した年は、通常より低い所得でも対象になりうる点に注意してください。

具体的な金額は、ここには書きません。見直される可能性があるためです。都道府県税事務所の案内で確認してください。

所得税と個人事業税で計算に使う所得が違うことを示した図。所得税は売上から経費と専従者給与を引き、さらに青色申告特別控除を引く。個人事業税は売上から経費と専従者給与を引き、事業を行う人のための控除を引くが、青色申告特別控除はここでは引けない。所得がその控除の額以下なら税額はゼロになる。
所得税と個人事業税で計算に使う所得が違うことを示した図。所得税は売上から経費と専従者給与を引き、さらに青色申告特別控除を引く。個人事業税は売上から経費と専従者給与を引き、事業を行う人のための控除を引くが、青色申告特別控除はここでは引けない。所得がその控除の額以下なら税額はゼロになる。

青色申告特別控除は、引けません

これが、この記事でいちばん伝えたい落とし穴です。

青色申告をしていると、所得税の計算では控除が受けられます。この控除のおかげで、所得税がゼロになる方もいます。

ところが、個人事業税の計算では、この控除は使えません。

つまり、所得税の申告書に書かれている所得と、個人事業税の計算で使われる所得は、違う数字になります。後者のほうが大きく出ます。

ですから、「所得税がかからなかったから、個人事業税も来ないだろう」という考えは、成り立ちません。

ここを知らないと、届いた通知を見て「計算が間違っているのでは」と思うことになります。

なお、事業のために使った経費や、専従者への給与は、こちらの計算でも差し引かれます。引けないのは、青色申告の特別な控除の部分です。

業種によって、扱いが変わります

もう一つ、複雑なところです。

この税は、すべての事業にかかるわけではありません。法律で定められた業種に対してかかる仕組みになっており、税率も区分によって違います。

そして、美容やネイル、まつげの施術は、一般に対象になる区分に入ります。

一方で、判断が分かれやすいものもあります。整体やリラクゼーションの施術は、内容によって扱いが変わることがあり、資格の有無も関わってきます。

ですから、この分野で開業している場合は、自分がどの区分になるのかを確認してください。区分そのものの考え方はリラクゼーションサロン開業の届出にも関わってきます。

そして、確認する先は都道府県の税事務所です。税務署ではありません。

書いた職業名が、効いてくることがあります

小さいことのようで、実は効きます。

開業届や確定申告の書類には、職業を書く欄があります。ここに書いた内容が、区分の判断に影響しうるとされています。

ですから、実態と合ったものを書いてください。よく分からないまま書くと、あとで説明を求められることがあります。

そして、途中で事業の内容が変わった場合も、そのまま放置しないでください。物販の割合が増えた、教室を始めた。こうした変化は、区分に関わります。

面貸しや業務委託で働いている場合

店を構えていなくても、関係します。

面貸しで席を借りて施術している方、業務委託の形で報酬を受け取っている方。こうした働き方も、個人事業主として事業を行っていることになります。

ですから、所得が一定を超えれば、この税の対象になりえます。店を持っていないから関係ない、ということはありません。

そして、この形で働いている方ほど、気づきにくいのです。開業したという実感が薄く、届出も済ませていないことがあるためです。

もう一つ。席を貸している側から見ると、受け取っている賃料の扱いが問題になります。施術による収入とは性質が違うためです。この点も、都道府県の税事務所に確認してください。

複数の内容が混ざっている場合

区分の話の続きです。

いまのサロンは、施術だけをしていることのほうが少ないかもしれません。物販がある、席を貸している、教室をやっている、出張の施術がある。

こうした場合、それぞれの内容がどの区分になるかが問題になります。まとめて一つとして扱われるとはかぎりません。

ですから、収入の内訳が分かるように記帳しておいてください。施術がいくら、物販がいくら、と分けておくのです。

分けていないと、聞かれたときに答えられません。そして、答えられないまま不利な区分で計算されることもあります。

いつ、どう納めるのか

実務の話です。

通知は、確定申告をした年の途中に届きます。そして、年に何回かに分けて納める形が一般的です。

ここで問題になるのが、資金です。所得税や住民税の納付時期とは、また別に来ます。

つまり、税の支出が年に何度も分かれて訪れることになります。この見通しを立てていないと、通知が届いた月に慌てます。

年間の資金の動きはサロンの資金繰り表で見えるようになります。税の支出は、必ずこの表に入れてください。

業種の区分による扱いの違いを示した図。美容・ネイル・まつげは一般に対象になる区分に入る。整体・リラクゼーションは内容によって扱いが変わり、資格の有無も関わる。物販・席貸し・教室はまとめて一つとして扱われるとはかぎらず、内訳の記帳が要る。面貸しや業務委託で働いている場合も対象になりえる。
業種の区分による扱いの違いを示した図。美容・ネイル・まつげは一般に対象になる区分に入る。整体・リラクゼーションは内容によって扱いが変わり、資格の有無も関わる。物販・席貸し・教室はまとめて一つとして扱われるとはかぎらず、内訳の記帳が要る。面貸しや業務委託で働いている場合も対象になりえる。

納めた分は、経費になります

これは、良い知らせです。

個人事業税として納めた金額は、事業の経費として扱えます。所得税や住民税は経費にできませんが、この税は違います。

ですから、納めた年の記帳に、忘れずに入れてください。入れ忘れると、その分だけ余計に納めることになります。

なお、経費になるのは納めた年です。通知が来た年ではありません。

法人にした場合

ときどき聞かれることなので、書いておきます。

事業を法人にすると、この税はかからなくなります。ただし、法人には法人としての税がかかります。

ですから、この税だけを理由に法人にする、という判断は成り立ちません。

法人にするかどうかの考え方は個人事業主と法人化の比較で扱っています。個人事業税は、その判断材料の一つにすぎません。

通知が来たら、まず確認すること

届いたときの動き方です。

まず、計算の元になっている所得を見てください。自分の申告と合っているかを確かめます。

次に、区分を見てください。書かれている業種が、実態と合っているかです。

そして、疑問があれば、そのまま納めずに問い合わせてください。金額が確定していても、こちらから説明できることはあります。

なお、納められない場合も、放置しないでください。都道府県の窓口にも、相談の枠があります。

項目内容
納める先都道府県(所得税=国、住民税=市区町村とは別)
申告原則として不要。確定申告の内容から計算されて届く
開業時都道府県への届出が別にある(名称・期限は自治体で違う)
かからない場合事業を行う人のための控除がある。所得がその額以下ならゼロ
開業した年控除は月割になる。通常より低い所得でも対象になりうる
落とし穴青色申告特別控除は、この税の計算では引けない
業種対象になる区分が定められている。整体・リラクは扱いが分かれる
納付年に何回かに分けて納める形が一般的
経費納めた分は経費になる(納めた年に計上)

今日やる一つ

去年の確定申告の控えを見て、職業欄に何と書いたかを確認してください。実態と合っていなければ、次の申告で直します。そして、まだ通知が来たことがないなら、伸びたときに来るものとして頭に入れておいてください。

よくある質問

所得税や住民税と何が違いますか

納める先が違います。所得税は国、住民税は市区町村、個人事業税は都道府県です。窓口も別々ですので、一つ納めれば済むというものではありません。

申告は必要ですか

原則として要りません。確定申告をしていれば、その内容が都道府県に回り、向こうで計算されて納付書が届きます。何もしていないのに金額が決まって届くのは、このためです。

開業のときに何か出しますか

税務署への開業届とは別に、都道府県の税事務所へ事業を始めたことを届け出る書類があります。ただし名称も期限も、提出を求めるかどうかも自治体によって違いますので、開業予定地の税事務所に確認してください。

開業して数年、通知が来ていません

事業を行う人のために一定の額を差し引く仕組みがあり、所得がその額以下なら税額はゼロになります。開業して数年はこれに当てはまることが多く、事業が伸びて初めて届くことになります。

開業した年は同じ扱いですか

年の途中で開業した場合、差し引く額は月割になります。ですから、通常より低い所得でも対象になりうる点に注意してください。

所得税がゼロなら、この税も来ませんか

来ることがあります。青色申告の特別な控除は、個人事業税の計算では使えないためです。所得税の申告書に書かれている所得と、この税の計算で使われる所得は違う数字になり、後者のほうが大きく出ます。

経費や専従者給与は引けますか

引けます。この税の計算でも差し引かれます。引けないのは、青色申告の特別な控除の部分だけです。

美容室は対象になりますか

美容やネイル、まつげの施術は、一般に対象になる区分に入ります。一方、整体やリラクゼーションの施術は内容によって扱いが変わることがあり、資格の有無も関わります。

自分の区分はどこで聞けますか

都道府県の税事務所です。税務署ではありませんので、間違えないでください。

職業欄の書き方は関係ありますか

書いた内容が区分の判断に影響しうるとされています。実態と合ったものを書いてください。途中で事業の内容が変わった場合も放置せず、次の申告で直してください。

面貸しや業務委託でも対象になりますか

なりえます。席を借りて施術している方も、業務委託で報酬を受け取っている方も、個人事業主として事業を行っていることになるためです。店を持っていないから関係ない、ということはありません。開業したという実感が薄いぶん、気づきにくいので注意してください。

席を貸している側はどうなりますか

受け取っている賃料は、施術による収入とは性質が違います。扱いが問題になりますので、都道府県の税事務所に確認してください。

物販や教室もやっています

それぞれの内容がどの区分になるかが問題になり、まとめて一つとして扱われるとはかぎりません。施術がいくら、物販がいくら、と収入の内訳が分かるように記帳しておいてください。分けていないと、聞かれたときに答えられません。

いつ納めますか

確定申告をした年の途中に通知が届き、年に何回かに分けて納める形が一般的です。所得税や住民税の納付時期とは別に来ますので、資金繰りの表に入れておいてください。

納めた分は経費になりますか

なります。所得税や住民税は経費にできませんが、この税は違います。経費になるのは納めた年で、通知が来た年ではありません。

法人にすればかかりませんか

個人事業税はかからなくなりますが、法人には法人としての税がかかります。この税だけを理由に法人にするという判断は成り立ちません。

金額に納得できません

まず、計算の元になっている所得が自分の申告と合っているかを確認し、次に区分が実態と合っているかを見てください。疑問があれば、そのまま納めずに問い合わせてください。納められない場合も放置せず、都道府県の窓口に相談してください。