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経営・数値・利益

メニューをやめる|足すときの判断はあっても、減らす判断が無い

公開: 2026年8月25日

Summary

増えすぎたメニューを減らす判断と、そのやめ方を整理します。増える3つの経路、載っているだけで乗るコスト、件数の数え方、件数だけで決めない3つの確認、期限を決めた告知、前受け金の扱い、消し忘れる場所、在庫と器具の処分、年に一度の点検までを扱います。

料金表を作り直そうとして、あらためて眺めました。A4の紙に、両面びっしり並んでいます。開業したときは、片面に7つでした。

一つひとつには理由があります。頼まれて足したもの、流行っていたので入れたもの、講習に行ったから始めたもの。どれも間違った判断ではありませんでした。ただ、足すときには考えたのに、減らすことは一度も考えてこなかったのです。

そして、この両面びっしりの紙には、目に見えないコストが乗っています。在庫、器具の置き場所、技術の維持、予約枠の複雑さ。何より、初めて来られた方がこの紙を渡されて、何を選べばよいか分からなくなっています。

この記事では、メニューをやめる判断と、やめ方を扱います。増やすときの設計とは、考えることがまったく違います。

メニューが増える3つの経路を並べた図。頼まれて足す(1人か2人しか使わない)、流行で足す(流行が去ったあとに残る)、学んだから足す(費用をかけたことは続ける理由にならない)。下段に、増えたことに乗る見えないコストとして、在庫、器具と置き場所、技術の維持、予約枠の複雑さ、そして選びにくさが挙げられている。
メニューが増える3つの経路を並べた図。頼まれて足す(1人か2人しか使わない)、流行で足す(流行が去ったあとに残る)、学んだから足す(費用をかけたことは続ける理由にならない)。下段に、増えたことに乗る見えないコストとして、在庫、器具と置き場所、技術の維持、予約枠の複雑さ、そして選びにくさが挙げられている。

なぜ増えるのか、を先に知っておく

減らす話の前に、増える仕組みを見ておいてください。同じことを繰り返さないためです。

増える経路は、だいたい3つです。

1つめは、頼まれて足すもの。常連の方に「これはできない?」と聞かれ、断りたくなくて始める。この形で入ったメニューは、たいてい1人か2人しか使いません。

2つめは、流行で足すもの。同業が始めた、雑誌に出ていた。入れた時点では正しくても、流行が去ったあとに残ります。

3つめは、学んだから足すもの。講習に行き、費用も時間もかけたのだから使いたい。これは気持ちとして自然ですが、費用をかけたことは、続ける理由にはなりません。

どの経路にも共通しているのは、足すときの判断はあっても、やめるときの判断が無いという点です。だから、一方向にしか動きません。

増えたことのコストを、数える

「載っているだけなら害はない」と思いがちですが、そうではありません。

まず、在庫です。年に数回しか出ないメニューでも、材料は持っておく必要があります。使わないまま期限が来れば、そのまま損になります。

次に、器具と場所です。専用の道具があるものは、置き場所を取ります。狭い店ほど、この負担は大きくなります。

そして、技術の維持です。年に3回しかやらない施術は、腕が鈍ります。鈍った状態で受けると、仕上がりに出ます。

さらに、予約枠です。所要時間がばらばらなメニューが並ぶと、枠の組み方が複雑になります。どこに何を入れられるかを、そのつど考えることになります。

最後に、選びにくさです。これがいちばん見落とされます。選択肢が多いほど親切に見えますが、初めての方にとっては、決められない紙になります。

やめる候補の見つけ方

感覚で決めないでください。数えるところから始めます。

過去1年ぶんの記録を出して、メニューごとに件数を数えてください。会計の記録でも、予約の記録でもかまいません。

数えると、たいてい形が見えます。上位のいくつかで大半を占め、下のほうに年に数件のものが並んでいるはずです。

そして、その下のほうを、そのまま「やめる候補」にしてください。ここではまだ決めません。候補として並べるだけです。

やめる候補の絞り方を示した図。手順1は過去1年の件数を数えて下位を候補に並べること。そのうえで確かめるのが3つで、時間あたりに残るお金、その方の主目的か(5件が5人か1人で5回か)、他のメニューへの入口になっているか。3つを見て残す理由が出てこないものが本当の候補。
やめる候補の絞り方を示した図。手順1は過去1年の件数を数えて下位を候補に並べること。そのうえで確かめるのが3つで、時間あたりに残るお金、その方の主目的か(5件が5人か1人で5回か)、他のメニューへの入口になっているか。3つを見て残す理由が出てこないものが本当の候補。

件数だけで決めない

ここが、この判断のいちばん大事なところです。

件数が少ないからといって、機械的に落とすと失敗します。次の3つを、あわせて見てください。

1つめは、時間あたりに残るお金です。件数は少なくても、単価が高く時間が短いなら、外す理由は弱くなります。単価と回転の考え方はカット単価を上げるか、回転を上げるかで扱っています。

2つめは、そのメニューを目的に来ている方がいるかどうかです。年に5件でも、その5件が別々の方の主目的なら、やめた時点でその方々を失います。逆に、同じ1人が5回使っているだけなら、話は変わります。

3つめは、他のメニューへの入口になっていないかです。最初はそれで来て、そのあと別のものを使うようになる。そういう経路があるなら、件数以上の価値があります。

この3つを見たうえで、それでも残す理由が出てこないものが、本当にやめる候補です。

やめると決めたら、期限を決める

翌日から消さないでください。

いま予約が入っている方がいます。次はそれを頼もうと考えている方もいます。何の予告もなく消えると、店が変わってしまったと受け取られます。

期限を決めてください。「今月いっぱいで終了」「◯月◯日のご予約分まで」。日付があると、こちらも迷いません。

そして、その期間のあいだに伝えます。伝える相手は、そのメニューを使っている方だけで足ります。使っていない方に告知する必要はありません。

伝え方は、口頭で十分です。「このメニューは◯月で終わりにすることにしました」。理由は短く添えてください。「時間をしっかり取れるものに絞ることにしまして」といった言い方が、角も立たず現実にも近くなります。

前もっていただいているお金を確認する

見落とすと、こじれます。

回数券や前払いの対象になっているメニューをやめる場合、残っている分をどう扱うかを先に決めてください。他のメニューに振り替えるのか、返金するのか。

そして、決めてから告知してください。順番が逆になると、その場で聞かれて答えられません。

数え方と扱いは前受け金の管理で扱っています。やめる判断をした時点で、まずここを確認してください。

消し忘れる場所がある

これが、実務でいちばん起きる失敗です。

料金表からは消したのに、他の場所に残っていて、そこから申し込まれる。あとから「載っていましたよ」と言われると、断りにくくなります。

消す場所を、先に書き出してください。

  • 店内の料金表
  • 自分のホームページ
  • 予約システムのメニュー一覧
  • ポータルサイトの掲載内容
  • SNSの固定の投稿やハイライト
  • 名刺やショップカードの裏
  • 印刷して置いてあるチラシ

このうち、忘れられやすいのが予約システムとポータルです。日常的に見ない画面だからです。そして、そこは24時間動いています。

消した日を1枚に記録しておくと、抜けが分かります。

メニューを消す場所を7つ並べた図。店内の料金表、自分のホームページ、予約システムのメニュー一覧、ポータルサイトの掲載、SNSの固定投稿やハイライト、名刺やショップカードの裏、印刷したチラシ。予約システムとポータルの2つは忘れやすいものとして強調されている。
メニューを消す場所を7つ並べた図。店内の料金表、自分のホームページ、予約システムのメニュー一覧、ポータルサイトの掲載、SNSの固定投稿やハイライト、名刺やショップカードの裏、印刷したチラシ。予約システムとポータルの2つは忘れやすいものとして強調されている。

在庫と器具をどうするか

やめると決めても、材料と道具は残ります。

まず、在庫を数えてください。期限のあるものは、期限まで使い切れるかを見ます。使い切れる量なら、期限までは受けるという判断もできます。

使い切れない場合は、処分することになります。処分にかかる費用も見ておいてください。薬剤や機器によっては、決められた方法での処分が必要になることがあります。

器具については、売れるものは売る、使えるものは残す。ただし、置いておくことにも場所という費用がかかります。「いつかまた」と思って何年も置いてあるものは、たいていそのままです。

仕入れそのものの見直しはサロンの仕入れを見直すで扱っています。メニューを減らすと、仕入れ先との関係も変わることがありますので、あわせて確認してください。

減らすと売上が減るのか

いちばん心配になるところです。

年に5件のメニューをやめても、その5件ぶんの売上がそのまま消えるとはかぎりません。その方が別のメニューを選ぶこともありますし、空いた枠に他の予約が入ることもあります。

ただし、確実に消える場合もあります。そのメニューだけを目的に、遠くから来られていた方がいる場合です。だからこそ、先ほどの「その方の主目的か」という確認が要ります。

そして、減らすことで得られるものも数えてください。在庫が減る、枠が単純になる、料金表が読みやすくなる。どれも金額にはなりにくいものですが、実際には効いてきます。

判断に迷うなら、まず1つだけやめてみてください。1つやめて3か月見れば、何が起きるかが分かります。全部を一度に整理しようとすると、動けなくなります。

やめたあとに、戻す判断

やめたものを、また始めることもあります。それ自体は悪いことではありません。

ただ、戻すときは、やめた理由が解消されているかを確認してください。件数が少なかったから、時間が読めなかったから、在庫が持てなかったから。理由が同じままなら、また同じことになります。

そして、戻すなら条件を変えてください。料金を変える、時間を変える、受ける曜日を絞る。同じ形で戻すと、同じ結果になります。

なお、一度やめたことを、お客様は覚えています。「またやるんですね」と言われたときに、説明できる形にしておいてください。

業種によって、追加で確認すること

薬剤や機器を使うメニューをやめる場合は、確認が増えます。

薬剤の処分方法、機器の廃棄、リースであれば契約の残り。リースは途中で解約できない契約が多く、メニューをやめても支払いだけが続くことがあります。

そして、そのメニューのために届け出ていたものがある場合は、変更が必要かを確認してください。判断に迷うなら、所轄の保健所に聞いてください。

いずれも、やめると決めてから確認するのでは遅い場合があります。候補に挙げた段階で、一度調べておいてください。

年に一度、見る日を決める

これが、増え続けるのを止める唯一の方法です。

年に一度、メニューごとの件数を出す日を決めてください。決算のあとや、料金表を作り直す時期がちょうどよいところです。

見るのは、件数と、時間あたりに残るお金の2つで足ります。細かく分析する必要はありません。

そして、その日に「今年は何も減らさない」と決めるのもかまいません。見たうえで残すのと、見ていないから残っているのとでは、まったく違います。

年間の計画の立て方はサロンの年間計画で扱っています。取り組みを決める日に、この点検を組み込んでおくと忘れません。

減らすことは、後ろ向きではない

最後に、これを書いておきます。

メニューを減らすと聞くと、店が縮んでいくように感じるかもしれません。ただ、実際には逆のことが起きます。

やることが絞られれば、一つひとつに時間をかけられます。腕も落ちません。在庫も減り、枠も組みやすくなります。そして、料金表が読みやすくなれば、初めての方が選べるようになります。

何ができるかを増やすのではなく、何をする店かをはっきりさせる。減らすというのは、そういう作業です。

段階やること
数える過去1年のメニューごとの件数を出す
候補にする下位のものを候補に並べる。ここではまだ決めない
3つで確かめる時間あたりの利益/その方の主目的か/他への入口か
期限を決める「今月いっぱい」など日付で。使っている方にだけ伝える
前受けを確認回数券や前払いの残りをどう扱うか、告知の前に決める
消す料金表・HP・予約システム・ポータル・SNS・印刷物
在庫と器具使い切れるか。処分の方法と費用。リースの残り
年に一度件数と時間あたりの利益を見る日を決める

今日やる一つ

過去1年の記録から、メニューごとの件数を数えてください。上から順に並べるだけで、下のほうに何が残っているかが見えます。数えるのに30分もかかりませんし、この数字が無いかぎり、やめる判断はできません。

よくある質問

なぜメニューは増えるのですか

頼まれて足す、流行で足す、学んだから足すの3つが主な経路です。どれも間違った判断ではありませんが、共通しているのは、足すときの判断はあってもやめるときの判断が無いことです。だから一方向にしか動きません。

載っているだけなら、害はないのでは

在庫、器具の置き場所、技術の維持、予約枠の複雑さ、そして選びにくさというコストが乗っています。とくに最後のものは見落とされます。選択肢が多いほど親切に見えますが、初めての方にとっては決められない紙になります。

やめる候補は、どう見つけますか

過去1年ぶんの記録から、メニューごとの件数を数えてください。上位のいくつかで大半を占め、下のほうに年に数件のものが並ぶはずです。その下のほうを候補として並べます。ここではまだ決めません。

件数が少なければ、やめてよいですか

機械的に落とすと失敗します。時間あたりに残るお金、そのメニューを目的に来ている方がいるか、他のメニューへの入口になっていないか。この3つをあわせて見て、それでも残す理由が出てこないものが本当の候補です。

いつやめると伝えますか

翌日から消さないでください。「今月いっぱい」のように期限を決め、その期間に伝えます。伝える相手は、そのメニューを使っている方だけで足ります。理由は「時間をしっかり取れるものに絞ることにしまして」といった短い言い方で十分です。

回数券が残っています

やめる判断をした時点で、まず残りを確認してください。他のメニューに振り替えるのか、返金するのか。決めてから告知してください。順番が逆になると、その場で聞かれて答えられません。

どこから消せばよいですか

店内の料金表、ホームページ、予約システム、ポータルサイト、SNSの固定投稿、名刺やショップカード、印刷物。忘れられやすいのは予約システムとポータルです。日常的に見ない画面ですが、24時間動いています。消した日を1枚に記録してください。

在庫はどうしますか

まず数えて、期限まで使い切れるかを見てください。使い切れるなら、期限までは受けるという判断もできます。使い切れない場合は処分になりますが、薬剤や機器によっては決められた方法での処分が必要になることがあります。

売上が減りませんか

その件数ぶんがそのまま消えるとはかぎりません。別のメニューを選ばれることも、空いた枠に他の予約が入ることもあります。確実に消えるのは、そのメニューだけを目的に来られていた方がいる場合です。だからこそ事前の確認が要ります。

一度に整理してもよいですか

まず1つだけやめて、3か月見てください。何が起きるかが分かります。全部を一度に整理しようとすると、判断が多すぎて動けなくなります。

やめたものを、また始めてよいですか

かまいません。ただし、やめた理由が解消されているかを確認してください。理由が同じままなら、また同じことになります。戻すなら、料金・時間・受ける曜日のいずれかを変えてください。

薬剤や機器を使うメニューの場合は

確認が増えます。薬剤の処分方法、機器の廃棄、リースであれば契約の残り。リースは途中で解約できない契約が多く、メニューをやめても支払いだけが続くことがあります。候補に挙げた段階で調べておいてください。

増え続けるのを止めるには

年に一度、メニューごとの件数を出す日を決めてください。見るのは件数と時間あたりに残るお金の2つで足ります。その日に「今年は減らさない」と決めてもかまいません。見たうえで残すのと、見ていないから残っているのとでは違います。

減らすと、店が縮みませんか

逆のことが起きます。やることが絞られれば一つひとつに時間をかけられ、腕も落ちません。在庫も減り、枠も組みやすくなります。何ができるかを増やすのではなく、何をする店かをはっきりさせる作業です。