スタッフから妊娠を報告されたら|最初の一言と、その後の設計
公開: 2026年8月5日
Summary
報告を受けてからの実務を順に整理します。最初に言うことと言わないこと、施術を続けられるかの判断は本人と主治医であること、仕事の内容の調整、産休・育休や給付の確認先、抜けた分の数え方、他のスタッフへの伝え方、復帰の準備、法令上してはいけない対応、経営者自身が当事者の場合を扱います。
スタッフから妊娠を報告されました。おめでとうと言った後、次に何を言えばよいか分かりませんでした。
小さな店では、初めての経験になることが多くあります。制度も、実務も、伝え方も、準備がないまま迎えることになります。

最初に言うこと
報告を受けた場面での対応を、先に決めておいてください。ここで、その後の関係の方向が決まります。
まず、祝ってください。それが自然な反応ですし、相手も不安のなかで伝えているためです。
次に、「体調はどうか」を聞いてください。仕事の話より先に、この一言が来る必要があります。
そして、「これからのことは、落ち着いてから一緒に決めましょう」と伝えてください。その場で条件を詰める必要はありませんし、詰めると追い込む形になります。
言わないほうがよいのは、店の都合です。「シフトはどうしよう」「人が足りない」。事実であっても、その場で言うと拒まれた形になります。
| 言うこと | 言わないこと |
|---|---|
| おめでとうございます | シフトや人手の心配 |
| 体調はどうですか | いつまで働けるかの詰問 |
| これからは一緒に決めましょう | 辞めるかどうかの確認 |
施術を続けられるか
美容の仕事には体への負担があるため、続けられるかどうかは本人と主治医の判断になります。
立ち続ける、腕を上げ続ける、薬剤に触れる、重いものを持つ。いずれも状態によって影響が変わるため、一律には決められません。
そして、こちらが判断しないでください。「大丈夫でしょう」も「無理でしょう」も、こちらが言うことではないためです。
代わりに、選べる形を用意してください。この作業は外せる、この時間は座れる。選択肢があれば、本人が組み合わせられます。
薬剤に関わる部分は、妊娠中のお客様への薬剤施術の判断でも触れています。お客様の側の話ですが、考え方は共通します。
仕事の内容を調整する
続けると決まったら、内容を見直してください。ここは、店の側で動かせる部分です。
体力を使う作業を、他の人に回せるか確認してください。全部でなくて構いませんし、1つ2つ減るだけで負担は変わります。
そして、休憩を取れる形にしてください。座れる場所と、その時間を確保します。忙しいときほど、ここが削られるためです。
つわりの時期は、においが問題になる場合があります。使う薬剤や換気の状態を確認し、必要なら担当を替えてください。
なお、調整した内容は他のスタッフにも伝わります。理由を説明しないと不公平に見えるため、ここは後の節で扱います。

制度を確認する
使える仕組みはありますが、条件も金額も加入している内容によって変わります。
産前産後の休業と、育児の休業は、法令で定められた制度です。雇用しているなら、対象になります。
そして、健康保険や雇用保険から給付を受けられる場合があります。金額と条件は加入内容によるため、年金事務所やハローワークで確認してください。
社会保険料の免除という仕組みもあります。手続きが要るため、事業主の側で対応することになります。
制度の詳しい内容は、この記事では扱いません。管轄の窓口か、社会保険労務士にご相談ください。手続きの全体像は、初めてスタッフを雇うときの手続きで整理しています。
期間の見通しを立てる
いつからいつまで不在になるかを早めに確認してください。分かった時点から、準備に使える時間が決まります。
産前の休業に入る時期、出産の予定、復帰の希望。この3つが分かれば、計画は立てられます。
ただし、予定どおりに進むとは限りません。体調によって早まることも、延びることもあるためです。
そのため、幅を持って組んでください。「この時期から」ではなく「この時期以降」で考えると、変更に耐えます。
そして、復帰の希望は変わって構いません。産む前と後で考えが変わるのは自然なことなので、そう伝えておいてください。
抜けた分をどうするか
ここからは、経営としての判断になります。感覚ではなく、数字で見てください。
まず、その方が担っていた売上を確認してください。指名の件数、売上の割合。これが減る分になります。
次に、他の人でどこまで受けられるかを見ます。全部は無理でも、一部は回せる場合があるためです。
そして、足りない分の対応を決めてください。営業時間を減らす、新しく雇う、外部に頼む。どれも費用と時間がかかるため、早めに動く必要があります。
なお、代わりを雇う場合は期間を決めてください。復帰したときに枠が無いと、双方が困ることになります。

他のスタッフへの伝え方
ここを誤ると店の空気が変わるため、慎重に扱ってください。
まず、本人の同意なく伝えないでください。いつ誰に伝えるかは、本人が決めることだからです。
伝えると決まったら、店として何が変わるかを説明してください。誰が何を担うのか、いつまでか。ここが曖昧だと、憶測が生まれます。
そして、負担が増える人には、その分をどうするかも伝えてください。「よろしく」だけでは不満が残りますし、その不満は表に出ません。
なお、他のスタッフから「自分のときも同じにしてもらえるのか」という視点が生まれます。ここに答えられる形にしておいてください。一度の対応が、以後の前例になります。
復帰の準備
戻ってくる前に決めることがあるので、休みに入る前から話しておいてください。
働ける時間が変わります。保育園の時間、送り迎え、急な発熱。以前と同じ形には戻らないという前提が要ります。
そのため、時短で戻る形や、日数を減らす形を検討してください。制度としての短時間勤務もあります。
そして、技術の間が空いていることも見てください。数か月から1年、手を動かしていない状態になるため、慣らす時間を予定に入れる必要があります。
顧客との関係も、いったん切れています。誰が引き継いでいたのか、戻すのかを決めておいてください。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 最初の対応 | 祝う/体調を聞く/条件はその場で詰めない |
| 仕事の内容 | 体力を使う作業を減らす/休憩を確保する |
| 制度 | 産休・育休/給付/保険料の免除を窓口で確認 |
| 抜けた分 | 売上の減少分を数え、対応を決める |
| 他のスタッフ | 本人の同意を得てから/負担増の扱いも伝える |
| 復帰 | 時短や日数の調整/慣らす時間/顧客の引き継ぎ |
VANNAでできること
VANNAでは、スタッフごとの予約と売上を確認できます。抜けた分がどれだけかを数字で把握するのに使えます。カレンダー予約はMaxプランの機能で、スタッフごとの受付時間も設定できます。
時短で復帰する場合も、その方の受付時間だけを変えられます。段階的に戻す形なら、そのつど調整できます。
一方で、産休や育休の手続きを行う機能はありません。年金事務所やハローワークでの手続きになります。
料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。
やってはいけない対応
ここは法令に関わる部分なので、知らなかったでは済みません。
妊娠や出産を理由に、解雇したり不利益な扱いをしたりすることは認められていません。降格、減給、契約を更新しない。いずれも該当します。
「体調が心配だから」という理由でも、本人の意思に反して辞めさせることはできません。
そして、退職を勧めることも避けてください。善意のつもりでも、圧力として受け取られます。
判断に迷う場面が出たら、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。ここは自己判断で進めない領域です。
育児中の働き方も設計する
復帰してからが、本当の調整になります。ここも先に考えてください。
子どもの発熱で、当日に休む日が出ます。これは避けられません。その日の予約をどうするかを、先に決めておいてください。
そして、その方だけに当日の穴埋めを負わせないでください。仕組みとして、他の人が受けられる形を作ります。
一方、他のスタッフの負担が偏り続けると、そちらが辞めます。定期的に見直して、偏りを是正してください。
なお、こうした形は育児に限りません。介護でも、自分の通院でも、同じ設計が使えます。1度作れば、次の場面でも使えます。
小さな店だからこそ
人数が少ないほど1人抜ける影響は大きくなりますが、それでも扱いを変えないでください。
大変なのは事実です。ただし、その大変さを本人に負わせると戻ってきませんし、他のスタッフもその様子を見ています。
この対応が、店として人を大事にするかどうかの証拠になります。次に採用するときも、ここが効いてきます。
そして、経験として残ります。1度やっておけば、次はもっと早く動けます。
本人が続けたいと言った場合
「ぎりぎりまで働きたい」と言われることがあります。ここも判断が要ります。
まず、その希望を否定しないでください。収入の事情もありますし、働いていたい気持ちもあります。
一方、安全に行える範囲は主治医が判断します。「主治医に確認していただけますか」と伝えるのが、こちらの立場からできる最大限になります。
そして、続ける場合の条件を書面にしてください。何を外すか、何時間までか、いつ見直すか。曖昧なままだと、無理をされます。
なお、本人が大丈夫だと言っても、こちらから休むよう勧めることはできます。強制はできませんが、選択肢として示すことは可能です。
記録を残す
話した内容と決めたことを書いてください。口頭だけだと、後で食い違います。
いつ報告を受けたか、どう調整すると決めたか、いつから休むか。日付を入れて残します。
そして、本人にも同じものを渡してください。双方が同じ内容を持っていれば、認識のずれが起きません。
なお、健康に関する情報が含まれます。誰が見られるかを決めて、他のスタッフの目に触れない形で保管してください。
自分が経営者として妊娠した場合
雇う側が当事者になることもあります。制度の使える範囲が違うので、分けて把握してください。
個人事業主には、産前産後の休業や育児休業の制度は適用されません。雇用されている方向けの仕組みだからです。
一方、国民年金には産前産後期間の保険料免除があります。届出が要るため、市区町村の窓口で確認してください。
そして、収入は止まります。休む期間の生活費を、事前に用意しておく必要があります。
備え方は、急に店を空けることになったときや開業後の運転資金はいくら必要かで扱っています。
今日やる一つ
いま雇っている方がいるなら、産前産後の休業と育児休業について、何が使えるかを一度調べてください。報告を受けてから調べると、その間に不安な時間を過ごさせることになります。
よくある質問
報告を受けたら最初に何を言いますか
祝ってください。次に体調を聞いてください。そして「これからのことは落ち着いてから一緒に決めましょう」と伝えてください。その場で条件を詰める必要はありませんし、シフトや人手の心配を口にしないでください。
施術を続けられますか
本人と主治医の判断です。こちらが「大丈夫でしょう」とも「無理でしょう」とも言わないでください。代わりに、外せる作業や座れる時間といった選択肢を用意してください。
制度は何がありますか
産前産後の休業と育児休業が法令で定められています。健康保険や雇用保険からの給付、社会保険料の免除もあります。金額と条件は加入内容で変わるため、年金事務所やハローワーク、社会保険労務士にご確認ください。
抜けた分はどうしますか
その方が担っていた売上を数えてください。他の人でどこまで受けられるかを見て、足りない分は営業時間を減らす・新しく雇う・外部に頼むのどれかになります。代わりを雇うなら、期間を決めてください。
他のスタッフにはいつ伝えますか
本人の同意なく伝えないでください。いつ誰に伝えるかは本人が決めることです。伝えると決まったら、誰が何を担うかと、負担が増える人へのその分の扱いもあわせて説明してください。
やってはいけないことは
妊娠や出産を理由とした解雇や不利益な扱いは認められていません。降格、減給、契約を更新しないことも含まれます。退職を勧めることも、善意のつもりでも圧力として受け取られます。
復帰のときは何を決めますか
働ける時間が以前とは変わるため、時短や日数の調整を検討してください。技術の間が空いているので慣らす時間も要りますし、顧客を誰が引き継いでいたか、戻すのかも決めておいてください。
「ぎりぎりまで働きたい」と言われたら
希望を否定しないでください。ただし、安全に行える範囲は主治医が判断します。「主治医に確認していただけますか」と伝えたうえで、続ける条件(何を外すか、何時間までか、いつ見直すか)を書面にしてください。
復帰後の当日欠勤はどうしますか
子どもの発熱で当日に休む日は避けられません。その日の予約をどうするかを先に決め、その方だけに穴埋めを負わせない形にしてください。ただし他のスタッフの負担が偏り続けると、そちらが辞めます。定期的に見直してください。
経営者自身が妊娠した場合は
個人事業主には産前産後休業や育児休業の制度が適用されません。雇用されている方向けの仕組みだからです。一方、国民年金には産前産後期間の保険料免除があるため、市区町村の窓口で確認してください。収入は止まるので、休む期間の生活費を事前に用意する必要があります。
記録は残しますか
いつ報告を受けたか、どう調整すると決めたか、いつから休むか。日付を入れて残し、本人にも同じものを渡してください。健康に関する情報が含まれるため、誰が見られるかを決めて保管します。



