サロンでスタッフが辞めるとき|手続きの順序と顧客の引き継ぎ
最終更新: 2026年7月28日
Summary
退職を告げられて慌てないための手順です。申し出を受けたときの確認3点、期限のある手続き、顧客への伝え方、連れ出しの法的な線引き、残るスタッフへの配慮を整理します。
スタッフから退職を告げられたとき、慌てて引き止めるか、感情的になるかのどちらかになりがちです。しかしその場でやるべきことは、事実の確認と、手順の共有です。
小規模なサロンでは、1人抜けることの影響が大きくなります。だからこそ、手順を決めておく価値があります。

申し出を受けたときにすること
まず、次の3点を確認してください。
退職を希望する日です。就業規則に定めがあればそれに従い、なければ法律上の考え方が基準になります。期間の定めのない雇用契約では、申し入れから2週間で終了するとされていますが、実務上は引き継ぎの期間を考慮して調整することが一般的です。
理由です。ただし、詳しく話すことを強要しないでください。話したくない事情もあります。
引き継ぎの範囲です。担当しているお客様、進行中の業務、管理している備品や鍵。何を誰に渡すかを整理します。
その場で結論を出す必要はありません。日を改めて話す時間を設けてください。
| 確認すること | 注意点 |
|---|---|
| 退職を希望する日 | 就業規則の定めを確認する |
| 理由 | 詳細を強要しない |
| 引き継ぎの範囲 | 担当客、業務、備品、鍵 |
引き止めるかどうか
引き止めたい気持ちは自然ですが、条件を提示する前に理由を理解してください。
待遇が理由なら、条件の見直しで解決する可能性があります。ただし、辞めると言われてから上げると、他のスタッフとの公平性の問題が生じます。
人間関係が理由なら、条件を変えても解決しません。原因が店側にあるなら、その人が残っても別の人が辞めます。
キャリアが理由なら、引き止めは難しくなります。独立や別の職種への転向は、店で提供できないものを求めているためです。
体調や家庭の事情なら、働き方の調整で続けられる可能性があります。時短、曜日の変更、業務内容の変更。ただし本人の希望が前提です。
いずれの場合も、退職の意思が固い相手に繰り返し翻意を求めることは避けてください。退職の自由は保障されており、執拗な引き止めは問題になりえます。
辞めさせる場合は扱いが違う
ここまでは本人からの申し出を前提にしましたが、店側から契約を終わらせる場合は要件が厳しくなります。
解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなければ無効とされます。能力が期待に届かない、態度が良くないといった理由だけでは足りません。改善の機会を与えたか、指導した記録があるかが問われます。
解雇する場合、原則として30日前までの予告か、予告手当の支払いが必要です。
試用期間中であっても、労働契約は成立しています。自由に終わらせられるわけではありません。
事業の縮小を理由とする場合、人員削減の必要性、回避の努力、人選の合理性、手続きの妥当性といった観点で判断されます。
いずれの場合も、進める前に社会保険労務士か弁護士に相談してください。手順を誤ると、後から無効を主張され、その間の賃金の支払いを求められることがあります。
合意による退職という形にする方法もありますが、実質的に退職を強要したと評価されれば同じ問題が生じます。話し方と記録の残し方に注意が必要です。
手続きの流れ
決まったら、事務的な手続きを進めます。期限があるものから片付けてください。
退職届を受け取ってください。口頭の申し出だけだと、後で認識のずれが生じます。日付と退職日が書かれたものを、書面で受け取ります。
社会保険と雇用保険の資格喪失の手続きをしてください。期限が定められており、遅れると本人の手続きに影響します。
離職票を交付してください。失業給付の手続きに必要です。交付が遅れると受給が遅れるため、優先してください。
源泉徴収票を交付してください。次の勤務先や、本人の確定申告で必要になります。
有給休暇の残りを確認してください。退職までに取得してもらうか、他の方法で処理するかを決めます。
貸与物を回収してください。鍵、制服、名札、業務で使っていた機器。何を貸していたかの記録がないと、回収漏れが起きます。

顧客の引き継ぎ
小規模なサロンで最も影響が大きいのが、担当していたお客様の引き継ぎです。
まず、その人が担当していた方を洗い出してください。指名で来店していた方、継続して同じ人が担当していた方。記録がないと、この作業ができません。
次に、誰が引き継ぐかを決めてください。人数が限られる場合、オーナーが引き継ぐことになります。
そのうえで、お客様へ伝えます。伝え方には配慮が必要です。
退職の事実は伝えてください。何も言わずに担当が変わると、不信につながります。
理由は詳しく言わないでください。本人の事情であり、店が説明することではありません。
次の担当を明示してください。「次回から◯◯が担当します」と具体的に伝えると、不安が減ります。
引き継ぎの内容を伝えてください。これまでの施術の記録が引き継がれていることが分かると、安心されます。
顧客の連れ出しについて
退職者が、担当していたお客様を新しい職場へ連れて行こうとする場面があります。ここは法的な論点を含みます。
顧客の名簿や連絡先を持ち出すことは、営業秘密の侵害や、個人情報の不適切な取り扱いにあたる可能性があります。在職中に取得した情報の持ち出しは、原則として認められません。
一方で、お客様自身が退職者を探して移ることは、お客様の自由な意思による選択です。これを店が止めることはできません。
競業を制限する取り決めを置く場合、その有効性は個別に判断されます。期間、地域、職種の範囲が過度に広いものは、職業選択の自由との関係で無効とされることがあります。
実務としては、次の点を押さえてください。
雇用の開始時に、顧客情報の取り扱いについて取り決めておく。
退職時に、貸与した端末やデータの返却と、控えを残していないことを確認する。
顧客情報へのアクセス権限を、退職日をもって停止する。

取り決めの内容が有効かどうかは、弁護士に確認してください。厳しすぎる制限は、かえって無効となるおそれがあります。
引き継ぎ期間の使い方
退職日までの期間は限られています。何を優先するかを決めてください。
最優先は、その人しか知らないことの共有です。担当客ごとの注意点、仕入先とのやり取り、機器の扱いで気をつけている点。頭の中にしかない情報は、聞かなければ失われます。
次に、記録の整備です。書きかけの顧客記録を完成させてもらいます。「あの人にはこういう話をした」という記憶は、書き残さなければ消えます。
次に、実際の引き継ぎです。可能なら、担当客の施術に後任が同席する機会を作ってください。文書だけでは伝わらないことがあります。
最後に、業務の手順書です。時間があれば作ってもらいますが、優先度は低くなります。手順は他の人でも書けますが、その人しか知らない情報は本人にしか書けません。
| 優先度 | 引き継ぐもの |
|---|---|
| 高 | その人しか知らない情報 |
| 高 | 書きかけの顧客記録の完成 |
| 中 | 担当客への同席による引き継ぎ |
| 低 | 業務の手順書 |
引き継ぎの内容は、口頭ではなく形に残してください。退職後に確認できません。
残るスタッフへの影響
1人が辞めると、残る人の負担が増えます。ここへの配慮を忘れないでください。
いつ、誰に伝えるかを決めてください。お客様より先に、残るスタッフへ伝えるのが順当です。噂で知ることになると、不信が生まれます。
業務の再配分を明示してください。誰が何を引き継ぐかを決めずにいると、暗黙のうちに負担が偏ります。
補充の見通しを伝えてください。採用するのか、当面は現体制で回すのか。分からないままだと、残る人も先が見えません。
負担が増える期間の待遇を考えてください。一時的に業務が増えるなら、その分を何らかの形で報いる検討が必要です。
退職が続く場合、原因が個人ではなく店側にある可能性があります。辞めた人の理由を並べて、共通点がないかを確認してください。
アカウントと権限の停止
見落とされやすいのが、システム上の権限です。退職日をもって、次を停止してください。
管理画面へのログイン。顧客情報にアクセスできる状態を残さないでください。
店の共有アカウント。パスワードを共有していた場合、変更が必要です。
メールやメッセージのアカウント。転送の設定が残っていないかも確認してください。
鍵の交換も検討してください。物理的な鍵を返却してもらっても、複製されていないことは確認できません。
VANNAでは、管理画面に入るユーザーを追加・削除できます。退職者のユーザーを削除すれば、顧客情報を含む管理画面へアクセスできなくなります。管理画面に入るユーザーはプランごとに上限があり、Proは2名、Max以上はより多くの人数を登録できます。
なお、退職者が過去にCSVで書き出したデータについては、システム側で回収できません。書き出しの権限をどう設定するかは、運用で決めることになります。
料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。決済を使う場合のStripe決済手数料は店舗負担で別途かかります。現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。
補充するかどうかを決める
1人抜けた分を、そのまま補充するとは限りません。判断してください。
売上と稼働率を確認してください。抜けた後の人数で、いまの予約を回せるか。回せるなら、補充せずに1人あたりの単価を上げる方向もあります。
採用にかかる時間と費用を見積もってください。求人の掲載、面接、教育。戦力になるまでに数か月かかります。その間の負担を残る人に求めることになります。
業務の見直しでまかなえないかを検討してください。抜けた人がやっていた業務のうち、やめられるもの、外に出せるものがないか。
将来の見通しも考えてください。予約が伸びている局面なら補充が要りますが、横ばいなら現体制を保つ選択もあります。
補充すると決めたら、前回の採用で何がうまくいかなかったかを振り返ってから始めてください。同じ求人票で同じ結果になります。
辞め方が次の採用に影響する
退職の扱いは、店の外にも伝わります。美容業界は横のつながりが強く、扱いが悪ければ評判になります。
円満に送り出すことは、次の採用にも効きます。逆に、揉めて辞めた人がいる店には応募が集まりにくくなります。
最終日に、感謝を伝えてください。形式的でも構いません。何も言わずに終わると、その記憶が残ります。
退職後の関係も断ち切らないでください。独立した相手と協力する場面が出ることもあります。
辞める前に気づける兆候
退職の申し出は、突然のように見えて、その前に兆候が出ていることがあります。
シフトの希望が変わることがあります。特定の曜日を空けたがる、有給の取得が増える。転職活動の可能性があります。
会話の量が減ることがあります。以前は相談してきたことを言わなくなる。
改善の提案をしなくなることがあります。よくしようという気持ちが薄れているためです。
これらに気づいても、問い詰めないでください。「辞めるのか」と聞かれると、まだ迷っている段階でも決断を早めさせることがあります。
代わりに、話す機会を作ってください。定期的な面談があれば、そこで困っていることを聞けます。兆候に気づいてから初めて面談を設けると、探られていると感じられます。
日頃から短い面談を続けている店では、辞める前に相談が来ます。相談の段階なら、解決できることがあります。
よくある質問
退職の申し出は何日前までに受けるべきですか
就業規則に定めがあればそれによります。定めがない場合、期間の定めのない雇用契約では申し入れから2週間で終了するとされています。実務上は引き継ぎの期間を考慮して調整することが一般的です。
引き継ぎが終わらないことを理由に退職を拒めますか
退職の自由は保障されており、引き継ぎを理由に一方的に拒むことはできません。円滑に進めるには、申し出を受けた時点で引き継ぎの計画を一緒に立ててください。
退職者が顧客を連れて行くのを止められますか
顧客の名簿や連絡先の持ち出しは、原則として認められません。一方、お客様自身の意思で移ることを止めることはできません。競業を制限する取り決めの有効性は個別に判断されるため、弁護士に確認してください。
有給休暇が残っている場合はどうしますか
退職までに取得してもらうのが基本です。日程の調整が必要になるため、退職日を決める段階で残日数を確認してください。買い取りの可否は状況によるため、社会保険労務士に確認してください。
お客様にはいつ伝えますか
担当が変わることが決まってから、来店のタイミングで伝えてください。退職日より前に来店される方には直接、それ以外の方には次回来店時か、必要に応じて連絡します。
退職が続く場合、何を見直すべきですか
辞めた人の理由に共通点がないかを確認してください。待遇、業務量、人間関係、評価の不透明さ。個人の問題として片付けると、同じことが繰り返されます。
出典
本記事は2026年7月時点の一般的な情報の整理であり、個別の法的助言ではありません。退職の手続き、競業を制限する取り決めの有効性、有給休暇の扱いについては、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご確認ください。VANNAの料金・機能・キャンペーン条件は変更される場合があります。



