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オーナーの働き方・将来設計

扶養に入ったまま開業できるか|税金と社会保険で基準が違う

公開: 2026年8月5日最終更新: 2026年8月6日

Summary

扶養の判定の構造を整理します。税金の扶養と社会保険の扶養という2つの制度の違い、給与と事業所得で計算が変わる点、経費と青色申告特別控除の影響、健康保険組合ごとに異なる判定、外れた場合の負担、世帯として見る考え方、開業前に確認する3点を扱います。

「扶養に入ったまま、どこまで働けますか」。開業を考えている方から、この質問をよく受けます。

答えにくいのは、「扶養」という言葉が2つの別の制度を指しているためです。しかも、事業所得は給与とは計算のしかたが違います。

この記事では、制度の構造だけを説明します。実際の判断はご自身の状況で変わるため、税理士や、加入している健康保険の窓口にご確認ください。

「扶養」は2つある
「扶養」は2つある

「扶養」は2つある

まず、この区別から入ってください。ここを混ぜると、話が通じません。

1つは、税金の扶養です。配偶者控除や配偶者特別控除といった、所得税・住民税の計算に関わるものです。

もう1つは、社会保険の扶養です。配偶者の健康保険に入り、保険料を払わずに済む状態を指します。国民年金の第3号被保険者も、ここに関わります。

この2つは、基準も判断する主体も違います。税金は法律で決まっていますが、社会保険は加入している健康保険組合が判断するためです。

つまり、片方の基準を満たしていても、もう片方では外れることがあります。「扶養に入れますか」という質問には、どちらの話かを確かめてから答える必要があります。

「103万円」「130万円」といった数字が混在して語られるのは、この2つが混ざっているためです。

種類何が変わるか判断する主体
税金の扶養配偶者の所得税・住民税法律の基準
社会保険の扶養健康保険料・年金保険料加入している健康保険組合

事業所得は給与と違う

ここが、開業する方にとって最も大事な点です。

パートやアルバイトの収入は、給与所得です。給与には給与所得控除があるため、収入から一定額を差し引いた後の金額で判定されます。

一方、開業して得た収入は事業所得になります。こちらは、売上から必要経費を差し引いた金額が所得です。

つまり、同じ「100万円の収入」でも、給与か事業かで所得の額が変わります。よく語られる「103万円の壁」は給与を前提とした話なので、事業所得にはそのまま当てはまりません。

事業所得の場合は、売上ではなく所得、つまり売上から経費を引いた額で考えることになります。この点だけでも、押さえておいてください。

経費が判定を左右する

事業所得では、何を経費にできるかが結果に直結します。ここは記帳の問題です。

材料費、家賃、光熱費、道具の購入費。事業に必要なものは経費になります。自宅の一部を使っている場合は、按分という考え方で一部を経費にできます。

ただし、按分の割合には根拠が要ります。面積や使用時間など、説明できる基準で分けてください。感覚で決めた割合は、後で説明を求められたときに困ります。

つまり、売上が同じでも、経費の計上が正確かどうかで所得が変わります。記帳が雑だと、実際より所得が大きく出ることになります。

そして、青色申告をしている場合は青色申告特別控除があります。要件を満たせば、所得からさらに差し引けます。

これらの計算は、記帳の質に依存します。開業時の記帳の考え方は、サロンの経費管理を月末30分で回すで整理しています。

給与と事業所得は計算が違う
給与と事業所得は計算が違う

社会保険の扶養は基準が違う

税金より複雑なのが、こちらです。組合によって扱いが変わります。

一般に「年間130万円未満」という基準が知られていますが、これは所得ではなく収入の基準です。そして、事業所得の場合に何を「収入」とみなすかが、組合によって違います。

売上から必要経費を引いた額で見る組合もあれば、一部の経費しか認めない組合もあります。「直接的な経費のみ」という扱いをするところもあります。

つまり、税金の申告では所得が低くても、社会保険では扶養から外れる、という状況が起こりえます。

ここは推測で判断しないでください。配偶者が加入している健康保険組合に、直接確認してください。「個人事業を始めた場合、扶養の判定はどう計算しますか」と聞けば答えが返ります。

外れた場合に何が起きるか

判断のために、外れた後も知っておいてください。

社会保険の扶養から外れると、自分で国民健康保険と国民年金に加入することになります。保険料は自己負担です。

国民健康保険の額は、前年の所得と自治体によって変わります。金額は自治体の窓口で試算してもらえるため、外れる前に一度確認しておいてください。

国民年金は、定額です。ただし、第3号被保険者だった期間と違い、自分で納めることになります。

税金の扶養から外れる場合は、配偶者の税額が上がります。ただし配偶者特別控除には段階があるため、いきなり全額なくなるわけではありません。

「壁の手前で止める」という考え方

よく聞く判断ですが、慎重に考えてください。

扶養に入り続けるために売上を抑えると、事業は成長しません。抑えた状態が数年続けば、その分の機会を失うことになります。

技術も、件数を受けなければ伸びません。抑えているあいだに同期が先に進む、という形にもなりえます。

一方、外れた直後は手取りが減ります。保険料の負担が新たに発生するためです。

つまり、越えるなら中途半端に越えないほうが良い、という構造になります。少しだけ超えると、負担だけが増えます。

どこで判断するかは、事業をどうしたいかによります。長く続ける前提なら、早めに越えて基盤を作るという判断も成り立ちます。

開業前に確認する3点
開業前に確認する3点

開業届と扶養

「開業届を出すと扶養から外れる」という話を聞くことがあります。ここは誤解が含まれます。

開業届そのものが、扶養の判定を決めるわけではありません。判定は、収入や所得の額で行われます。

ただし、組合によっては「個人事業主は扶養に入れない」という規定を持つところがあります。この場合、額に関わらず外れることになります。

繰り返しになりますが、ここは組合ごとに違います。開業前に確認してください。開業届の出し方は、開業届の記入例テンプレで整理しています。

世帯として見る

自分の手取りだけで判断すると、全体が見えません。ここは世帯で計算してください。

見るのは、世帯としての手取りの合計です。自分の収入が増えても、配偶者の税額が上がり、こちらの保険料が発生すれば、合計は思ったほど増えません。

逆に、ある程度を越えれば合計は増え続けます。どこから増え始めるかは、それぞれの所得によって変わります。

この計算は、自分ではやりにくい部分です。税理士に一度出してもらうと、判断の基準ができます。1回計算しておけば、以後は自分で当てはめられます。

記録を残しておく

判定の場面で、書類の提出を求められることがあります。備えておいてください。

確定申告書の控えは、必ず保管してください。扶養の確認で最も使われる書類で、毎年提出を求められる組合もあります。

帳簿と領収書も、揃えておいてください。経費の内訳を聞かれる場合があります。

そして、売上の推移が分かる形にしておいてください。年の途中で見通しを立てるとき、月ごとの数字が要ります。

書類の保管は、領収書と帳簿の保存で整理しています。

なお、結婚などで氏名が変わる場合は、届出や口座の名義を含めて手続きが連鎖します。順番はサロンオーナーの氏名変更チェックリストで扱っています。

途中で見通しが変わったら

年の途中で、想定より売上が伸びることがあります。ここも動き方を決めておいてください。

まず、いまの数字を確認してください。年末までにいくらになるかを、月ごとの実績から出します。

超えそうだと分かったら、早めに配偶者の勤務先に相談してください。後から遡って外れる扱いになると、保険料の精算が発生します。

自分で調整するという判断もあります。ただし、断った予約は戻りません。年末に予約を止めると翌年の来店にも影響するため、その損失も計算に入れてください。

決めること内容
どちらの扶養か税金か、社会保険か。基準が違う
判定の基礎事業は売上ではなく所得(売上−経費)
社会保険の確認先配偶者が加入している健康保険組合
越えるなら中途半端に越えない。負担だけが増える
備える書類確定申告書の控え・帳簿・領収書

VANNAでできること

VANNAでは、売上の実績を月ごとに確認できます。年の途中で見通しを立てるとき、この数字が判断の材料になります。カレンダー予約はMaxプランの機能で、来店前のメールリマインドは全プランで使えます。

一方で、扶養の判定を行う機能や、税額を計算する機能はありません。会計ソフトや税理士の領域になります。

料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。

相談できる先

自分で判断しきれない部分が多い分野です。相談先を知っておいてください。

税金については、税務署が無料で相談を受け付けています。確定申告の時期は混みますが、それ以外なら時間を取ってもらえます。

社会保険については、配偶者の勤務先か、その健康保険組合です。ここは組合ごとに扱いが違うため、他の窓口では答えが出ません。

年金の記録や見込みについては、年金事務所になります。

そして、事業全体の判断は税理士です。商工会議所などで無料の相談会が開かれていることもあるため、まずそこで聞いてみる方法もあります。

どの窓口も、行く前に聞くことを書き出しておいてください。「扶養のことを聞きたい」だけでは、話が広がりすぎて時間が足りません。

開業する前に確認しておく

始めてから知ると、選択の幅が狭くなります。順番を逆にしてください。

まず、配偶者の健康保険組合に確認してください。「個人事業主は扶養に入れない」という規定があるなら、開業した時点で外れることになります。これは金額の問題ではありません。

次に、外れた場合の保険料を試算してください。自治体の窓口で、前年の所得を伝えれば概算が出ます。

そして、その額を事業の計画に入れてください。開業初年度から保険料の負担があるなら、必要な売上も変わります。

この3つを済ませてから始めれば、後で慌てずに済みます。1年目の税務の流れは、サロン開業1年目の確定申告スケジュールで整理しています。

制度は変わる

最後に、注意点です。この分野は改正が続いています。

金額の基準も、判定のしかたも、法改正で変わります。数年前の情報がそのまま使えるとは限りません。

そのため、具体的な数字はここでは断定しません。判断する時点での最新の内容を、税務署・年金事務所・健康保険組合で確認してください。

インターネット上の情報は、書かれた時点のものです。日付を確認せずに信じないでください。

今日やる一つ

配偶者が加入している健康保険の名称を確認してください。そして、その組合に「個人事業を始めた場合、扶養の判定はどう計算しますか」と1本電話してください。この答えが、いちばん確実な出発点になります。

よくある質問

「扶養」とは何を指しますか

2つあります。税金の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)と、社会保険の扶養(配偶者の健康保険に入る)です。基準も判断する主体も違うため、分けて考えてください。

103万円や130万円はあてはまりますか

そのままは、あてはまりません。よく語られる金額は給与を前提とした話です。開業して得た収入は事業所得なので、売上ではなく所得(売上−経費)で考えることになります。

経費は関係しますか

大きく関係します。事業所得は売上から必要経費を引いた額なので、記帳が正確かどうかで結果が変わります。青色申告をしていれば、さらに控除があります。

社会保険の基準はどこで確認しますか

配偶者が加入している健康保険組合です。事業所得の場合に何を収入とみなすかは組合によって違い、経費を全額は認めないところもあります。推測で判断しないでください。

開業届を出すと扶養から外れますか

開業届そのものが判定を決めるわけではありません。ただし、組合によっては「個人事業主は扶養に入れない」という規定があります。開業前に確認してください。

外れると何が起きますか

自分で国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を負担します。国民健康保険の額は前年の所得と自治体で変わるため、窓口で試算してもらえます。

壁の手前で止めるべきですか

判断は事業をどうしたいかによります。ただし、少しだけ超えると負担だけが増える構造です。越えるなら中途半端に越えないほうが良い、という点は押さえてください。

開業前に何を確認しますか

3つです。配偶者の健康保険組合に「個人事業主は扶養に入れるか」を聞く、外れた場合の国民健康保険を自治体で試算する、その額を事業の計画に入れる。始めてから知ると、選択の幅が狭くなります。

世帯としてはどう考えますか

自分の手取りだけを見ないでください。収入が増えても、配偶者の税額が上がり、こちらの保険料が発生すれば、世帯の合計は思ったほど増えません。どこから増え始めるかはそれぞれの所得で変わるため、一度税理士に計算してもらうと基準ができます。

経費の按分に基準は要りますか

要ります。面積や使用時間など、説明できる基準で分けてください。感覚で決めた割合は、後で説明を求められたときに困ります。

途中で超えそうになったら

まず月ごとの実績から年末の見込みを出してください。超えそうなら早めに配偶者の勤務先に相談します。後から遡って外れると、保険料の精算が発生します。