借りた後の返済とどう付き合うか|利益ではなく、返した後の残りを見る
公開: 2026年8月27日
Summary
創業融資を受けた後の話を整理します。元金の返済が経費にならないこと、据置期間が終わる月の備え、毎月見る3つの数字、苦しくなりそうなときに遅れる前に相談すること、追加融資と繰上返済の判断、完済後の使い道までを扱います。
開業して1年が経ち、通帳から毎月決まった額が引き落とされるようになりました。借りるときはあれほど何度も計算したのに、返し始めてからは一度も数字を見ていません。売上のよかった月も、そうでなかった月も、同じ額が黙って出ていきます。
融資については、借りるところまでは誰もが調べます。書類の書き方も、面談の受け方も、情報はたくさんあります。ところが、実際に付き合う期間は、借りたあとのほうがはるかに長いのです。5年、7年、10年。開業の準備にかけた数か月とは比べものになりません。
この記事では、返済が始まったあとに何を見るか、そして苦しくなったときにどう動くかを扱います。借りるまでの手順は日本政策金融公庫 創業融資 完全ガイドにあります。
据置期間の終わりを、カレンダーに入れる
まず、ここを確認してください。
据置期間を設けている場合、その間は利息だけを払っている状態になっていることがあります。そして据置が終われば、元金の返済が加わります。
つまり、ある月から引き落としの額が上がります。忘れていると、その月の資金繰りが崩れます。しかも、忘れているのですから、なぜ足りないのかもすぐには分かりません。
契約の書類を出して、いつから、いくらになるかを確認してください。そして、その月をカレンダーに入れてください。
なお、上がった額を出せるかどうかは、月々の利益から見てください。売上ではありません。ここを取り違えると、大丈夫なはずが足りない、ということになります。
返済は、経費ではない
ここを取り違えている方が、少なくありません。
元金の返済は、経費になりません。利息の部分は経費として扱われますが、元金は違います。
つまり、帳簿の上では利益が出ているのに、手元にはお金が残らないという状態が起こります。返済のぶんだけ、利益より現金の減りが大きくなるからです。決算書を見て「今年は良かった」と思っていたのに、通帳の残高は増えていない。この食い違いの正体は、たいていここにあります。
ですから、利益が出ているかどうかだけを見ないでください。返済を引いたあとに、いくら残るかを見てください。
この考え方はサロンの資金繰り表で扱っています。返済は、そこに必ず1行として入れてください。
毎月見る数字は、3つでよい
たくさん見ようとすると、続きません。
- 返済額(月にいくら出ていくか)
- 返済を引いたあとに残った現金(増えているか、減っているか)
- 残りの回数(あと何回で終わるか)
3つめは軽く見られがちですが、意外に効きます。終わりが見えていると、判断が変わるからです。あと3年なら我慢して続けようとも思えますし、あと8年なら別の手を考えようとも思えます。
この3つを、月に一度、同じ日に見てください。記帳の習慣ができていれば、数分で出ます。習慣の作り方はサロンの経費管理を月末30分で回すで扱っています。
苦しくなったときは、早く相談する
この記事でいちばん伝えたいところです。
返済が難しくなりそうだと分かった時点で、金融機関に連絡してください。引き落としができなかったあとではありません。
返済の条件を見直す相談ができる場合があります。仕組みや使えるかどうかは、金融機関と契約の内容によって変わりますので、こちらでは断定しません。窓口に、いまの状況をそのまま話して確認してください。
そのとき、数字を持って行ってください。直近の試算表、資金繰りの見通し、いまどういう手を打っているか。数字があると、話が具体的になります。「厳しくて」だけでは、相手も動きようがありません。
なお、遅れてから連絡するのと、その前に相談するのとでは、扱いが変わります。連絡するのが気まずい時期ほど、早く動いてください。気まずさは、待っても軽くなりません。
連絡を、待たない
金融機関から何も言われないから大丈夫、とは考えないでください。
こちらから状況を伝えている先と、そうでない先とでは、いざというときの動きが変わります。相手にとっても、何年も音沙汰のない相手より、毎年顔を見ている相手のほうが判断しやすいのは当然です。
年に一度は、決算の書類を持って行ってください。求められていなくてもかまいません。
そして、大きな変化があったときは、その都度伝えてください。移転、スタッフの増減、業態の変更。あとから知られるより、先に伝えるほうが信用になります。
追加で借りるかどうか
途中で、また必要になることがあります。
判断する前に、何のために借りるのかを1行で書いてください。設備なのか、運転資金なのか、それとも返済のためなのか。
3つめの場合は、いったん立ち止まってください。返済のために借りるのは、問題を先に送っているだけになることがあります。そのときは楽になりますが、翌年の自分に同じ判断を迫ることになります。
そして、いま返している額に、新しい返済が上乗せされます。合計でいくらになるかを先に計算してください。1本ずつ見ていると、それぞれは払える額に見えます。
あわせて、借りる前に、いま手元に何か月分の運転資金があるかを出してください。足りていないのであれば、借りる理由はそこにあります。
繰上返済をするかどうか
余裕が出てくると、まとめて返してしまいたくなります。借金があるという状態そのものが、気持ちの重しになるからです。
ただ、先に、返したあと手元にいくら残るかを見てください。返済後に運転資金が細くなるようなら、待ってください。
利息の負担は確かに減ります。しかし、一度返したお金は、必要になっても戻ってきません。もう一度借りるには、また審査があります。
そして、繰上返済に条件が付いている場合があります。契約の書類を確認するか、窓口に聞いてください。
判断の目安は、数か月分の運転資金を確保できているかどうかです。確保できていないのであれば、そちらが先です。
返済のために、売上を追わない
順番を間違えると、かえって苦しくなります。
返済額が決まっているからといって、値引きで客数を増やそうとしないでください。単価が下がれば、同じ売上でも利益は減ります。忙しくなったのに手元が楽にならない、という状態になります。
無理に営業日を増やすことも、同じです。目先の数字は上がりますが、自分が倒れれば返済も止まります。
見るのは、利益から返済を引いたあとの残りです。そしてこの数字を増やす方法は、売上を増やすことだけではありません。
苦しさの原因を、返済のせいにしない
これも、よく起きることです。
返済が重く感じるとき、原因が別のところにあることがあります。仕入れ、固定費、稼働率。返済は、そのうちの1つでしかありません。毎月きっちり同じ額が出ていくぶん、目につきやすいだけということもあります。
年に一度、支出を全部並べてください。並べてみると、返済が占める割合が分かります。思っていたより小さいことも、大きいこともあります。
そして、返済以外に動かせるものがあるかを見てください。返済額は簡単には変えられませんが、他の項目には手をつけられます。動かせるものから先に手をつけるほうが、早く効きます。
見直す日は、年に一度、決算のあとに置くと忘れません。
払えるものが限られたとき
現金が足りない月に、何を先に払うか。決めていないと、その場で選ぶことになります。そして、その場の判断はたいてい間違えます。
順番を自分で決めきらないでください。滞納の影響は、相手によってまったく違います。給与、家賃、仕入れ、税金、社会保険、返済。それぞれ、遅れたときに起こることが異なります。
だからこそ、その状態になる前に相談してください。金融機関、税務署や年金事務所、そして専門家。いずれも、遅れてから連絡するより前に動くほうが、選べる幅が広くなります。
そして、支払いを止める前に必ず連絡してください。黙って止めることが、いちばん取り返しにくくなります。連絡があれば事情として扱われるものが、無ければ単なる滞納になります。
なお、この状態が2か月続くようなら、資金繰りの問題ではなく事業の構造の問題です。考え方は開業初期の資金繰り管理で扱っています。
自分の契約の中身を、言えるようにする
意外なことに、聞かれるとすぐに答えられない方が多くいます。
金利が固定なのか変動なのか、返済の期間があと何年か、保証がついているか。この3つは、いつでも言えるようにしておいてください。
変動であれば、条件が変われば返済額も変わりえます。仕組みは契約によって違いますので、書類か窓口で確認してください。
そして、契約の書類を1か所にまとめてください。複数から借りている場合は、一覧を作ってください。相談のときに、これがそのまま資料になります。慌てて探し回る時間が、いちばんもったいない時間です。
家族に伝えているか
一人で抱えていることが多い部分です。
借入の存在と、おおよその残りを、配偶者や家族に伝えているかを確認してください。伝えていない場合、自分に何かあったときに、誰にも分かりません。
保証人になっている方がいるなら、なおさらです。知らないまま責任だけが残る形は、避けてください。
全部を共有する必要はありません。どこから借りていて、書類がどこにあるか。この2つで足ります。金額の細部まで話すのが気が重いのであれば、そこは伏せてもかまいません。
保証人・担保がある場合
借りたときの条件を、もう一度確認してください。
保証人がいる場合、その方にも関わる話になります。返済が難しくなりそうなときは、状況を伝えるかどうかを考える必要があります。
担保がある場合は、対象になっているものを確認してください。何を差し出しているのかを、正確に把握しておいてください。契約のときに説明は受けているはずですが、記憶があいまいになっていることがあります。
そして、これらの条件は、途中で見直しの相談ができる場合があります。可否は契約によりますので、窓口に確認してください。
事業をやめる判断をするとき
返済が残っている状態でも、判断はできます。
残債があるから続けるしかない、とはかぎりません。続けることで残債が増える場合もあります。赤字のまま続ければ、いずれ返せる額はさらに小さくなります。
判断の前に、専門家に相談してください。金融機関にも、早い段階で伝えてください。黙って続けたあとに行き詰まるより、話せる余地があるうちに伝えるほうが、道は残ります。
続けるか閉じるかの考え方はサロンを続けるか閉じるかの判断で扱っています。
完済が近づいたら
終わりが見えてきたときにも、やることがあります。
完済したあと、その額が毎月浮きます。使い道を先に決めておいてください。決めていないと、生活費に溶けます。そして、溶けたあとでは戻せません。
設備の更新、次の借入をしないための積立、自分への給与。どれでもかまいませんが、先に決めてください。何年も我慢して返してきたのですから、その成果が形として残る使い方をしたいところです。
そして、完済の証明となる書類は保管してください。次に借りるときに使えます。
記録に何を残すか
数字だけでなく、やり取りも残してください。
書くのは、いつ、どこに、何を伝えたか。窓口の担当の方の名前も入れてください。
金融機関の担当者は替わります。前の担当者に話したことが引き継がれていない、ということは実際にあります。そのときに、こちらの記録が助けになります。
そして、返済の予定表は、いつでも出せる場所に置いてください。相談のたびに探すことになります。
| 見るもの | 頻度 | 判断に使うこと |
|---|---|---|
| 返済額 | 毎月 | 利益から出せているか |
| 返済後に残った現金 | 毎月 | 増えているか、減っているか |
| 残りの回数 | 毎月 | 終わりまでの見通し |
| 支出の全体 | 年に一度 | 返済以外に動かせるものがあるか |
| 据置期間の終わり | 契約時に一度 | 引き落とし額が上がる月をカレンダーへ |
今日やる一つ
契約の書類を出して、据置期間の終わる月と、そこから引き落としがいくらになるかを確認してください。すでに始まっているのであれば、返済を引いたあとに手元がいくら残っているかを、直近3か月ぶん出してください。3か月並べると、増えているのか減っているのかが見えます。
よくある質問
返済は経費になりますか
元金の返済は経費になりません。利息の部分は経費として扱われます。そのため、帳簿の上で利益が出ていても手元にお金が残らない、という状態が起こります。決算書と通帳の食い違いは、たいていここが原因です。
据置期間が終わると、どうなりますか
利息だけを払っていた状態から、元金の返済が加わります。ある月から引き落としの額が上がりますので、その月をカレンダーに入れておいてください。上がった額を出せるかどうかは、売上ではなく利益から見ます。
毎月何を見ればよいですか
3つで足ります。返済額、返済を引いたあとに残った現金、残りの回数。月に一度、同じ日に見てください。終わりまでの回数が見えていると、判断が変わります。
返済が苦しくなりそうです
引き落としができなかったあとではなく、難しくなりそうだと分かった時点で金融機関に連絡してください。条件を見直す相談ができる場合がありますが、可否は契約と金融機関によります。直近の試算表と資金繰りの見通しを持って行ってください。
何も言われないので、放っておいてよいですか
こちらから状況を伝えている先と、そうでない先では、いざというときの動きが変わります。年に一度は決算の書類を持って行き、移転やスタッフの増減など大きな変化はその都度伝えてください。
追加で借りてもよいですか
何のために借りるのかを1行で書いてください。返済のために借りる場合は、立ち止まってください。問題を先に送っているだけになることがあります。いまの返済に上乗せされた合計額も、先に計算してください。1本ずつ見ていると、それぞれは払える額に見えます。
繰上返済はしたほうがよいですか
返したあと手元にいくら残るかを先に見てください。利息の負担は減りますが、返したお金は必要になっても戻りませんし、もう一度借りるには審査があります。数か月分の運転資金が確保できていないなら、そちらが先です。条件が付いている場合もありますので、窓口に確認してください。
返済のために客数を増やすべきですか
値引きで客数を増やすと、単価が下がって利益は減ります。忙しくなったのに手元は楽にならない、という状態です。営業日を無理に増やすことも、自分が倒れれば返済が止まります。見るのは、利益から返済を引いたあとの残りです。
返済が重いのですが
原因が返済とはかぎりません。毎月きっちり同じ額が出ていくぶん、目につきやすいだけということもあります。年に一度、支出を全部並べてください。返済以外に動かせるものがあれば、そちらから先に手をつけるほうが早く効きます。
全部は払えない月が来たら
順番を自分で決めきらないでください。給与、家賃、仕入れ、税金、社会保険、返済。それぞれ遅れたときに起こることが違います。支払いを止める前に、必ず相手先へ連絡してください。連絡があれば事情として扱われるものが、無ければ単なる滞納になります。
自分の契約について、何を把握しておきますか
金利が固定か変動か、返済の期間があと何年か、保証がついているか。この3つは、いつでも言えるようにしておいてください。複数から借りている場合は、一覧を作っておくと相談のときにそのまま使えます。
家族には伝えるべきですか
借入の存在と、おおよその残り、書類の場所は伝えておいてください。全部を共有する必要はありません。自分に何かあったときに誰にも分からない、という状態は避けてください。保証人になっている方がいる場合は、なおさら必要です。
保証人がいる場合は
借りたときの条件を確認してください。返済が難しくなりそうなときは、その方に状況を伝えるかどうかを考える必要があります。条件の見直しを相談できる場合もありますが、可否は契約によります。
返済が残っていても、やめられますか
残債があるから続けるしかない、とはかぎりません。赤字のまま続ければ、返せる額はさらに小さくなります。判断の前に専門家に相談し、金融機関にも早い段階で伝えてください。話せる余地があるうちに伝えるほうが、道は残ります。
完済したら、何をしますか
浮いた額の使い道を先に決めてください。決めていないと生活費に溶けます。設備の更新、次に借りないための積立、自分への給与。何年も返してきたのですから、成果が形として残る使い方をしたいところです。完済の証明となる書類も保管してください。

