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資金・融資・補助金

返済が苦しくなったとき|延滞する前なら、条件は変えられる

公開: 2026年8月25日

Summary

サロンの借入の返済が重くなったときに、条件を見直す進め方を整理します。延滞する前とあとで扱いが変わること、元金の据置・期間の延長・月々の引き下げという3つの頼み方、総額は減らないこと、一人で金融機関へ行かなくてよい仕組み、見直したあと借りにくくなること、家賃やリースにも同じ考え方が使えることを扱います。

毎月27日に、口座からまとまった額が引き落とされます。

開業のときに借りたお金の返済です。これまで一度も遅れたことはありません。それは、正直なところ、生活費を削ってきたからです。

去年から売上が落ちています。数字を見れば分かるのに、見たくなくて先送りしてきました。そして先月、初めて「来月は足りないかもしれない」と思いました。

このとき、多くの方が最初に考えるのは「どこかから借りて埋める」ことです。

その前に、知っておいてほしいことがあります。いま返している借入そのものの条件を、変えられる場合があります。

返済の条件として頼める3つを並べた図。元金の据置はしばらく利息だけを払う形で月々がいちばん下がる。期間を延ばすと月々の額が下がる。月々の額を下げると、減らした分はあとの期間に回るか期間の延長と組み合わせる。ただし返す総額は減らず、期間が延びれば利息は積み上がる。立て直すための時間を買う性質のもの。
返済の条件として頼める3つを並べた図。元金の据置はしばらく利息だけを払う形で月々がいちばん下がる。期間を延ばすと月々の額が下がる。月々の額を下げると、減らした分はあとの期間に回るか期間の延長と組み合わせる。ただし返す総額は減らず、期間が延びれば利息は積み上がる。立て直すための時間を買う性質のもの。

契約したときの条件は、動かせないものではない

まず、この思い込みを外してください。

借りるときに、返済の期間と月々の額が決まりました。契約書にも書いてあります。ですから、変えられないものだと思ってしまいます。

ところが、返済の条件を見直すことは、実際に行われています。金融機関にとっても、返ってこなくなるより、時間をかけてでも返してもらうほうがよいからです。

つまり、これは特別なお願いではありません。苦しくなった事業者と金融機関が、返し方を組み直すという、通常の手続きです。

もちろん、必ず認められるわけではありません。ただ、言い出す前から諦める必要はないということです。

延滞する前と、あとでは、まったく違う

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

引き落としができなかった月が一度あると、そこから話が変わります。記録が残り、こちらの信用の見え方が変わるためです。

一方、まだ遅れていない段階での相談は、「先を見て動いている人」として受け取られます。同じ苦しさでも、伝わり方がまるで違います。

ですから、動くのは引き落とせなくなる前です。残高を見て「来月か再来月が危ない」と思った時点が、いちばん良いタイミングです。

資金繰りの見通しの作り方はサロンの資金繰り表で扱っています。この表があると、危ない月が事前に見えます。

何を変えるのか

具体的に、何を頼むのかを整理します。

一つめは、元金の据置です。しばらくの間、利息だけを払い、元金の返済を止める形です。月々の負担がいちばん大きく下がります。

二つめは、期間を延ばすことです。残りを長い年数で返す形にすると、月々の額が下がります。

三つめは、月々の額そのものを下げることです。減らした分は、あとの期間に回るか、期間の延長と組み合わせます。

このうち、どれが認められるかは状況によります。ですから、こちらから指定するというより、「月々これくらいなら続けられます」という数字を伝えて、組み方を相談する形になります。

総額は、減りません

期待しすぎないよう、はっきり書きます。

条件を変えても、借りた元金が減るわけではありません。そして、返す期間が延びれば、その間の利息は積み上がります。

つまり、月々は軽くなりますが、最終的に払う総額は増えることが多いのです。

ですから、これは「楽になる手段」ではありません。事業を立て直すための時間を買う、という性質のものです。

そして、買った時間で何をするのかを考えないまま条件だけ変えると、据置が終わったときに同じ場所に戻ります。

延滞する前とあとの違いを対比した図。まだ引き落とせている段階なら「先を見て動いている人」として受け取られ、動くのは残高を見て来月か再来月が危ないと思った時点。引き落とせなかった月があると記録が残り、信用の見え方が変わる。別のところから借りて返すと、条件の見直しの相談も難しくなる。
延滞する前とあとの違いを対比した図。まだ引き落とせている段階なら「先を見て動いている人」として受け取られ、動くのは残高を見て来月か再来月が危ないと思った時点。引き落とせなかった月があると記録が残り、信用の見え方が変わる。別のところから借りて返すと、条件の見直しの相談も難しくなる。

一人で行かなくてもよい

意外に知られていないところです。

金融機関と自分だけで話す、と思っている方が多いのですが、間に入る仕組みがあります。

一つは、国が認めた支援機関です。税理士や中小企業診断士、金融機関などが、この認定を受けています。事業の立て直しの計画を作ることを手伝ってもらえます。

もう一つは、公的な相談の窓口です。各地に置かれており、返し方の見直しについて、金融機関との調整まで含めて相談できます。

そして、こうした計画を作る費用について、支援が用意されていることがあります。全部が自己負担になるとはかぎりません。

ですから、まず相談先を探してください。商工会議所や商工会、自治体の産業の窓口で、どこに行けばよいかを教えてもらえます。

持って行くもの

手ぶらでは、話が進みません。

  • 借入の一覧(どこから、いくら、月々いくら、あと何年)
  • 直近の申告の控え
  • 今年に入ってからの月々の売上
  • 資金繰りの見通し(数か月分)

とくに一つめが要ります。複数から借りている場合、それを並べた紙が無いと、相談する側もされる側も話を組み立てられません。

そして、口座を分けていないと、この一覧が作りにくくなります。分けていないなら事業用と私用を分けるを先に済ませてください。

数字を隠さない

これは、心情としては難しいところです。

悪い数字を見せたくない。もっと良く見せたい。そう思うのは自然です。

ただ、条件の見直しは、苦しいことを前提にした手続きです。良く見せると、かえって「その数字なら返せますね」となります。

そして、あとで実態が違うと分かった場合、次の相談ができなくなります。

ですから、悪いものは悪いまま出してください。そのうえで、どこを直すのかを示すほうが、話は前に進みます。

変えたあと、しばらく借りられません

これは、必ず知っておいてください。

条件を見直したという記録は残ります。そして、その状態が続いている間は、新しく借りることが難しくなります。

ですから、順番として、先に必要な資金があるなら、そちらを済ませてから条件の見直しに入るという考え方もあります。

ただし、これは危ない綱渡りでもあります。借りてすぐ返せなくなると、印象が悪くなるためです。

判断が難しいところですので、ここは相談の場で率直に聞いてください。「近いうちに設備の入れ替えが要るのですが、順番はどう考えればよいですか」。こう聞けば、答えてもらえます。

追加の借入そのものの考え方は開業後の運転資金はいくら必要かで扱っています。

金融機関と一人で話さなくてよいことを示した図。国が認めた支援機関(税理士・中小企業診断士・金融機関など)は立て直しの計画づくりを手伝い、計画を作る費用に支援があることもある。公的な相談の窓口は各地にあり、金融機関との調整まで含めて相談できる。持ち物は借入の一覧、申告の控え、今年の月々の売上、資金繰りの見通し。
金融機関と一人で話さなくてよいことを示した図。国が認めた支援機関(税理士・中小企業診断士・金融機関など)は立て直しの計画づくりを手伝い、計画を作る費用に支援があることもある。公的な相談の窓口は各地にあり、金融機関との調整まで含めて相談できる。持ち物は借入の一覧、申告の控え、今年の月々の売上、資金繰りの見通し。

別のところから借りて返さない

いちばんしてはいけないことを書きます。

返済が苦しいときに、消費者向けの借入や、事業者向けの短期の資金でしのぐ方がいます。その月は乗り切れます。

ところが、こうした借入は返す期間が短く、負担が重いことが多いのです。結果として、翌月からの支出がさらに増えます。

そして、こうした借入があると、条件の見直しの相談も難しくなります。

ですから、順番を逆にしないでください。まず、いま返している借入の条件を見直せるかを確かめる。新しく借りるのは、そのあとです。

保証を付けて借りている場合

多くの事業者が該当します。

信用保証協会の保証を付けて借りている場合、条件の見直しには保証協会も関わります。つまり、話す相手が一つ増えます。

ただ、これは不利になるということではありません。窓口が増えるぶん、手続きに時間がかかると考えてください。

保証を付ける仕組みそのものは信用保証協会の制度融資・自治体の創業助成金で扱っています。

同じ考え方は、ほかの支払いにも使えます

借入だけの話ではありません。

毎月出ていくものには、ほかにもあります。設備のリース料、家賃、そして仕入先への支払い。

これらも、相手があることですから、相談の余地があります。リースなら期間の組み直し、家賃なら一時的な減額や支払日の変更、仕入先なら支払いの時期です。

そして、ここでも同じことが言えます。遅れる前に伝えるかどうかで、受け取られ方がまったく変わります。

引き落とせなかったあとに「実は」と言われるのと、その前に「来月から少し苦しくなりそうです」と言われるのとでは、相手の判断が違うのです。

ただし、全部を一度に相談しないでください。金額の大きいものから、順に当たってください。そして、どこにいくら効いたかを記録に残してください。

なお、税や社会保険料も同じ性質を持っています。こちらは相手が公的な窓口になりますので、また別の手続きになります。

買った時間で、何をするか

最後に、これが本題です。

条件を変えると、月々の負担が下がります。すると、少し楽になります。そして、楽になったところで手が止まる方が多いのです。

据置の期間は、いつか終わります。終わったとき、いまと同じ状態なら、そのときはもう手がありません。

ですから、条件を変えると決めた時点で、その期間に何を変えるかも決めてください。単価か、回数か、経費か。どこを動かすのかです。

どこをどれだけ動かせば成り立つのかはサロンの損益分岐点の計算方法で出せます。感覚ではなく、数字で決めてください。

場面見るところ
動くタイミング引き落とせなくなる前。「来月か再来月が危ない」と思った時点
頼む内容元金の据置/期間の延長/月々の額の引き下げ
伝え方組み方を指定せず「月々これくらいなら続けられます」と数字で
総額減りません。期間が延びれば利息は積み上がる
相談先一人で行かなくてよい。認定を受けた支援機関、公的な相談の窓口
持ち物借入の一覧/申告の控え/今年の月々の売上/資金繰りの見通し
数字良く見せない。実態と違うと、次の相談ができなくなる
変えたあとしばらく新しく借りにくくなる。順番は相談の場で聞く
してはいけない別のところから借りて返す

今日やる一つ

借入の一覧を、一枚の紙に書き出してください。どこから、いくら、月々いくら、あと何年。複数あるなら全部です。相談に行く行かないにかかわらず、この一枚が無いと判断ができません。

よくある質問

契約した条件は変えられないのでは

返済の条件を見直すことは、実際に行われています。金融機関にとっても、返ってこなくなるより時間をかけて返してもらうほうがよいためです。必ず認められるわけではありませんが、言い出す前から諦める必要はありません。

いつ相談すればよいですか

引き落とせなくなる前です。一度でも引き落としができなかった月があると、記録が残り、信用の見え方が変わります。残高を見て「来月か再来月が危ない」と思った時点が、いちばん良いタイミングです。

何を頼めばよいですか

元金の据置、期間の延長、月々の額の引き下げ。この3つが基本です。どれが認められるかは状況によりますので、組み方を指定せず「月々これくらいなら続けられます」と数字で伝えて相談してください。

返す総額は減りますか

減りません。借りた元金が消えるわけではなく、期間が延びればその間の利息は積み上がります。月々は軽くなりますが、最終的に払う総額は増えることが多くなります。

一人で金融機関に行くのですか

間に入る仕組みがあります。国が認めた支援機関(税理士・中小企業診断士・金融機関など)や、各地の公的な相談の窓口です。金融機関との調整まで含めて相談できます。どこに行けばよいかは、商工会議所や自治体の産業の窓口で教えてもらえます。

計画を作る費用はかかりますか

計画の策定について支援が用意されていることがあり、全部が自己負担になるとはかぎりません。相談の際に確認してください。

何を持って行けばよいですか

借入の一覧(どこから・いくら・月々いくら・あと何年)、直近の申告の控え、今年に入ってからの月々の売上、資金繰りの見通し。とくに一覧が要ります。これが無いと、相談する側もされる側も話を組み立てられません。

数字を良く見せたほうが通りますか

逆です。条件の見直しは苦しいことを前提にした手続きですので、良く見せると「その数字なら返せますね」となります。あとで実態が違うと分かると、次の相談ができなくなります。

見直したあと、また借りられますか

しばらくは難しくなります。見直したという記録が残るためです。近いうちに資金が必要なら、順番をどう考えるかを相談の場で率直に聞いてください。

足りない分を別で借りてしのいでもよいですか

してはいけません。返す期間が短く負担の重い借入が増えると、翌月からの支出がさらに増えます。そして、そうした借入があると条件の見直しの相談も難しくなります。まず、いま返している借入の条件を確かめてください。

保証協会の保証を付けています

条件の見直しには保証協会も関わりますので、話す相手が一つ増えます。不利になるということではなく、手続きに時間がかかると考えてください。

家賃やリースも相談できますか

相手があることですので、余地はあります。リースなら期間の組み直し、家賃なら一時的な減額や支払日の変更、仕入先なら支払いの時期です。ここでも、遅れる前に伝えるかどうかで受け取られ方が変わります。ただし全部を一度に相談せず、金額の大きいものから順に当たってください。

据置の期間が終わったらどうなりますか

元金の返済が再び始まり、月々の支出が戻ります。ですから、条件を変えると決めた時点で、その期間に何を変えるかも決めてください。単価か、回数か、経費か。どこを動かすのかです。

相談したことは、取引先に知られますか

金融機関との相談の内容が、こちらの了解なく取引先や同業へ伝えられることはありません。ただし、支払いの時期を変えてもらう相談を仕入先にする場合は、当然その相手には事情を伝えることになります。誰に何を話すかは、自分で決められると考えてください。

何から手をつけるべきですか

借入の一覧を一枚の紙に書き出すことからです。そのうえで、どこをどれだけ動かせば成り立つのかを数字で出してください。感覚で決めると、据置が終わったときに同じ場所に戻ります。