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オーナーの働き方・将来設計

自分にいくら払うか|余った分ではなく、先に決める

公開: 2026年8月27日

開業して2年になりますが、自分にいくら払っているかと聞かれても、答えられません。売上のよかった月は多めに引き出し、苦しい月は我慢する。通帳から必要なぶんを出しているだけです。

これでも、なんとか回ってはいます。ただ、いくら取っているのか分からない状態では、この店を続けられるのかどうかも判断できません。売上が上がっても、暮らしが楽になった実感はありません。逆に、苦しい月に何を削ったのかも、記録には残っていません。

自分の取り分は、余った分ではありません。先に決めておく数字です。順番をひとつ入れ替えるだけで、見えるものがまるで変わります。

取り分の順番を比べた図。いままでの順番は売上から経費を払って残ったら取る形で、残らない月は0円になり、多い月は生活の基準が上がる。変えた後は、決めた額を先に取り残りを店に置く形で、取れない月が続けば店の問題として数字に出る。
取り分の順番を比べた図。いままでの順番は売上から経費を払って残ったら取る形で、残らない月は0円になり、多い月は生活の基準が上がる。変えた後は、決めた額を先に取り残りを店に置く形で、取れない月が続けば店の問題として数字に出る。

余りから取るのを、やめる

まず、順番を変えてください。

売上から経費を払い、残ったら自分が取る。この順番だと、残らない月は自分の取り分が0になります。そして、その事実はどこにも記録されません。

さらに厄介なのは、残った月には多く取ってしまうことです。生活の基準が上がり、次に落ちた月がいっそう苦しくなります。上がったり下がったりを繰り返すうちに、自分がいくらで暮らしているのかも分からなくなります。

先に決めた額を毎月取り、残りを店に置く。この順番に変えてください。決めた額が取れない月が続くのであれば、それは店の側の問題として、はっきり数字に現れます。

順番を変えるだけで、必要な売上が見えてきます。それが、この作業のいちばんの効果です。

いくらにするかの決め方

金額の目安を、外から持ってこないでください。同業の方がいくら取っているかは、その方の生活と店の話です。自分の数字から出します。

まず、生活に必要な額を出してください。家賃、食費、光熱費、保険、通信。ここに、家族の分も含めます。

次に、そこへ税金と社会保険の分を足してください。個人事業では、これらは後から来ます。取り分に含めておかないと、支払いの時期に必ず足りなくなります。

そして、貯めておきたい額を足してください。設備の入れ替え、休んだときの備え、老後の分。

この3つの合計が、取りたい額になります。ここまでは、店の都合を一切考えずに出してください。そのうえで次に、それが店から出せるかを見ます。

出せるかどうかを、売上に直す

決めた額から逆算してください。

取りたい額に、店の経費と返済を足します。その合計が、必要な売上です。

そこから、いま何人来ていただければ届くのかを出せます。計算のしかたは一人サロンの損益分岐点シミュレーションで扱っています。

出てきた人数が、いまの客数とかけ離れているなら、取り分か店の作りのどちらかを変える必要があります。ここで、願望のまま置かないでください。「そのうち増えるだろう」で先送りすると、2年後も同じ状態です。

取りたい額を出す表の図。生活に必要な額、税金と社会保険、貯めておきたい額の3つを足して取りたい額とし、金額を記入する欄がある。下段に、取りたい額+店の経費+返済=必要な売上、そこから届く客数を出すという式が置かれている。
取りたい額を出す表の図。生活に必要な額、税金と社会保険、貯めておきたい額の3つを足して取りたい額とし、金額を記入する欄がある。下段に、取りたい額+店の経費+返済=必要な売上、そこから届く客数を出すという式が置かれている。

事業のお金と分ける

同じ財布のままでは、いくら取っているのかを数えようがありません。

事業用の口座から、決めた額を毎月、生活用の口座へ移してください。日を決めておくと、忘れません。給料日を自分で作る、と考えると分かりやすくなります。

そして、生活費を事業用のカードで払わないでください。1回でも混ぜると、あとから分けるのが難しくなります。そして、1回混ぜた人は、たいてい2回目も混ぜます。

分け方は事業用と私用を分けるで扱っています。取り分を決めることと、口座を分けることは、同じ作業の表と裏です。

税金の分を、先に置く

ここを飛ばすと、必ず苦しくなります。

個人事業では、所得税、住民税、国民健康保険、国民年金が後から来ます。しかも、前の年の実績で決まるものもあります。つまり、売上が落ちた年に、前年の分の高い請求が来ることがあります。

ですから、取り分とは別に、税金用の置き場所を作ってください。別の口座でも、封筒でもかまいません。

いくら置くかは、前の年の納付額を12で割るところから始められます。初年度は分かりませんので、専門家に相談するか、多めに置いてください。多く置きすぎて困ることは、まずありません。

なお、この積立を取り分の中から出さないでください。生活費と混ざると、納付の月に足りなくなります。「あるはずのお金」が消えているのは、たいていこれが原因です。

毎月、同じ額にする

変動させないでください。

売上に連動させると、生活が振り回されます。そして、判断も鈍ります。良い月には気が大きくなり、悪い月には必要以上に不安になる。どちらも、正しい判断からは遠ざかります。

同じ額にしておくと、足りない月がはっきり見えます。そして、足りない月が続くという事実こそ、いちばん見たい情報です。

多く出た月は、事業用に置いたままにしてください。その積み上がりが、翌年の設備や、休んだときの支えになります。

開業直後で、取れないとき

最初の数か月は、決めた額が出せないことがあります。これは、めずらしいことではありません。

このとき大事なのは、取れないこと自体ではなく、いつまで取れない状態を許すかを決めておくことです。

期限を決めてください。6か月、あるいは1年。その期限までに届かなければ、価格か客数か経費のどれかを変える、と先に決めておきます。決めておかないと、我慢がそのまま常態になります。

そして、その期間の生活費は、事業のお金ではなく別に用意しておいてください。開業前に必要な生活費の考え方は開業後の運転資金はいくら必要かで扱っています。

なお、取れない月も、金額は決めておいてください。0円を取ったのではなく、決めた額に届かなかった。この違いが、あとの判断を分けます。

人を雇っている場合

順番が、さらに難しくなります。

スタッフの給与は、決まった日に必ず払うものです。自分の取り分は、その後になります。

ここで自分を後回しにし続けると、店が回っているように見えて、実際は自分の生活で穴を埋めている状態になります。そして、その穴は決算書には出てきません。

ですから、スタッフの給与と同じ扱いで、自分の取り分も固定の支出として置いてください。そのうえで、いまの人数を払えるかどうかを判断します。順番を逆にすると、雇えるはずのない人数を抱えたまま何年も続けることになります。

そして、自分の取り分が最低賃金を下回るような状態が続くなら、人数か価格のどちらかが合っていません。感覚ではなく、数字で確かめてください。

法人にした場合は、扱いが変わる

個人事業とは、仕組みが違います。

法人では、自分への支払いは役員報酬という形になります。原則として、期の途中で自由に増減できない扱いがあるとされています。

つまり、決めるタイミングと、決めた額の重みが変わります。売上が伸びたから今月は多く、という取り方はできません。

具体的な要件や手続きは制度によって変わりますので、この記事では断定しません。法人化を考えている段階で、専門家に確認してください。

なお、この違いがあるからこそ、個人事業のうちに「毎月同じ額を取る」練習をしておく意味があります。法人になってから急にできることではありません。

見直すのは、年に一度

毎月いじらないでください。

年に一度、決算のあとに見直してください。売上、経費、返済、生活の変化。そのときには、すべてが1年分そろっています。

そして、上げるか、据え置くか、下げるかを決めてください。下げる判断も、必要なときがあります。

見直した額は、書いて残してください。翌年になると、なぜその額にしたのかを忘れています。理由が残っていれば、次の判断が早くなります。

賞与のように取る方法

毎月一定にしたうえで、年に一度まとめて取る形もあります。

前提は、事業に必要な現金を残したうえで、余っていることです。残高が積み上がっているのであれば、その一部を取れます。

時期は、資金繰りの谷を過ぎたあとにしてください。繁忙期の前に取ると、仕入れの支払いに影響します。

そして、毎年の恒例にしないでください。今年出せたから来年も、とはなりません。恒例にした瞬間、それは固定費と変わらなくなります。

取らなすぎも、問題になる

我慢が美徳になりがちな部分です。

生活を切り詰めて店に残していると、続きません。そして、体調を崩したときに貯えが無い、という状態になります。休むこと自体ができなくなります。

さらに厄介なのは、自分の取り分が小さいままだと、価格が安すぎることに気づけない点です。自分の時間を無料で入れて、辻褄を合わせている状態だからです。数字の上では回っているように見えます。

取り分を先に置くと、その額が価格の根拠になります。逆算した結果、いまの単価では届かないと分かることもあります。それは悪い知らせではなく、必要な気づきです。

見直しの周期を3つに分けた図。毎月は決めた額を同じ日に移し税金分は別に置く。年に一度、決算のあとに上げる・据え置く・下げるを決め理由も残す。下げるときは期間を決め、家計の側も一緒に見る。
見直しの周期を3つに分けた図。毎月は決めた額を同じ日に移し税金分は別に置く。年に一度、決算のあとに上げる・据え置く・下げるを決め理由も残す。下げるときは期間を決め、家計の側も一緒に見る。

家族に伝えているか

一人で決めていることが多い部分です。

毎月いくら家に入れるかは、家族にとっても計画の前提です。変動させていると、家計そのものが組めません。

そして、売上と自分の取り分は別のものだと、伝えておいてください。売上のよかった月に「今月は儲かったね」という話になるのは、この区別が共有されていないためです。悪気はないのですが、説明するたびに気持ちが疲れます。

なお、家族に手伝ってもらっている場合は、その方への支払いも別に決めてください。曖昧なままだと、負担だけが偏ります。

資金繰りの中に入れる

取り分は、経費と同じ扱いで表に入れてください。

毎月出ていく額として、資金繰りの表に1行置きます。作り方はサロンの資金繰り表を5行で作るで扱っています。

入れておかないと、「利益は出ているのに手元にない」という状態の理由が分からなくなります。

そして、返済がある場合は、その下にもう1行置いてください。取り分と返済の両方を引いたあとが、店に残る現金です。この数字を毎月見ていると、店の状態がかなり正確につかめます。

将来の分を、どこから出すか

取り分の中に、老後の分が含まれているかを確認してください。

会社員と違い、退職金にあたるものは自動では貯まりません。自分で仕組みを作ることになります。誰も代わりに用意してくれません。

制度としてどういう選択肢があるかは小規模企業共済とはで整理しています。加入するかどうかは、取り分を決めたあとの話です。

なお、掛けたお金は事業の資金としては使えなくなります。手元の現金と、将来の備えの配分を見てから決めてください。将来のために掛けた結果、いまの資金繰りが苦しくなるのでは本末転倒です。

下げる判断をするとき

上げる話ばかりではありません。下げる場面もあります。

売上が落ちた、返済が始まった、設備を替える必要が出た。いずれも、一時的に取り分を下げる理由になります。

このとき、下げる期間を決めてください。期限の無い我慢は、いつまでも続きます。「3か月」と決めて、そこで見直します。

そして、下げる前に家計の側も見てください。事業だけで調整しようとすると、無理が出ます。両方を並べて考えるほうが、結果として穏やかに収まります。

なお、下げたことは記録に残してください。翌年の見直しで、いつ戻すかを判断する材料になります。

決められないときの、始め方

金額が出てこない場合は、順番を変えてください。決めようとするから止まるのです。

まず、この3か月で実際にいくら引き出したかを数えてください。生活用の口座への移動と、現金での引き出しを合計します。

その数字が、いまの実際の取り分です。多くの場合、思っていたより多いか、少ないかのどちらかになります。どちらであっても、知ること自体に意味があります。

そして、その額を来月から固定してください。新しく決めるのではなく、いまの実績を固定するところから始めれば、生活は何も変わりません。変わるのは、見えるかどうかだけです。

決めること内容
順番余りから取るのをやめ、先に決めた額を毎月取る
金額生活費+税金と社会保険+貯めたい額の合計
確かめ方取り分+経費+返済=必要な売上。届く客数を出す
分け方事業用の口座から生活用へ、日を決めて移す
税金取り分とは別に置き場所を作る(前年の納付額を12で割る)
見直し年に一度、決算のあと。上げる・据え置く・下げるを決める
記録決めた額と、その理由を書いて残す

今日やる一つ

この3か月で、生活用にいくら移したかを数えてください。合計を3で割った数字が、いまの実際の取り分です。まずその額を来月から固定するところから始めてください。数字が1つ決まるだけで、必要な売上も、届く客数も、そこから逆算できるようになります。

よくある質問

いくら取ればよいですか

外の目安を持ってこないでください。生活に必要な額、税金と社会保険の分、貯めておきたい額。この3つを足した数字が、取りたい額です。まずは店の都合を考えずに出し、そのうえで店から出せるかを売上に直して確かめます。

売上に応じて変えてはいけませんか

変えないでください。生活が振り回され、判断も鈍ります。良い月には気が大きくなり、悪い月には必要以上に不安になります。同じ額にしておくと足りない月が見え、それが続くという事実こそ、いちばん見たい情報です。

余った月はどうしますか

事業用に置いたままにしてください。その積み上がりが、翌年の設備や、休んだときの支えになります。毎月の取り分は変えないでください。

税金はどう備えますか

取り分とは別に、置き場所を作ってください。別の口座でも封筒でもかまいません。前の年の納付額を12で割るところから始められます。初年度は分かりませんので、専門家に相談するか多めに置いてください。多く置きすぎて困ることは、まずありません。

生活費を事業用のカードで払ってもよいですか

1回でも混ぜると、あとから分けるのが難しくなります。そして、1回混ぜた人はたいてい2回目も混ぜます。事業用の口座から生活用へ、日を決めて移してください。給料日を自分で作る、と考えると分かりやすくなります。

開業直後で取れません

いつまで取れない状態を許すか、期限を決めてください。6か月、あるいは1年。届かなければ価格か客数か経費のどれかを変える、と先に決めます。決めておかないと、我慢がそのまま常態になります。その期間の生活費は、事業のお金とは別に用意してください。

スタッフがいる場合は

給与は決まった日に必ず払うものですので、自分の取り分は後回しになりがちです。スタッフの給与と同じ扱いで、自分の取り分も固定の支出として置いてください。順番を逆にすると、雇えるはずのない人数を抱えたまま続けることになります。

法人にすると変わりますか

自分への支払いは役員報酬という形になり、原則として期の途中で自由に増減できない扱いがあるとされています。要件は制度によって変わりますので、法人化を考える段階で専門家に確認してください。個人事業のうちに毎月同じ額を取る練習をしておく意味は、ここにあります。

見直しはいつしますか

年に一度、決算のあとです。売上、経費、返済、生活の変化が1年分そろっています。上げる、据え置く、下げるのどれかを決め、その理由も書き残してください。翌年には、なぜその額にしたかを忘れています。

まとめて取ってもよいですか

事業に必要な現金を残したうえで余っているなら、年に一度まとめて取る形もあります。時期は資金繰りの谷を過ぎたあとにしてください。ただし、毎年の恒例にはしないでください。恒例にした瞬間、固定費と変わらなくなります。

取らないほうが店のためではありませんか

続きません。体調を崩したときに貯えが無い状態になり、休むこともできなくなります。また、取り分が小さいままだと、価格が安すぎることに気づけません。自分の時間を無料で入れて辻褄を合わせている状態です。

家族には伝えるべきですか

毎月いくら家に入れるかは、家族にとっても計画の前提です。変動させていると家計が組めません。あわせて、売上と自分の取り分は別のものだと共有してください。手伝ってもらっている場合は、その方への支払いも別に決めてください。

老後の分はどこに含めますか

取り分の中に含まれているかを確認してください。退職金にあたるものは自動では貯まりません。制度を使うかどうかは、取り分を決めたあとの話です。掛けたお金は事業の資金としては使えなくなりますので、いまの現金との配分も見てください。

金額が決められません

この3か月で実際にいくら引き出したかを数えてください。生活用への移動と現金の引き出しの合計を3で割れば、いまの実際の取り分が出ます。新しく決めるのではなく、いまの実績を固定するところから始めれば、生活は何も変わりません。