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資金・融資・補助金

開業したあとに借りる|創業のときとは、見られるものが違う

公開: 2026年8月25日

Summary

営業を続けているサロンが、設備の入れ替えや運転資金のために借りる場面を整理します。創業融資との違い、借りる理由ごとの準備、持って行く書類、借りる先の選び方、借換えの判断、断られたときに見るところ、借りたあとに変わることまでを扱います。金利や条件は時期で変わるため書いていません。

開業して6年目に、シャンプー台がとうとう限界を迎えました。修理を繰り返してきましたが、部品がもう手に入りません。入れ替えるとなると、まとまった金額が出ていきます。

そのとき、頭に浮かんだのは「もう借りられないだろう」でした。創業のときに借りて、いまも返している最中です。返し終わっていないのに、また借りるという発想がありませんでした。

けれども、それは思い込みでした。開業のあとに借りるのは、創業のときとは別の話です。判断の材料も、審査で見られるところも、揃える書類も違います。そして多くの場合、開業のときより有利な材料が手元にあります。

創業のときの借り方は日本政策金融公庫 創業融資 完全ガイドで扱っています。この記事では、営業を続けている店が、その先で借りる場面だけを扱います。なお、金利や条件、使える枠組みは金融機関と時期によって変わりますので、数字は書きません。

創業のときと開業したあとで、審査で見られるものが違うことを並べた図。左の創業のときは「計画」が見られ、まだ実績が無いため、どういう店を作りどう売上を立てるかを説明し、自己資金の額も大きい。右の開業したあとは「実績と履歴」が見られ、何年やっていくら残ったか、返済を続けてきたかが材料になる。
創業のときと開業したあとで、審査で見られるものが違うことを並べた図。左の創業のときは「計画」が見られ、まだ実績が無いため、どういう店を作りどう売上を立てるかを説明し、自己資金の額も大きい。右の開業したあとは「実績と履歴」が見られ、何年やっていくら残ったか、返済を続けてきたかが材料になる。

創業のときとは、見られるものが違う

まず、この違いを押さえてください。ここが分かると、準備するものが決まります。

創業のときに見られるのは、計画です。まだ実績がありませんから、どういう店を作り、どう売上を立てるつもりかを説明することになります。自己資金がいくらあるかも、大きな材料でした。

一方、営業を続けている店では、実績が見られます。何年やってきて、いくら売り上げ、いくら残ったのか。そして、これまでの返済をきちんと続けてきたか。

つまり、語る力より、数字と履歴が効きます。これは、多くの方にとって良い知らせのはずです。計画書を上手に書くのは苦手でも、真面目に返してきた履歴は、そのまま材料になります。

何のために借りるのかを、1行で書く

借りる前に、これだけは書き出してください。

理由によって、相談の相手も、通りやすさも変わります。大きく分けると、次の3つになります。

  • 設備のため(入れ替え、増設、改装)
  • 運転資金のため(一時的に足りない、季節の波を越える)
  • 返済のため

3つめについては、いったん立ち止まってください。返すために借りるのは、多くの場合、問題を先に送っているだけになります。そのときは楽になりますが、来年の自分に同じ判断を迫ることになります。

この場合にまずやるべきなのは、借りることではなく、いまの返済の条件を見直せるかを相談することです。順番が違います。

設備のために借りるとき

いちばん通りやすく、そして説明しやすいのがこれです。

理由は単純で、何にいくら使うのかがはっきりしているからです。見積書があり、入れ替える理由があり、入れ替えた後にどうなるかも説明できます。

準備するものも決まっています。

  • 見積書(できれば複数から)
  • いまの設備がどういう状態か
  • 入れ替えたあと、何が変わるか
  • 返済に回せる額

4つめが大事です。新しい設備を入れれば売上が上がる、という説明だけでは弱くなります。上がらなかったとしても返せるのか。ここを自分でも確かめておいてください。

機器を選ぶときの考え方と、回収の計算はエステ機器の選び方と回収計算で扱っています。借りる前に、この計算を一度してください。

運転資金のために借りるとき

こちらは、説明が難しくなります。

なぜ足りないのかを説明する必要があるからです。季節の波なのか、客数が落ちているのか、支払いの時期が重なっただけなのか。理由によって、見られ方が変わります。

そして、ここでいちばん大事なのは、足りなくなってから相談しない、ということです。手元の現金が尽きかけてから駆け込むと、選べる幅が狭くなります。急いでいる相手には、良い条件は出てきません。

資金繰りの表を作っていれば、何か月か先に足りなくなることが見えます。見えた時点で相談すれば、余裕をもって進められます。作り方はサロンの資金繰り表を5行で作るで扱っています。

なお、季節の波が理由であれば、それは毎年繰り返します。今年だけの問題として処理せず、来年に備える形で考えてください。

借りる理由を3つに分けた図。設備のためはいちばん通りやすく、見積書・いまの設備の状態・入れ替えて何が変わるか・返済に回せる額を準備する。運転資金のためはなぜ足りないかの説明が要り、尽きかけてから駆け込むと選べる幅が狭くなる。返済のためはいったん立ち止まり、先に返済の条件を見直せるか相談する。
借りる理由を3つに分けた図。設備のためはいちばん通りやすく、見積書・いまの設備の状態・入れ替えて何が変わるか・返済に回せる額を準備する。運転資金のためはなぜ足りないかの説明が要り、尽きかけてから駆け込むと選べる幅が狭くなる。返済のためはいったん立ち止まり、先に返済の条件を見直せるか相談する。

持って行く書類は、決まっている

創業のときのように、分厚い計画書を作る必要はありません。

用意するのは、実績を示すものです。

  • 直近の確定申告の書類(数年ぶん)
  • 直近の試算表
  • 借入の一覧(どこから、いくら、残りいくら)
  • 資金繰りの見通し
  • 借りる理由を示すもの(見積書など)

このうち、3つめを軽く見ないでください。複数から借りている場合、その全体が見られます。1本ずつ隠すことはできませんし、隠すつもりがなくても、まとめて出せないと準備不足に見えます。

そして、これらは相談のたびに使います。1か所にまとめておいてください。探すところから始めると、それだけで数日かかります。

借りる先は、1つではない

創業のときに借りた先だけが選択肢ではありません。

主に、次のような相手がいます。

  • 公的な性格をもつ金融機関
  • 地域の銀行や信用金庫
  • 信用保証協会の保証を使う形での借入
  • 業種に応じた枠組み

このうち、地域の金融機関との関係は、時間をかけて作るものです。借りるときだけ行くのではなく、決算のあとに書類を持って行く。それだけで、いざというときの話が変わります。

保証協会を使う形については信用保証協会の制度融資と自治体の助成金で扱っています。創業のときの文脈で書かれていますが、仕組みそのものは同じです。

そして、どれが有利かは金利だけでは決まりません。期間、据置の有無、保証料、手続きにかかる時間。これらを含めて比べてください。

借換えという選択

いま返しているものを、条件の違うものに置き換える形があります。

複数から借りていて、返済日がばらばらで、管理しきれない。こうした状態では、1本にまとめることで見通しが立つことがあります。

ただし、これも良いことばかりではありません。期間が延びれば、その間の負担は続きます。手続きに費用がかかる場合もあります。

判断の材料は、月々の負担がどう変わるかと、最終的にいくら払うことになるかの2つです。片方だけを見て決めないでください。月々が軽くなっても、総額が増えていることがあります。

そして、これは自分で計算するより、相談したほうが早く済みます。窓口で「いまの返済を組み直すと、どうなりますか」と聞いてください。

断られたときに、見るところ

通らないこともあります。そこで終わりにしないでください。

まず、理由を聞いてください。教えてもらえないこともありますが、聞く価値はあります。そして、教えてもらえた場合、それは次に直せる場所を教えてもらったということです。

よくあるのは、次のようなところです。返済の遅れがあった、申告の内容と実際が合っていない、借入の総額が大きい、直近の数字が落ちている。

このうち、すぐには直せないものもあります。ただ、時間をかければ直るものがほとんどです。半年から1年かけて数字を整えてから、もう一度相談する。この形は十分に成り立ちます。

なお、1か所で断られたからといって、どこもだめだということではありません。判断の基準は相手によって違います。

借りる前と借りたあとの3段階を示した図。借りる前は動かせる支出がないかを見る。額を決めるときは返済を引いたあとにいくら残るかで見る(元金の返済は経費にならない)。借りたあとは据置が終わる月をカレンダーに入れる。下段に、借りる予定が無くても年に一度は決算の書類を持って行くことが添えられている。
借りる前と借りたあとの3段階を示した図。借りる前は動かせる支出がないかを見る。額を決めるときは返済を引いたあとにいくら残るかで見る(元金の返済は経費にならない)。借りたあとは据置が終わる月をカレンダーに入れる。下段に、借りる予定が無くても年に一度は決算の書類を持って行くことが添えられている。

借りる前に、見直せるものがある

これは、順番の話です。

借入を増やす前に、いまの支出のなかで動かせるものがないかを見てください。仕入れ、固定費、使っていない契約。ここに手をつけるほうが、早く効くことがあります。

そして、借りたお金は返す必要がありますが、減らした支出は返す必要がありません。同じ金額なら、後者のほうが軽い解決です。

もちろん、設備の入れ替えのように、削って捻出できる規模を超える場面もあります。その場合は借りることになりますが、それでも一度は見直してください。借りる額が小さくなるだけでも、その後が楽になります。

借りたあとに、変わること

これを見落とすと、あとで苦しくなります。

返済が始まれば、毎月の固定の支出が増えます。そして、元金の返済は経費になりません。帳簿の上では利益が出ているのに、手元にお金が残らないという状態が起きます。

ですから、借りる額を決めるときは、返済を引いたあとにいくら残るかで見てください。売上がいくらになるか、ではありません。

そして、据置期間を設けた場合は、それが終わる月をカレンダーに入れてください。ある月から引き落としの額が上がります。忘れていると、その月の資金繰りが崩れます。

相談の時期を、決めておく

これは、備えの話です。

必要になってから探すと、時間がかかります。書類を集め、窓口を探し、面談の予定を取り、審査を待つ。合計すると、思っているより長くかかります。

ですから、年に一度、決算のあとに金融機関へ書類を持って行く習慣を作ってください。借りる予定がなくてもです。

顔を知られていて、毎年の数字を見てもらっている相手と、何年も音沙汰のない相手とでは、いざというときの動きが違います。これは、お願いしにくいことを頼む立場になったときに効いてきます。

借りない、という判断

最後に、これも書いておきます。

設備が古くなったからといって、必ず入れ替えなければならないわけではありません。修理で延ばす、中古で済ませる、そもそもその設備を使うメニューをやめる。いずれも選択肢です。

そして、借りて設備を入れた結果、返済に追われて店を続けられなくなるのでは、意味がありません。

判断に迷ったら、借りなかった場合にどうなるかも並べて考えてください。両方を並べてから決めると、後悔が残りにくくなります。続けるかどうかそのものの考え方はサロンを続けるか閉じるかの判断で扱っています。

場面見られるもの準備するもの
設備のため何にいくら使うか。返せるか見積書/現状/変わること/返済に回せる額
運転資金のためなぜ足りないのか資金繰りの見通し。足りなくなる前に相談する
返済のためここは立ち止まる先に、いまの返済の条件を見直せるか相談する
借換え月々と総額の両方借入の一覧。組み直すとどうなるかを聞く
断られたとき理由半年から1年かけて数字を整えて再相談

今日やる一つ

いま借りているものの一覧を、1枚に書き出してください。どこから、いくら借りて、残りがいくらで、毎月いくら返しているか。複数あるなら合計も出してください。この1枚が、次に相談するときの出発点になります。作るのに20分もかかりません。

よくある質問

返し終わっていなくても、借りられますか

借りられないと決まっているわけではありません。創業のときとは見られるものが違い、実績と返済の履歴が材料になります。真面目に返してきた履歴は、そのまま強みになります。

創業のときと、何が違いますか

創業のときは計画と自己資金が見られますが、営業を続けている店では実績が見られます。何年やってきて、いくら売り上げ、いくら残ったか。そして返済を続けてきたか。語る力より、数字と履歴が効きます。

何を借りる理由にすればよいですか

設備、運転資金、返済の3つに分かれます。3つめについては、いったん立ち止まってください。返すために借りるのは問題を先に送るだけになりがちです。まず、いまの返済の条件を見直せるかを相談してください。

設備のときは何を準備しますか

見積書、いまの設備の状態、入れ替えたあと何が変わるか、そして返済に回せる額です。とくに4つめが大事で、売上が上がらなかったとしても返せるのかを、自分でも確かめておいてください。

運転資金は借りにくいですか

なぜ足りないのかを説明する必要があるぶん、難しくなります。そして、手元の現金が尽きかけてから駆け込むと、選べる幅が狭くなります。資金繰りの表で先が見えた時点で相談してください。

持って行く書類は

直近の確定申告の書類、試算表、借入の一覧、資金繰りの見通し、そして借りる理由を示すものです。借入の一覧は軽く見ないでください。まとめて出せないと、それだけで準備不足に見えます。

借りる先はどう選びますか

創業のときに借りた先だけが選択肢ではありません。金利だけでなく、期間、据置の有無、保証料、手続きにかかる時間を含めて比べてください。地域の金融機関との関係は、時間をかけて作るものです。

借換えはしたほうがよいですか

返済日がばらばらで管理しきれない状態なら、1本にまとめて見通しが立つことがあります。ただし期間が延びれば負担も続きます。月々がどう変わるかと、最終的にいくら払うかの両方を見てください。月々が軽くなっても総額が増えていることがあります。

断られたらどうしますか

まず理由を聞いてください。教えてもらえれば、それは次に直せる場所です。返済の遅れ、申告と実際の食い違い、借入の総額、直近の数字。時間をかければ直るものがほとんどです。1か所で断られても、判断の基準は相手によって違います。

借りる前に、他にできることはありますか

いまの支出のなかで動かせるものがないかを見てください。借りたお金は返す必要がありますが、減らした支出は返す必要がありません。借りる額が小さくなるだけでも、その後が楽になります。

借りたあと、何が変わりますか

毎月の固定の支出が増えます。そして元金の返済は経費になりませんので、帳簿の上では利益が出ているのに手元に残らない状態が起きます。借りる額は、返済を引いたあとにいくら残るかで決めてください。

据置期間があると、どうなりますか

その期間が終わった月から、引き落としの額が上がります。忘れているとその月の資金繰りが崩れますので、終わる月をカレンダーに入れてください。

借りる予定がなくても、金融機関に行くべきですか

年に一度、決算のあとに書類を持って行く習慣を作ってください。毎年の数字を見てもらっている相手と、何年も音沙汰のない相手とでは、いざというときの動きが違います。

借りないという選択もありますか

あります。修理で延ばす、中古で済ませる、その設備を使うメニューをやめる。いずれも選択肢です。借りて入れた結果、返済に追われて続けられなくなるのでは意味がありません。借りなかった場合も並べて考えてください。