税や保険料が払えないとき|滞納する前に、使える制度がある
公開: 2026年8月26日
Summary
サロンが税金や社会保険料を納められないときに使える猶予・分割・減免を整理します。申告と納付が別の手続きであること、窓口が税務署・市区町村・年金事務所に分かれること、猶予は免除ではないこと、今年の所得が落ちるなら前払いを減らせること、放置すると起きること、来年へ向けた取り分けまでを扱います。
封筒を開けずに、そのまま棚に置きました。
税務署からの納付書です。金額は分かっています。分かっているから、開けたくなかったのです。
去年は売上がありました。だから、その分の税が来ます。ところが今年は、近くに大きな店ができて客足が落ちています。手元にあるお金は、来月の家賃と仕入れでほぼ消えます。
こういうとき、どうすればいいのか。誰にも聞けないまま、封筒が二通、三通と溜まっていきました。
先に結論を書きます。払えないときに使える制度があります。そして、その多くは、滞納する前でないと選びにくくなります。
「払えない」と「払わない」は、扱いが違う
まず、ここを理解してください。
税や保険料を納める側から見ると、どちらも「納めていない状態」に見えます。ところが、受け取る側から見ると、この2つはまったく別のものです。
相談に来て、事情を説明して、分割で納める約束をしている人。何も言わずに納めていない人。この2人が同じ扱いになることはありません。
そして、制度のほとんどは、前者のために用意されています。
ですから、開けたくない封筒でも開けてください。そして、払えないと分かった時点で、こちらから連絡してください。順番が逆になると、選べる手が減ります。
申告と納付は、別のもの
いちばん大事なところを、先に書きます。
お金が無いから申告もしない、という方がいます。これは、いちばんしてはいけないことです。
申告は「いくら納めるかを届け出ること」で、納付は「実際に納めること」です。この2つは別の手続きです。
そして、猶予や分割の制度は、申告がされていることを前提にしています。金額が確定していないものを、猶予することはできないからです。
つまり、期限内に申告だけは済ませてください。納めるお金が無くても、です。申告さえしてあれば、そのあとの相談ができます。
申告の時期や準備はサロン開業1年目の確定申告スケジュールで扱っています。
窓口は、一つではありません
ここで、多くの方がつまずきます。
支払いに困っているものが、税だけとはかぎりません。所得税、住民税、事業税、国民健康保険料、国民年金保険料。これらが同じ時期に重なります。
そして、これらの窓口は、全部ばらばらです。
- 所得税と消費税は、税務署
- 住民税と事業税、国民健康保険料は、市区町村や都道府県
- 国民年金保険料は、年金事務所
一か所で相談すれば全部が片づく、ということはありません。それぞれに連絡する必要があります。
面倒に思えますが、逆に言えば、一つずつ軽くできるということでもあります。全部を一度に解決しようとせず、金額の大きいものから順に相談してください。
国保と年金の手続きそのものはサロン開業時の社会保険・国民健康保険の手続きで扱っています。
猶予は、免除ではありません
期待しすぎないよう、はっきり書きます。
猶予というのは、納める時期を先に延ばすことです。あるいは、分けて納めることです。納める金額そのものが消えるわけではありません。
一方で、遅れたことに対する上乗せの分が、軽くなったり止まったりすることはあります。ここは、放置した場合との差が大きく出るところです。
そして、猶予を受けるためには、条件を満たしている必要があります。事情の説明も求められますし、金額によっては担保が必要になることもあります。
ですから「相談すれば消える」とは考えないでください。考えるべきは、いつまでに、いくらずつなら納められるかです。この数字を持って行くと、話が早く進みます。
減免という枠もあります
猶予とは別に、負担そのものが軽くなる仕組みもあります。
こちらは、災害に遭った、事業をやめた、収入が大きく落ちた、といった事情がある場合に検討されるものです。所得が一定以下の場合に、自動的に軽くなる仕組みもあります。
ただし、対象になるかどうかの判断は、制度ごとに違います。そして、こちらから申し出ないと始まらないものが多くあります。
黙っていて向こうから提案されることは、あまりありません。ですから、事情があるなら、その事情を伝えてください。
今年の所得が落ちるなら、前払いを減らせます
これは、知らない方が多い仕組みです。
前の年の所得が一定以上あると、今年の所得税を年の途中で前払いすることになります。まだ確定していない今年の分を、去年の実績をもとに先に納める形です。
ところが、今年の見通しが去年より明らかに悪い場合、その前払いの額を減らすよう申し出ることができます。
つまり、去年の数字で決まった金額を、そのまま払う必要はないのです。
ただし、申し出には期限があり、根拠となる見込みの資料も要ります。ですから、今年の数字が落ちていると感じた時点で、税務署か税理士に確認してください。
年をまたぐ資金の動きは開業1年目の税金・インボイスの整理でも扱っています。2年目に負担が重なる構造そのものは、知っておいてください。
放置すると、何が起きるか
書きたくないことですが、知らないと判断を誤ります。
まず、督促が来ます。次に、遅れた分の上乗せが増えていきます。そして、事業の状況が調べられます。
さらに進むと、財産が差し押さえられることがあります。売掛金や預金が対象になることもあり、そうなると事業そのものが回らなくなります。
保険料の場合は、別の影響も出ます。保険証の扱いが変わったり、将来受け取る年金に響いたりします。
これらは、いきなり起きるわけではありません。連絡を取らないまま時間が過ぎたときに、段階を追って進みます。
つまり、いちばん避けるべきなのは、連絡が取れない状態を続けることです。
相談に持って行くもの
手ぶらで行っても話は聞いてもらえますが、揃っていると早く進みます。
- 納付書、または通知の書類
- 直近の申告の控え
- 事業用の口座の動きが分かるもの
- 今後の見通しを書いたもの(数か月分)
最後のものが効きます。「いくらなら、いつまでに納められるか」を自分の言葉で示せると、相手も判断しやすくなるからです。
見通しの作り方はサロンの資金繰り表で扱っています。凝ったものは要りません。手書きでもかまいません。
預かっている分は、性質が違います
スタッフを雇っている場合の話です。
給与を渡すとき、そこから税の分を引いています。引いた分は、店のお金ではありません。本人に代わって預かり、まとめて納めるためのものです。
ここを、店の資金と混ぜないでください。混ざると、給与を払った時点でお金が減っているように見えないため、納める時期に足りなくなります。
そして、預かった分の扱いは、自分の税より厳しくなる傾向があります。もともと自分のものではないお金だからです。
ですから、引いた分は、引いた時点で別に取り分けてください。これは猶予の話ではなく、そうならないための話です。
何から先に払うか
現実には、全部は払えないことがあります。
このとき、まず考えるべきなのは、止まると営業が続かなくなるものです。家賃、光熱費、仕入れ。ここが止まると、翌月の売上そのものが立ちません。
一方で、税や保険料は、相談することで時期をずらせる余地があります。だからこそ、相談する意味があるのです。
ただし、これは「税は後回しでよい」という意味ではありません。ずらすためには連絡が要る、というだけのことです。連絡せずに後回しにすると、いちばん重い結果になります。
借りて納めるかどうか
判断が分かれるところです。
納税のために借りる、という選択はあります。ただ、これは返済が増えるということでもあります。
考える順番としては、まず猶予や分割で足りるかを確かめてください。そのうえで足りない場合に、借入を検討します。
逆にしないでください。先に借りてしまうと、使えたはずの制度を使わないまま、返済だけが残ります。
消費税は、性質が違います
一つ、分けて考えるべきものがあります。
消費税を納める立場になっている場合、その分は、お客様から預かった性質を持ちます。ですから、他の税より重く扱われる傾向があります。
そして、金額も大きくなりがちです。売上に応じて増えるため、利益が出ていなくても発生します。
対象になる境目は消費税を納める側になる境目で扱っています。納める立場になったら、その分は別に取り分けておいてください。使ってしまってから用意するのは、かなり難しくなります。
来年に向けて、変えられること
同じことを繰り返さないために、二つだけ。
一つは、取り分けです。売上が入った時点で、一定の割合を別の口座に移してください。あとで用意しようとすると、まず残りません。
もう一つは、時期を知っておくことです。所得税、住民税、事業税、国保、年金。それぞれ納める時期が違います。カレンダーに書き出すだけで、来る前に備えられます。
そして、去年より今年の数字が落ちているなら、前払いを減らせないかを確かめてください。
| 困りごと | 相談先 |
|---|---|
| 所得税・消費税 | 税務署(納める前に。申告は期限内に済ませる) |
| 住民税・事業税 | 市区町村・都道府県の課税の窓口 |
| 国民健康保険料 | 市区町村の国保の窓口 |
| 国民年金保険料 | 年金事務所(免除・猶予は将来の年金額に影響) |
| 今年の見通しが悪い | 前払いの減額を申し出られる。期限と資料が要る |
| 資金が足りない | まず猶予・分割を確かめ、そのうえで借入を検討する |
今日やる一つ
開けていない封筒があるなら、開けてください。そして、納付書に書かれている「どこに納めるのか」を確かめてください。税務署なのか、市区町村なのか、年金事務所なのか。相談する先は、そこに書いてあります。
よくある質問
お金が無いので申告もしないでよいですか
いちばんしてはいけないことです。申告は「いくら納めるかを届け出ること」、納付は「実際に納めること」で、別の手続きです。猶予や分割の制度は申告がされていることを前提にしていますので、納めるお金が無くても期限内に申告だけは済ませてください。
滞納してから相談してもよいですか
相談自体はできますが、選べる手が減ります。制度の多くは、事情を説明して約束をしている方のために用意されています。払えないと分かった時点で、こちらから連絡してください。
相談すれば税は消えますか
猶予は納める時期を先に延ばすこと、あるいは分けて納めることで、金額そのものが消えるわけではありません。ただし、遅れたことに対する上乗せの分が軽くなったり止まったりすることはあります。
一か所で全部まとめて相談できますか
できません。所得税と消費税は税務署、住民税・事業税・国民健康保険料は市区町村や都道府県、国民年金保険料は年金事務所と、窓口が分かれています。金額の大きいものから順に、一つずつ連絡してください。
負担そのものが軽くなることはありますか
災害に遭った、事業をやめた、収入が大きく落ちたといった事情があれば、減免が検討されることがあります。所得が一定以下の場合に自動的に軽くなる仕組みもあります。ただし、こちらから申し出ないと始まらないものが多いので、事情は必ず伝えてください。
今年は去年より売上が落ちています
前の年の所得が一定以上あると、今年の所得税を年の途中で前払いすることになります。今年の見通しが明らかに悪い場合、その前払いの額を減らすよう申し出ることができます。期限と、見込みの根拠となる資料が要りますので、早めに税務署か税理士に確認してください。
相談に何を持って行けばよいですか
納付書または通知の書類、直近の申告の控え、事業用口座の動きが分かるもの、そして今後数か月の見通しです。最後のものが効きます。「いくらなら、いつまでに納められるか」を示せると、相手も判断しやすくなります。
担保は必要ですか
金額によっては求められることがあります。制度ごとに扱いが違いますので、相談の際に確認してください。
放置するとどうなりますか
督促が来て、遅れた分の上乗せが増え、事業の状況が調べられます。さらに進むと財産が差し押さえられることがあり、売掛金や預金が対象になると事業が回らなくなります。保険料の場合は保険証の扱いや将来の年金にも影響します。
借りて納めるべきですか
まず猶予や分割で足りるかを確かめてから、足りない場合に検討してください。先に借りてしまうと、使えたはずの制度を使わないまま返済だけが残ります。
国民年金の免除は使ってよいですか
使える場合がありますが、免除や猶予を受けた期間は将来受け取る年金額に影響することがあります。内容を年金事務所で確認したうえで判断してください。
消費税も同じように考えてよいですか
性質が違います。納める立場になっている場合、その分はお客様から預かった性質を持ち、他の税より重く扱われる傾向があります。売上に応じて増えるため、利益が出ていなくても発生します。入った時点で別に取り分けておいてください。
来年また同じことになりそうです
売上が入った時点で一定の割合を別の口座へ移してください。あとで用意しようとすると、まず残りません。あわせて、所得税・住民税・事業税・国保・年金それぞれの納める時期をカレンダーに書き出しておくと、来る前に備えられます。

