施術範囲の線引き|「希望されたから」は応じてよい理由にならない
公開: 2026年8月4日
Summary
どこまで触れるかを先に決める方法を整理します。範囲を決めるのは店の側という前提、触れない部位を紙に書く手順、骨や関節を動かす行為の扱い、体調で範囲が変わる場面、断り方、記録の書き方、道具を使う場合、言葉にも範囲がある点を扱います。
「首もお願いします」と言われて、そのまま応じました。後から、そこは避けるべきだったと知りました。
どこまで触れるかは、その場の希望で決めないでください。触れない部位を、先に決めておく話です。

範囲を決めるのは店の側
まず、前提を確認してください。希望されたからといって、応じてよい理由にはなりません。
判断するのは、こちらです。何をするかを決める立場にあるためです。相手の希望は、受け取る材料であって、判断の根拠ではありません。
「他の店ではやってもらえた」と言われる場面も、あります。それでも基準を曲げないでください。曲げた一件が、前例になります。
そもそも、無資格で行える範囲には限りがあります。ここを越える施術は、希望の有無に関わらず行えません。範囲の考え方は、自宅リラクゼーション・整体サロン開業に必要な資格の有無で整理しています。
触れない部位を先に書く
その場で判断すると、空気に流されます。紙に書いてください。
書くのは、部位と理由です。「◯◯には触れない」だけだと、後から自分でも根拠が分からなくなります。
書いたものは、全員が見える場所に置いてください。人によって違うと、店として一貫しません。
新しく入った人には、技術より先に渡してください。どこまでやるかが決まっていない状態で覚えると、後から直せなくなります。
| 決めること | 書き方の例 |
|---|---|
| 触れない部位 | 部位と、なぜ避けるかを併記する |
| 力を抑える部位 | 通常より弱く扱う場所 |
| 確認が要る部位 | 本人に一言添えてから触れる |
| 判断する人 | 迷ったら誰に聞くか |
骨や関節を動かす行為
最も判断が要るのが、ここです。慎重に扱ってください。
音が鳴るような動かし方を、求められる場面があります。ただし、それを提供するかどうかは技術の話だけでは決まりません。
無資格で行える範囲を越える可能性があるため、扱う前に確認が要ります。判断に迷う場合は、専門家に確認してください。
「気持ちがよいから」を理由に、範囲を広げないでください。喜ばれることと、行ってよいことは別です。
体調で範囲が変わる
同じ方でも、その日によって扱いが変わります。固定で考えないでください。
熱がある、けがをしている、痛みが強い。こうした状態では、通常どおりに進めない場面があります。
妊娠中の方も、扱いが変わります。ただし、こちらが医学的な判断をする立場ではありません。答えられるのは、店で何をするかと、調整できることまでです。
判断に迷う場面では、その日は範囲を狭めてください。「今日はここまでにします」と伝えれば、多くの方は理解されます。

触れる前に伝える
範囲を決めていても、伝わっていなければ意味がありません。
触れる前に、一言添えてください。「首の周りに触れます」「体勢を変えます」。何が起きるかが分かると、身構えずに済みます。
避ける部位についても、先に伝えてください。「当店では◯◯には触れません」と言えば、その場で希望される場面が減ります。
黙って範囲を狭めると、「やってもらえなかった」という印象だけが残ります。理由を添えれば、そうはなりません。
断る場面を持つ
範囲を越える希望には、応じないでください。ここで押し切ると、事故になります。
断るときは、理由を説明してください。「当店では行っていません」で足りますが、「この状態では負担が大きいと考えます」のように具体を添えると、伝わりやすくなります。
代わりの提案も、あわせて出してください。別の部位を扱う、時間を変える、日を改める。断るだけで終わらせないことです。
基準の作り方は、サロンで施術を断る基準で整理しています。
記録に残す
その日どこまで扱ったかを、残してください。次回の判断が、変わるためです。
避けた部位と、その理由を書いてください。「本人の申告により首は避けた」と残せば、次に来られたときに確認できます。
範囲を広げた場合も、記録してください。前回より深く扱ったなら、その後の様子を次回に聞けます。
なお、こちらの見立ては書かないでください。「◯◯が悪そう」といった記述は、開示を求められたときにそのまま出ます。記録の考え方は、サロンの施術記録の書き方で整理しています。

メニュー表に範囲を書く
決めた範囲は、来店の前に伝えられます。ここも設計の対象です。
「全身」という書き方は、範囲が伝わりません。どこを扱うかを、具体的に書いてください。
扱わない部位も、書いておく方法があります。書いておけば、当日に希望されて断る場面が減ります。
所要の時間と、扱う範囲を対応させてください。60分で全身と書くと、期待と実際がずれます。メニュー表の作り方は、サロンのメニュー表の作り方で整理しています。
広告での書き方
範囲の説明でも、効果を約束しないでください。
「肩こりが取れます」「腰痛に効きます」といった書き方は、根拠を示せません。無資格で行う施術には、表現の制限もあります。
書けるのは、扱う部位と方法までです。「肩と背中を中心に、手で圧をかけます」。事実の説明にとどめてください。
考え方は、整体院のHPで「マッサージ」と書くと問題になりうるかで整理しています。あわせて、「整骨院と何が違うのか」への答え方も確認してください。
スタッフがいる場合
範囲を、揃えてください。人によって違うと、その差が「あの人はやってくれた」という形で表面化します。
紙1枚に書いて、全員に渡してください。技術の前に、ここを共有します。
判断が要る場面は、責任者に回す線を引いてください。新人が自分で範囲を広げないよう、明示します。
範囲を越えた場面を見つけたら、責める前に確認してください。書いたものが伝わっていなかった可能性があります。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 範囲の共有 | 紙1枚。技術より先に渡す |
| 判断の線 | 迷ったら責任者。自分で広げない |
| 伝え方 | 触れる前に一言。避ける部位も先に伝える |
| 記録 | 避けた部位と理由。見立ては書かない |
道具を使う場合
手以外のものを使う場面でも、範囲の判断が要ります。ここも決めておいてください。
温める器具や、当てる道具。使うなら、当てる時間と部位を決めてください。感覚が鈍っている方には、火傷の危険もあります。
道具の点検も、忘れないでください。コードの傷みや温度のずれは、事故につながります。考え方は、サロンの設備が壊れたときで整理しています。
そもそも、その道具を使うことが範囲の内側かを確認してください。手で行う範囲と器具を使う範囲では、扱いが変わる場合があるためです。
見直す機会を持つ
一度決めた範囲を、固定しないでください。年に一度は、見直す場面が要ります。
技術が上がれば、扱える幅も変わるためです。逆に、法令の解釈が変わることもあります。
同業の相談相手を持っておくと、判断の材料が増えます。一人で決め続けると、基準がずれても気づけません。相談先の作り方は、一人サロンの相談相手をどう作るかで整理しています。
見直したら、書いたものを更新してください。古い紙が残っていると、そちらが運用されます。
相手の期待を先に下げる
範囲を守ると、物足りないと感じられる場面があります。ここも設計で減らせます。
初めての方には、始める前に伝えてください。「当店は◯◯を中心に行います。強く押したり、関節を動かしたりはしません」。
期待が高いまま始めると、終わったときの落差になります。先に示しておけば、そもそも合わない方は来られません。
それは、失客ではありません。合わない方が来ないほうが、双方にとって結果がよくなります。
施術以外の助言も範囲の外
体に触れる範囲だけでなく、言葉にも範囲があります。ここも、見落とされがちです。
姿勢や運動について、助言を求められる場面があります。ただし、それが治療の指導にあたる形になると、範囲を越えます。
「こうすると楽になりますよ」と伝える程度と、症状の改善を目的とした指導は別です。判断に迷うなら、伝えないでください。
食事や生活についても、同じです。専門の資格が要る領域があります。踏み込む前に、確認してください。
聞かれて答えられないことは、答えられないと伝えて構いません。曖昧に答えるほうが、後で問題になります。
VANNAでできること
VANNAでは、メニューごとに内容と所要の時間を掲載できます。扱う範囲を事前に示せるため、来店前の認識が揃います。顧客の記録には、避けた部位や当日の判断をメモとして残せる形です。カレンダー予約はMaxプランの機能で、来店前のメールリマインドは全プランで使えます。
一方で施術の可否を判定する機能は、ありません。範囲の判断は、施術者が行うことになります。この点は把握しておいてください。
料金はPro月額3,300円、Max月額5,500円、Max+月額11,000円で、いずれも税込です。初期費用は0円、予約や販売に対するVANNA側の手数料も0円です。現在はプレオープン期間として、2026年7月31日までの申し込みで2か月無料、以降の申し込みは1か月無料です。条件は変更される場合があるため、最新の内容はVANNA公式 料金でご確認ください。
高齢の方への配慮
年齢によって、扱いを変える場面があります。ここも先に決めてください。
体の状態は、年齢だけでは決まりません。ただし、力の加減や体勢の変え方には配慮が要ります。
うつ伏せや横向きの姿勢が、負担になる場合があります。無理に体勢を変えず、できる範囲で進めてください。
移動の場面も、目を離さないでください。施術の台に上がる、降りる。ここで転倒すると、施術そのものより重い結果になります。
子どもへの施術
年齢が低い方からの相談も、あります。受けるかどうかを決めておいてください。
受けると決めるなら、保護者の同意を確認してください。同伴していただく形が、確実になります。
体が発達の途中にあるため、成人と同じ扱いはできません。範囲を狭める判断が、要ります。
判断に迷うなら、受けない選択も成り立ちます。「当店では◯歳以上の方を対象としています」と書いておけば、問い合わせのたびに断る場面が減るためです。
今日やる一つ
「触れない部位」を、3つ書き出してください。理由も添えます。書けないなら、いまは範囲が決まっていない状態です。決まっていないと、その場の希望で動くことになります。
よくある質問
希望されたら応じるべきですか
希望は、応じてよい理由になりません。何をするかを決めるのは、こちらです。「他の店ではやってもらえた」と言われても、基準を曲げないでください。曲げた一件が前例になります。
範囲はどう決めますか
触れない部位と、その理由を紙に書いてください。「◯◯には触れない」だけだと、後から自分でも根拠が分からなくなります。全員が見える場所に置き、新人には技術より先に渡します。
骨や関節を動かす行為は
無資格で行える範囲を越える可能性があるため、扱う前に確認が要ります。「気持ちがよいから」を理由に範囲を広げないでください。喜ばれることと、行ってよいことは別です。
体調で範囲は変わりますか
変わります。熱、けが、強い痛み、妊娠中。ただし医学的な判断をする立場ではありません。迷う場面では、その日は範囲を狭めてください。
断るときはどう言いますか
「当店では行っていません」で足ります。具体を添えると伝わりやすくなります。代わりの提案(別の部位、時間の変更、日を改める)も、あわせて出してください。
記録には何を書きますか
避けた部位と、その理由です。「本人の申告により首は避けた」と残せば、次回に確認できます。こちらの見立ては書かないでください。開示時にそのまま出ます。
メニュー表にはどう書きますか
「全身」では範囲が伝わりません。どこを扱うかを具体的に書き、扱わない部位も書いておく方法があります。所要の時間と範囲を対応させてください。
子どもは受けられますか
受けるかどうかを先に決めてください。受けるなら保護者の同意を確認し、同伴していただく形が確実です。体が発達の途中にあるため、成人と同じ扱いはできません。
道具を使う場合も範囲の判断が要りますか
要ります。温める器具や当てる道具は、当てる時間と部位を決めてください。感覚が鈍っている方には火傷の危険もあります。その道具を使うこと自体が範囲の内側かも確認してください。
決めた範囲は固定ですか
年に一度は見直してください。技術が上がれば幅も変わり、法令の解釈が変わることもあります。同業の相談相手がいると、基準のずれに気づけます。
範囲を守ると物足りないと言われます
始める前に「当店は◯◯を中心に行います」と伝えてください。期待が高いまま始めると、終わったときの落差になります。先に示せば、合わない方は来られません。それは失客ではありません。
姿勢や運動の助言はしてよいですか
治療の指導にあたる形になると、範囲を越えます。食事や生活についても、専門の資格が要る領域があります。判断に迷うなら伝えないでください。答えられないと伝えて構いません。



