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資金・融資・補助金

売上をどの日で数えるか|小さい店だけが選べる特例があります

公開: 2026年8月25日

十二月の終わりに、式場から連絡がありました。

来月の成人式の前撮りで、着付けとヘアセットをまとめて頼みたいという話です。日程を詰めて、金額も決まりました。

施術をするのは一月です。請求書を出すのも一月、入金は二月になります。

ここで一つ、迷いが出ます。

この売上は、今年のものでしょうか。それとも来年のものでしょうか。

たいていの人は、深く考えずにどちらかで処理します。そして、そのやり方が自分の判断だったことにも気づきません。

どちらの年に入れるかは、決まっています

好きなほうを選べる話ではありません。

原則として、売上はお金を受け取った日ではなく、施術や納品が終わった日で数えます。物を売ったなら引き渡した日、サービスなら提供し終えた日です。

つまり、代金がまだ入っていなくても、その年の売上になります。

冒頭の例なら、施術は一月ですから、来年の売上です。入金が二月でも三月でも変わりません。年内に前金をもらっていたとしても、施術が終わっていなければ、その時点では売上ではありません。

この考え方は、聞くと当たり前に思えます。ですが、実際の帳簿は違う作り方になっていることが少なくありません。

売上をどの日で数えるかを対比した図。原則は施術や納品が終わった日で、代金がまだ入っていなくてもその年の売上になり、前金を受け取っていても施術前ならまだ売上ではない。特例はお金が動いた日で、規模の小さい事業者だけが選べ、青色申告であることと届出が条件。その場で会計が済む店は、どちらでも答えが同じになる。
売上をどの日で数えるかを対比した図。原則は施術や納品が終わった日で、代金がまだ入っていなくてもその年の売上になり、前金を受け取っていても施術前ならまだ売上ではない。特例はお金が動いた日で、規模の小さい事業者だけが選べ、青色申告であることと届出が条件。その場で会計が済む店は、どちらでも答えが同じになる。

その場で会計が済む店は、たいてい一致します

なぜ気づかないのか。理由は単純です。

サロンの多くは、施術が終わったその場で代金をいただきます。施術の日と入金の日が同じですから、どちらで数えても答えが同じになります。

だから、意識しないまま何年も過ぎます。

問題が出るのは、この二つがずれる取引が混ざり始めたときです。そして、続けているうちに必ず混ざります。

ずれるのは、こういう場面です

思い当たるものがあるはずです。

  • 法人との取引。請求書を出して、翌月や翌々月に振り込まれる
  • 面貸しや業務委託の席料を、月末締めで受け取っている
  • 物販を卸していて、支払いが後になる
  • 式場や施設からの仕事で、締め日が決まっている
  • 年末年始をまたぐ予約に、前金を受け取っている

どれも、続けている店なら一つは当てはまります。そして、金額が小さいうちは誤差で済みますが、大きくなると年をまたいだ利益が数十万円単位で動きます。

利益が動くということは、その年の税金が動くということです。

施術の日と入金の日が離れる取引を並べた図。法人との取引で翌月や翌々月に振込、面貸しや業務委託の席料の月末締め、物販の卸、式場や施設の仕事、年末年始をまたぐ予約の前金。回数券は典型で、売った日にお金は入るがまだ施術しておらず、使われた分だけが順に売上になる。経費も、支払った日ではなく使った日で数える。
施術の日と入金の日が離れる取引を並べた図。法人との取引で翌月や翌々月に振込、面貸しや業務委託の席料の月末締め、物販の卸、式場や施設の仕事、年末年始をまたぐ予約の前金。回数券は典型で、売った日にお金は入るがまだ施術しておらず、使われた分だけが順に売上になる。経費も、支払った日ではなく使った日で数える。

経費のほうも、同じ考え方です

売上だけの話ではありません。経費も、支払った日ではなく、使った日や引き渡しを受けた日で数えます。

十二月に材料をまとめて仕入れて、支払いが一月なら、その材料は今年の経費です。逆に、年内に支払っていても、届くのが来年なら今年の経費にはなりません。

年払いの保険料や、年間契約のサービスも同じです。支払った時点で全額を落とせるとは限らず、期間に応じて分ける考え方が基本になります。

ここは細かい例外が多いところなので、年払いのものが複数あるなら、税理士に一度整理してもらってください。日々の記録の作り方そのものはサロンの経費管理を月末30分で回す|記帳の習慣と家事按分の考え方にまとめてあります。

回数券は、この話の典型です

いちばん分かりやすい例が、回数券や前払いのチケットです。

売った日にお金は入りますが、その時点ではまだ施術をしていません。ですから、売った日の売上ではありません。使われた分だけが、順に売上になっていきます。

手元にお金があるので、全部が自分の稼ぎのように見えます。ですが、帳簿の上では預かっている状態です。

この扱いは判断が細かく分かれるところで、回数券と前受金の扱い|売った日と、使われた日は違うで詳しく整理しています。

小さい店だけが選べる特例があります

ここからが、この記事の本題です。

原則はここまで書いたとおりですが、規模の小さい事業者については、お金が動いた日で数えてよいという特例が用意されています。

つまり、入金の日に売上を立て、支払った日に経費を立てる。日々の感覚とそのまま一致するやり方です。

対象になるのは、青色申告をしていて、少し前の年の所得が一定額以下の人です。基準となる額と、どの年の所得で判定するかは決まっていますが、この記事には書きません。改正で動きますし、自分が当てはまるかは申告書を見れば税務署でも税理士でもすぐ分かるからです。

小さい店にとっては、事務がはっきり軽くなります。売掛と買掛を追う必要が、ほぼ無くなるからです。

選ぶには届出が要り、期限があります

自動では適用されません。

使いたい年について、あらかじめ届け出る必要があります。そして、その届出には提出の期限があります。

年が明けてから「去年の分をこれで計算します」とはできません。

開業したばかりの人には別の期限の考え方が用意されていますが、いずれにしても後から遡ることはできない、という点は共通です。この時期の全体像はサロン開業1年目の確定申告スケジュール|いつから何を準備すべきか月別ガイドで確認できます。

楽になる代わりに、失うものがあります

ここを知らずに選ぶ人がいます。

この特例を使うと、帳簿の付け方が簡易な形になります。その結果、青色申告で受けられる控除の額が、いちばん大きい枠には届かなくなります。

事務が軽くなる代わりに、控除が小さくなる。そういう取引です。

どちらが得かは、控除の差額と、事務にかかる手間や外注費を並べて比べるしかありません。所得が小さいうちは控除の差の影響も小さいため、事務の軽さが勝つ場面はあります。逆に、利益が伸びてきたら逆転します。

金額で決めるものであって、好みで決めるものではありません。

特例を選ぶ前に並べる三つを示した図。得るものは事務の軽さで、売掛と買掛を追う必要がほぼ無くなる。失うものは控除で、帳簿が簡易な形になるため青色申告の控除が最大の枠に届かず、借入時の見え方も変わる。手続きは、自動では適用されず、使いたい年についてあらかじめ届け出る必要があり、後から遡れない。
特例を選ぶ前に並べる三つを示した図。得るものは事務の軽さで、売掛と買掛を追う必要がほぼ無くなる。失うものは控除で、帳簿が簡易な形になるため青色申告の控除が最大の枠に届かず、借入時の見え方も変わる。手続きは、自動では適用されず、使いたい年についてあらかじめ届け出る必要があり、後から遡れない。

控除の要件は、これから見直されます

そして、その比較の前提そのものが動きます。

青色申告の控除については、金額や要件を見直す方向で改正が予定されています。売上の規模によって、簡易な帳簿では受けられる控除が変わる、という考え方が入る見込みです。

具体的な年や金額は書きません。この記事を読む時期によって、正しい数字が変わるからです。

書けるのは、次のことだけです。いま調べて出てきた比較表が、数年後もそのまま使えるとは限りません。特例を選ぶ判断は、一度決めたら終わりではなく、数年に一度は見直す前提で考えてください。

利益が伸びたら、自分で気づく必要があります

この特例には、規模の条件が付いています。

つまり、店が伸びて所得が基準を超えれば、その先は使えなくなります。ここまでは、当然の話に聞こえるはずです。

問題は、超えたことを誰も教えてくれないことです。

税務署から「今年から使えません」という通知が届くわけではありません。自分で判定して、原則どおりの計算に戻す必要があります。

しかも、判定に使うのは今年の所得ではなく、少し前の年の所得です。ですから、伸びた年の翌々年あたりに効いてきます。忙しくなって数字を見る余裕がなくなっている時期と、ちょうど重なります。

一度選んだら放置してよい制度ではない、と考えてください。毎年の申告のときに、まだ使える規模かどうかを一度確かめる。それだけで防げます。

借りるときの見え方が、変わります

もう一つ、事務の楽さだけで判断すると見落とすところがあります。

入金の日で数える方式にすると、決算書に売掛金が出てきません。まだ入っていない売上が、書類の上に現れないということです。

その結果、実際の事業規模より小さく見えることがあります。

金融機関が見るのは、提出された決算書です。年末に大きな請求が残っていても、そこには反映されません。借入を考えている時期であれば、この差は不利に働きえます。

もちろん、補足の資料を出して説明することはできます。ただ、最初から原則どおりの帳簿で作られている店に比べて、一手間かかることは確かです。

数年以内に設備の入れ替えや借入を考えているなら、その予定も含めて判断してください。事務の軽さは毎年効きますが、借入の場面は数年に一度しか来ないぶん、影響が大きく出ます。

白色申告の人はどうなるのか

この特例は、青色申告をしている人が対象です。

青色を選んでいない場合は、そもそもこの選択肢がありません。ただし、白色でも記帳そのものは必要で、簡易な形式が認められています。

青色と白色で何がどう違うのかは開業したばかりで売上がまだ少ないサロンオーナーも確定申告は必要か|赤字申告のメリットに比較があります。

事務を軽くしたいという理由で白色のままにしている人は、順番が逆になっている可能性があります。青色にしたうえでこの特例を選ぶほうが、控除を受けられる分だけ有利になる場合があるからです。

途中で戻せるのか

やめることはできます。ただし、やめるにも届出が要ります。

そして、やめた年から原則どおりの計算に戻るため、切り替えの年には売掛や買掛を洗い直す作業が発生します。

ここで手間が生じるので、迷っているうちは選ばないほうが無難です。事務を軽くするために選んだのに、切り替えのたびに重い作業が出ては本末転倒になります。

未回収がある店は、慎重に考えてください

見落とされやすい影響があります。

入金の日に売上を立てる形にすると、回収できなかった代金は、そもそも帳簿に載りません。載っていないので、あとから経費として落とすこともありません。

これは損得というより、扱いの違いです。最初から売上に入れていないので、税金もかかっていないからです。

ただ、未回収がそれなりの頻度で起きている店では、記録の残し方が変わります。帳簿に出てこない分を、別の形で把握しておく必要が出てきます。

面貸しや卸の取引がある店は、この点を踏まえて選んでください。

会計ソフトを使っている場合

多くのソフトは、初期設定でどちらの方式かが決まっています。

そして、その設定を自分で選んだ覚えのない人がほとんどです。設定画面のどこかにあるだけで、日々の入力画面には出てこないからです。

まず、いま自分がどちらで入力しているのかを確かめてください。分からなければ、去年の決算書に売掛金や買掛金の残高があるかどうかを見ます。残高が並んでいれば、原則どおりの方式です。

書類のどこに何が書いてあるかは領収書と帳簿の保存|紙で残すか、データで残すかも参考になります。

途中で変えないでください

どちらを選ぶにしても、いちばんいけないのは年によって変えることです。

今年は入金の日、来年は施術の日。こうすると、切り替わる年の売上が二重に入ったり、どちらの年にも入らなかったりします。

税務の側から見ても、利益を動かす操作に見えます。

一度決めたら、届出を伴う正式な変更以外では動かさない。これは、どちらの方式を選んだ人にも共通する原則です。

税理士に聞くときの言い方

制度の名前を覚える必要はありません。次のように聞けば通じます。

  • 請求書を出して後から入金される取引が、年にどれくらいあるか
  • 回数券や前金を扱っているか
  • 未回収が出ることがあるか
  • いま使っているソフトが、どちらの設定になっているか
  • 青色申告の控除を、いくらで受けているか

この五つを伝えれば、特例を使うべきかどうかの判断はすぐつきます。逆に、これが曖昧なままだと「原則どおりで」と言われて終わります。

今日やる一つ

去年の決算書を出して、売掛金の欄を見てください。

金額が入っていれば、施術の日で数える方式です。空欄かゼロなら、入金の日で数えている可能性があります。

その一行が、この記事の話が自分に関係あるかどうかを決めています。

よくある質問

売上はいつの年に数えるのですか

原則として、施術や納品が終わった日です。代金がまだ入っていなくても、その年の売上になります。前金を受け取っていても、施術が終わっていなければまだ売上ではありません。

その場で支払いを受ける店には関係ありませんか

施術の日と入金の日が同じであれば、どちらで数えても答えは同じです。ただし、法人との取引や面貸しの席料など、後から入る取引が混ざり始めると影響が出ます。

経費も同じ考え方ですか

同じです。支払った日ではなく、使った日や引き渡しを受けた日で数えます。年払いのものは期間に応じて分ける考え方が基本になるため、複数あるなら税理士に整理してもらってください。

入金の日で数える方法は選べますか

規模の小さい事業者について、そういう特例が用意されています。青色申告をしていて、少し前の年の所得が一定額以下であることが条件です。当てはまるかどうかは、申告書を見れば税務署でも税理士でも判断できます。

届出は要りますか

要ります。しかも提出の期限があり、年が明けてから遡って適用することはできません。使いたい年について、あらかじめ届け出てください。

何かデメリットはありますか

帳簿の付け方が簡易な形になるため、青色申告で受けられる控除がいちばん大きい枠には届かなくなります。事務の軽さと控除の差額を並べて比べる話になります。

どちらが得か、目安はありますか

所得が小さいうちは事務の軽さが勝つ場面があり、利益が伸びると逆転します。ただし控除の要件は見直しが予定されているため、いま出ている比較がそのまま使えるとは限りません。数年に一度は見直してください。

所得が増えたら、自動的に外れますか

通知は来ません。自分で判定して、原則どおりの計算に戻す必要があります。しかも判定に使うのは今年ではなく少し前の年の所得ですので、伸びた年から少し遅れて効いてきます。毎年の申告のときに確かめてください。

融資を受けるときに影響しますか

決算書に売掛金が出てこないため、実際の事業規模より小さく見えることがあります。補足の資料で説明はできますが、一手間かかります。数年以内に借入や設備の入れ替えを考えているなら、その予定も含めて判断してください。

白色申告でも使えますか

使えません。この特例は青色申告をしている人が対象です。事務を軽くしたいという理由で白色のままにしているなら、青色にしたうえでこの特例を選ぶほうが、控除を受けられる分だけ有利になる場合があります。

あとからやめられますか

やめられますが、届出が要ります。そして切り替えの年に、売掛や買掛を洗い直す作業が発生します。迷っているうちは選ばないほうが無難です。

回数券はどう扱いますか

売った日ではなく、使われた分が順に売上になります。手元にお金がある状態でも、帳簿の上では預かっていることになります。扱いが細かいので、専用の整理を参照してください。

未回収がある場合はどうなりますか

入金の日で数える形にすると、回収できなかった代金は帳簿に載りません。損得ではなく扱いの違いですが、把握のしかたは別に用意する必要があります。

会計ソフトの設定はどこで分かりますか

日々の入力画面には出てこないことが多く、設定の中にあります。分からなければ、去年の決算書に売掛金や買掛金の残高があるかどうかで見当がつきます。

年によって変えてもよいですか

いけません。切り替わる年の売上が二重になったり、どちらの年にも入らなかったりします。利益を動かす操作にも見えます。届出を伴う正式な変更以外では動かさないでください。

開業したばかりですが、どうすればよいですか

開業した年には別の期限の考え方が用意されています。ただし後から遡れない点は同じですので、開業の届出を出すときに、あわせて相談してしまうのが確実です。

消費税の計算にも影響しますか

売上や仕入れをいつの期間で数えるかという考え方は、消費税の計算にも関わります。所得税だけの判断で決めず、消費税を納めている場合は必ずあわせて確認してください。