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資金・融資・補助金

設備を早く落とすか、平らに落とすか|届け出ないと、選んだことになりません

公開: 2026年8月25日

Summary

シャンプー台や機器を入れ替えたサロン向けに、減価償却の方法を選べることを整理します。何も届け出なければ決まった方法になること、総額は同じで時期だけが動くこと、借入があるときの噛み合い方、選べない資産、年の途中で買うと月割りになること、中古の場合、届出の時期、途中で変える難しさ、在庫の数え方までを扱います。

シャンプー台を入れ替えた年に、税理士さんから聞かれました。

「償却の方法は、どうしますか」

意味が分かりませんでした。買った金額を何年かに分けて経費にする、というところまでは知っています。ですが、方法を選ぶという発想がありませんでした。

「特に希望がなければ、このままで大丈夫です」

そう言われて、そのままにしました。

あとから知ったのですが、そこには選択肢がありました。しかも、選ぶには届出が要り、期限もありました。

何もしなければ、決まった方法になります

まず、仕組みを確認します。

大きな設備を買ったとき、その金額はその年に全部が経費になるわけではありません。何年かに分けて、少しずつ経費にしていきます。

その分け方に、二つの考え方があります。

そして、何も届け出なければ、あらかじめ決められたほうが自動的に適用されます。個人の場合、それは毎年同じ額ずつ落としていく方法です。

つまり、選ばなかったのではなく、選ばないという扱いを受けています。冒頭の「このままで大丈夫です」は、そういう意味でした。

二つの落とし方

違いは、単純です。

一つは、毎年同じ額を落としていく方法です。買った金額を年数で割って、その額を毎年経費にします。分かりやすく、計画も立てやすい形です。

もう一つは、早い年に多く落として、あとになるほど少なくしていく方法です。買った直後にいちばん大きく経費になり、年が経つにつれて減っていきます。

どちらも、最後まで足せば同じ金額です。

変わるのは、どの年にいくら経費になるかという配分だけです。

二つの落とし方を対比した図。毎年同じ額ずつ落とす方法は、買った金額を年数で割って毎年経費にするもので、届け出なければこちらになる。早い年に多く落とす方法は、買った直後にいちばん大きく、年が経つにつれて減り、前に寄せた分だけ後ろの年の経費が減る。得なのはお金を早く手元に残せることだけで、総額は増えない。
二つの落とし方を対比した図。毎年同じ額ずつ落とす方法は、買った金額を年数で割って毎年経費にするもので、届け出なければこちらになる。早い年に多く落とす方法は、買った直後にいちばん大きく、年が経つにつれて減り、前に寄せた分だけ後ろの年の経費が減る。得なのはお金を早く手元に残せることだけで、総額は増えない。

総額は同じで、時期だけが動きます

ここを取り違えないでください。

早く落とす方法を選んでも、経費にできる総額が増えるわけではありません。

前のほうに寄せた分、後ろの年の経費は減ります。つまり、いま税金が軽くなるかわりに、数年後の税金は重くなります。

得なのは、お金を早く手元に残せることです。同じ額の税金でも、いま払わずに済むほうが資金繰りは楽になります。

逆に言えば、それ以上のものではありません。魔法のように負担が消えるわけではないことを、先に理解しておいてください。

どちらが合うかは、状況で変わります

判断の材料は、次のようなものです。

  • いま利益が出ていて、これから落ち着きそうか
  • これから伸びる見込みで、数年後のほうが利益が大きそうか
  • その設備を買うために借りていて、返済が始まっているか
  • 数年以内に、別の大きな設備の予定があるか

いま利益が大きく出ていて、数年後は落ち着きそうなら、早く落とすほうが噛み合います。逆に、これから伸びる見込みなら、後ろの年に経費を残しておいたほうが効きます。

一年だけを見て決めないでください。数年分を並べて、どちらの年に経費を置きたいかで考えることになります。

借りて買ったなら、噛み合うことがあります

とくに効くのが、借りて設備を入れた場合です。

借入の返済は、たいてい最初のうちが重く感じられます。売上がまだ設備に見合っていない時期に、返済だけが始まるからです。

一方で、返済のうち経費になるのは利息の部分だけです。元本は経費になりません。

ですから、返済が始まった時期に手元が苦しくなりやすい構造があります。

早く落とす方法を選ぶと、その時期の税負担が下がります。返済が重い年と、経費が大きい年を重ねられる、ということです。

資金の出入りをどう並べるかはサロンの資金繰り表を5行で作る|利益が出ているのに払えない理由にまとめてあります。

選べないものがあります

ここは、間違えやすいところです。

すべての設備で選べるわけではありません。建物や、建物に付いている設備、構築物にあたるものは、方法が決められています。

サロンで言えば、内装工事のうち建物と一体になる部分は、選ぶ余地がないことがあります。一方、シャンプー台や機器、什器のように動かせるものは、選べる対象に入ります。

同じ工事の見積もりの中に、両方が混ざっていることも珍しくありません。

ですから、「今回の工事のうち、どこが選べる部分ですか」と聞くのが正確です。設備の区分をどう見るかは開業前に購入した施術機器・什器は開業費と減価償却どちらで処理するかの考え方が参考になります。

年の途中で買うと、その年は月割りです

方法を選ぶ前に、知っておくと効くことがあります。

その年に落とせる額は、いつ使い始めたかで変わります。年の初めに入れたものと、年の終わりに入れたものでは、同じ設備でもその年の経費が違います。

使い始めた月から年末までの分だけ、という形になるからです。

つまり、十二月に大きな設備を入れても、その年の経費はごくわずかにしかなりません。「今年は利益が出そうだから、駆け込みで設備を入れて経費にしよう」という考え方は、ここでつまずきます。

早く落とす方法を選んでいても、同じです。配分が前に寄るだけで、月割りの考え方は変わりません。

節税を目的に買うなら、時期まで含めて考えることになります。そして、そもそも必要でない設備を税のために買うのは、いちばん損な選択です。

中古で買うと、年数が短くなります

もう一つ、実務でよく効くところです。

新品と中古では、落としていく年数が変わります。中古のほうが短くなるのが原則です。

すでに使われていた分だけ、残りの寿命が短いと考えるためです。

居抜きで前の店の設備を引き継いだ場合や、中古のシャンプー台や機器を安く入れた場合が、これに当たります。

年数が短いということは、一年あたりの経費が大きくなるということです。同じ金額を出しても、中古のほうが早く落ちきります。

どのくらいの年数になるかは計算のしかたが決まっていますので、税理士に見積書と、その設備が何年使われていたかを伝えてください。

リースなら、この話は関係ありません

混同されやすいので、分けておきます。

買わずに借りている設備については、この選択の話は出てきません。毎月の料金が、その都度の経費になるだけだからです。

方法を選ぶ余地も、届出も、ありません。

ですから、同じシャンプー台を入れるにしても、買うのか借りるのかで、税の上での見え方がまったく変わります。

どちらがよいかは、総額と、手元の資金と、途中でやめられるかどうかで決まります。税の扱いだけで決める話ではありません。

三つに分けた図。選べるのは、シャンプー台や機器、什器のように動かせるもの。選べないのは、建物や建物に付いている設備、構築物で、内装のうち建物と一体になる部分が該当する。そもそも関係ないのがリースで、毎月の料金がその都度の経費になるだけ。中古で買った場合は落としていく年数が新品より短くなる。
三つに分けた図。選べるのは、シャンプー台や機器、什器のように動かせるもの。選べないのは、建物や建物に付いている設備、構築物で、内装のうち建物と一体になる部分が該当する。そもそも関係ないのがリースで、毎月の料金がその都度の経費になるだけ。中古で買った場合は落としていく年数が新品より短くなる。

届出には、時期があります

選ぶには、届け出ます。

新しく取得したものについては、その年の確定申告の期限までに届け出る形になります。買ってから申告までの間に決める、ということです。

ここで問題になるのが、買った直後は忙しいということです。工事が終わり、お客様を迎え、支払いに追われている時期に、こういう手続きは頭から抜けます。

そして気づいたときには、何も届け出ないまま申告が済んでいます。

設備を入れると決めた段階で、税理士に「償却の方法はどうしますか」とこちらから聞いてください。聞かれてから考えるのでは、遅くなります。

途中で変えるには、承認が要ります

一度決めたあとに変えることもできます。ただし、届け出れば通るという形ではありません。

変えたい年の初めのうちに、承認を求める申請をすることになります。そして、承認されるかどうかは判断されます。

しかも、選んだばかりで変えるのは難しいとされています。合理的な理由が求められるためです。

つまり、実質的には最初に決めるものだと考えたほうが安全です。あとで直せる、と思って先送りしないでください。

決める順番を示した図。1は入れると決める段階で自分から方法を聞く、2は使い始める、3は取得した年の申告の期限までに届け出る、4は以後続き、変えるには承認が要る。その年に落とせるのは使い始めた月から年末までの分だけなので、十二月に買っても効かない。償却が終わった年には経費が減り、税金が増える。
決める順番を示した図。1は入れると決める段階で自分から方法を聞く、2は使い始める、3は取得した年の申告の期限までに届け出る、4は以後続き、変えるには承認が要る。その年に落とせるのは使い始めた月から年末までの分だけなので、十二月に買っても効かない。償却が終わった年には経費が減り、税金が増える。

同じ届出で、在庫の数え方も選べます

あまり知られていませんが、同じ書類で、もう一つ選べるものがあります。

店販の商品や施術に使う材料のように、年末に残っている在庫の金額をどう数えるか、という方法です。

こちらも、届け出なければ決まった方法になります。

在庫が少ない店では、どちらでも大きな差は出ません。ただ、店販に力を入れていて、仕入れの時期や単価が動く店では、差が出ることがあります。

在庫そのものの管理はサロンの在庫と発注|足りなくても、余っても損をするにまとめてあります。数え方の話は、その先にあります。

開業のときに出す書類の全体像は青色申告承認申請書の書き方サンプル|開業初年度に出す書類まとめで確認できます。この届出も、その一覧の中に入っています。

お金が出ていかない経費です

減価償却について、もう一つ知っておいてほしいことがあります。

これは、その年にお金が出ていかない経費です。支払いはもう済んでいるからです。

ですから、利益が少なく見えても、手元の現金はそこまで減っていない、という状態が起こります。逆に、償却が終わった年には、経費が急に減って利益が跳ね上がったように見えます。

売上も客数も変わっていないのに、税金だけ増える。そういう年が来ます。

いつ償却が終わるのかを、あらかじめ知っておいてください。早く落とす方法を選んでいれば、その時期は早く来ます。

会計ソフトの設定を確認する

ソフトに資産を登録するとき、方法を選ぶ欄があります。

多くの場合、初期値のまま登録されています。そして、その初期値が届出の内容と食い違っていても、ソフトは教えてくれません。

届け出た方法と、ソフトの設定と、実際の申告書。この三つが揃っているかを、一度だけ確かめてください。

食い違ったまま何年も申告していると、直すのに手間がかかります。日々の記録の作り方はサロンの経費管理を月末30分で回す|記帳の習慣と家事按分の考え方にまとめてあります。

税理士に聞くときの言い方

制度の名前を覚える必要はありません。次のように聞けば通じます。

  • 今回の工事のうち、選べる部分と選べない部分はどこか
  • 早く落とす方法にした場合、何年目まで効くのか
  • 数年後に利益が伸びる見込みだが、それでも早く落としたほうがよいか
  • 届出はいつまでに出すのか。出す必要があるのはどれか
  • いまソフトに登録されている方法は何か

顧問がいない場合でも、確定申告の相談窓口で聞けます。

今日やる一つ

去年の申告書に付いている、資産の一覧を見てください。

そこに、設備の名前と、金額と、償却の方法が並んでいます。何が選ばれているかは、その紙に書いてあります。

見て、初めて知ったのであれば、それは選ばなかったということです。次に設備を入れるときが、決められる機会になります。

よくある質問

償却の方法は、自分で選べるのですか

一部の資産については選べます。ただし届出が要り、何も届け出なければ、あらかじめ決められた方法が自動的に適用されます。

早く落とすと、税金は減りますか

その年は減りますが、後ろの年の経費が減るため、数年で見れば総額は同じです。得なのは、お金を早く手元に残せることです。

どちらを選べばよいですか

いま利益が出ていて数年後は落ち着きそうなら、早く落とすほうが噛み合います。これから伸びる見込みなら、後ろの年に経費を残すほうが効きます。一年だけを見て決めないでください。

借りて設備を買った場合はどうですか

返済のうち経費になるのは利息だけで、元本は経費になりません。返済が重い時期に手元が苦しくなりやすいので、その時期に経費を寄せられる点は噛み合います。

内装工事も選べますか

建物と一体になる部分は、方法が決められていることがあります。同じ見積もりの中に選べる部分と選べない部分が混ざるため、「どこが選べる部分ですか」と聞くのが正確です。

いつまでに届け出ますか

新しく取得したものについては、その年の確定申告の期限までです。買った直後は忙しく、頭から抜けやすい時期ですので、設備を入れると決めた段階で相談してください。

十二月に設備を入れれば、その年の経費になりますか

その年に落とせるのは、使い始めた月から年末までの分だけです。十二月に入れても、その年の経費はごくわずかにしかなりません。駆け込みで買っても、思ったほど効きません。

中古で買った場合はどうなりますか

新品より落としていく年数が短くなるのが原則です。すでに使われていた分だけ残りの寿命が短いと考えるためです。居抜きで引き継いだ設備も同じで、一年あたりの経費は大きくなります。

リースの場合も届出が要りますか

要りません。買わずに借りている設備は、毎月の料金がその都度の経費になるだけで、方法を選ぶ余地がありません。買うか借りるかで、税の上での見え方が変わります。

あとから変えられますか

変えたい年の初めのうちに、承認を求める申請をすることになります。届け出れば通るという形ではなく、選んだばかりで変えるのは難しいとされています。実質的には最初に決めるものだと考えてください。

在庫の数え方も選べるというのは何ですか

同じ書類で、年末に残っている在庫の金額をどう数えるかも届け出られます。在庫が少ない店では差は出ませんが、店販に力を入れている店では差が出ることがあります。

償却が終わった年に、何が起きますか

経費が急に減るため、売上が変わっていなくても利益が跳ね上がったように見え、税金が増えます。いつ終わるのかを、あらかじめ知っておいてください。

減価償却は、お金が出ていくものですか

出ていきません。支払いはもう済んでいるためです。ですから利益が少なく見えても、手元の現金はそこまで減っていない、という状態が起こります。

会計ソフトに任せておけばよいですか

登録のときに方法を選ぶ欄があり、多くは初期値のままです。届け出た内容と食い違っていても、ソフトは教えてくれません。届出とソフトと申告書の三つが揃っているかを一度確かめてください。

少額のものにも関係しますか

金額によっては、その年に一度で経費にできる扱いや、まとめて数年で落とす扱いがあります。どれに当たるかで話が変わりますので、金額を伝えて確認してください。

何も届け出ていませんでした。損をしましたか

過去のぶんは、そのまま続きます。ただ、これから取得するものについては選べます。次に設備を入れるときが、決められる機会になります。