設備を手放すとき|売る・譲る・捨てるで、扱いが違う
公開: 2026年8月25日
Summary
サロンの機器や什器を手放すときの帳簿と税を整理します。売った代金は施術の売上とは別の区分になること、下取りは実際には売って買っていること、譲る場合と捨てる場合の扱い、処分した証拠が要ること、リースは手放せないこと、使わないまま置いておくことにも費用がかかることを扱います。
脱毛の機器を、買い替えることにしました。
古いほうは、まだ動きます。出力が落ちてきたので使わなくなっただけで、壊れてはいません。
業者に聞くと、下取りに出せるとのことでした。同業の知り合いも、譲ってほしいと言っています。
どちらでもいい、と思っていました。手放せるなら、どちらでも同じだろうと。
ところが、この二つは、帳簿の上でも税の上でも違う扱いになります。そして、捨てる場合はまた別です。
手放し方は、四つあります
まず、整理します。
- 売る(下取りに出す、買い取ってもらう、同業に売る)
- 譲る(お金を受け取らずに渡す)
- 捨てる(廃棄する)
- 使わないまま置いておく
このうち四つめは、手放していません。ところが、これを選んでいる店がいちばん多いのです。
そして、置いておくことにも費用がかかります。あとで書きます。
なお、この記事は買った機器の話です。リースで入れているものは扱いが違いますので、そちらも後で分けて書きます。
まだ帳簿に残っているかを、先に見る
判断の起点です。
開業のときや、あとから入れた機器は、金額によって何年かに分けて経費にしています。この処理が終わっていれば、帳簿の上での価値はほとんど残っていません。
一方、まだ途中であれば、残りが帳簿に載っています。
ですから、手放す前に、その機器がいま帳簿でいくらになっているかを確かめてください。会計ソフトを使っているなら、資産の一覧で見られます。
処理のしかたそのものは開業前に購入した施術機器の処理で扱っています。この記事は、その資産を手放すときの話です。
売った場合の扱いは、売上とは別です
ここが、いちばん誤りやすいところです。
機器を売って、お金を受け取った。このとき、その入金を売上に入れないでください。
施術の売上とは、性質が違うからです。事業に使っていた資産を手放したことによるものは、別の区分で扱われます。
そして、儲けが出たかどうかは、受け取った額と、帳簿に残っている価値との差で決まります。
- 帳簿の価値より高く売れた → 差の分が出る
- 帳簿の価値より安く売れた → 損として扱われる
ですから、いくらで売れたかだけを見ても、判断できません。帳簿の数字と並べて初めて分かります。
なお、この区分の計算には、事業の所得とは違う決まりがあります。当てはまる場合は、申告のときに税理士へ伝えてください。
下取りは、値引きに見えるだけです
見落とされやすい形です。
新しい機器を入れるとき、古いものを下取りに出して、その分を差し引いた金額を払う。よくある形です。
このとき、請求書には差し引いた後の金額だけが書かれていることがあります。
ところが、実際には二つのことが起きています。古いものを売り、新しいものを買っているのです。
ですから、それぞれの金額が分かる形にしてもらってください。下取りの額がいくらで、新しいものの価格がいくらなのか。
これが分からないと、新しい機器をいくらで計上するのかも決まりません。
譲った場合
お金を受け取らない形です。
同業の知り合いに、使わなくなった機器をあげた。この場合も、帳簿からは外します。
そして、帳簿に価値が残っていれば、その分は損として扱われることになります。
ただし、相手が家族や親族の場合は、扱いが変わることがあります。ここは判断を含みますので、税理士に確認してください。
なお、譲る場合でも、いつ誰に渡したかを記録に残してください。あとで「まだ持っている」と扱われると、面倒になります。
捨てた場合
処分する形です。
壊れて動かない、引き取り手もない。この場合は、廃棄することになります。
そして、帳簿に価値が残っていれば、その分を損として計上できます。
ここで大事なのは、捨てたという証拠を残すことです。処分の費用の領収書、業者の伝票、そして処分する前の写真。
証拠が無いと、本当に処分したのかを示せません。そして、示せなければ、帳簿に残ったままになります。
処分そのものの進め方はサロンの設備が壊れたときで扱っています。そして、処分した記録は毎月の記帳に残してください。サロンの経費管理を月末30分で回すの習慣があれば、その月のうちに片づきます。
中の情報を消してから手放す
税とは別の話ですが、ここで書いておきます。
予約や顧客の情報が入っている機器、パソコン、タブレット。これらを売る、譲る、捨てる場合は、中の情報を消してから手放してください。
初期化しただけでは残ることがあります。そして、お客様の情報が外に出ると、金額の問題では済みません。
やり方は端末を買い替える・捨てるときで扱っています。手放す前に、必ず通してください。
リースのものは、手放せません
先に確かめるところです。
リースで入れている機器は、自分のものではありません。ですから、売ることも譲ることもできません。
途中でやめたい場合は、契約を解く話になります。そして、残りの期間の分をまとめて払うことを求められるのが一般的です。
つまり、買った機器と、リースの機器では、やめ方がまったく違うということです。
どちらなのか分からなくなっている場合は、契約書を確認してください。毎月同じ額が引き落とされているものは、リースであることが多くあります。
そして、リースが終わったあと、そのまま使い続けている機器があるかもしれません。この場合、所有が自分に移っていることがありますので、そこも確かめてください。
内装や造作は、話が別になります
もう一つ、分けておくところです。
賃貸の物件に入れた内装、給排水の工事、造作。これらは、持ち運べません。
ですから、店を続けるかぎり手放せませんし、退去するときは原状回復の話になります。
そして、まだ帳簿に価値が残っている状態で撤去した場合、その分の扱いが出てきます。
改装を考えているなら、いま入っているものが帳簿にいくら残っているかを、先に確かめてください。判断そのものはサロンの改装をどう決めるかで扱っていますが、そこに書かれていない数字がここにあります。
同業に売るときの注意
最後に、実務の話です。
知り合いに売る場合、金額の話がしにくくなります。相場も分かりません。
そして、売ったあとに調子が悪くなった場合、「聞いていない」と言われることがあります。関係が近いほど、こじれます。
ですから、渡す前に状態を伝えて、そのやり取りを記録に残してください。使用した年数、直した履歴、いま出ている不具合。
そのうえで、「現状のまま渡します」ということを、一言でよいので書面にしてください。金額を書いた紙に一行添えるだけで足ります。
使わないまま置いておくと
冒頭に書いた四つめです。
処分するのが面倒で、倉庫や店の奥に置いたまま。よくあることです。
ところが、これには費用がかかります。
一つは、場所です。置いておく分だけ、店が狭くなります。
もう一つは、税です。事業用の設備には、市区町村へ申告して納める税があります。そして、使っていなくても、持っている限りは対象に残ります。
つまり、使わないものを置いておくことに、毎年お金がかかっているということです。
年に一度、店の中を見回して、この一年で一度も使わなかったものを書き出してください。そして、手放すかどうかを決めてください。
手放す時期を、年で考える
判断の材料です。
損が出る形で手放す場合、それを計上するのは手放した年です。
ですから、利益が出ている年に手放せば、その年の負担が軽くなります。逆に、赤字の年に手放しても、効き方は小さくなります。
とはいえ、税のために使える機器を捨てるのは本末転倒です。
ですから、もともと手放すつもりのものが複数あるなら、その年をいつにするかだけを考えてください。順番の話であって、捨てるかどうかの話ではありません。
消費税を納めている場合
もう一段あります。
消費税を納める立場になっている場合、機器を売った代金は、消費税の計算に関わってきます。
つまり、施術の売上と同じように、預かった分として扱われます。
金額が大きくなることもありますので、納める立場になっているなら、売る前に税理士へ伝えてください。
| 手放し方 | 押さえるところ |
|---|---|
| 売る | 施術の売上とは別の区分。帳簿の価値との差で儲けか損かが決まる |
| 下取り | 実際は「売って、買っている」。それぞれの金額が分かる形にしてもらう |
| 譲る | 帳簿から外す。価値が残っていれば損に。家族へは扱いが変わることも |
| 捨てる | 損として計上できる。ただし処分した証拠(領収書・伝票・写真)が要る |
| 置いておく | 場所を取り、設備にかかる税の対象にも残り続ける |
| 情報 | 予約や顧客の情報は、消してから手放す |
| 時期 | 損が出るなら、利益が出ている年に手放すほうが効く |
今日やる一つ
店の中を見回して、この一年で一度も使わなかった機器や什器を書き出してください。そして、そのうち一つだけ、手放し方を決めてください。全部を一度に片づけようとすると、また来年になります。
よくある質問
機器を売った代金は売上に入れますか
入れないでください。施術の売上とは性質が違い、事業に使っていた資産を手放したことによるものとして、別の区分で扱われます。
儲けが出たかはどう判断しますか
受け取った額と、帳簿に残っている価値との差で決まります。帳簿の価値より高く売れれば差の分が出ますし、安ければ損として扱われます。いくらで売れたかだけを見ても判断できません。
帳簿の価値はどこで分かりますか
会計ソフトを使っているなら、資産の一覧で見られます。手放す前に、その機器がいま帳簿でいくらになっているかを確かめてください。
下取りに出す場合はどうなりますか
請求書に差し引いた後の金額だけが書かれていることがありますが、実際には「古いものを売り、新しいものを買っている」ことになります。それぞれの金額が分かる形にしてもらってください。分からないと、新しい機器をいくらで計上するかも決まりません。
知り合いに譲る場合は
帳簿からは外します。価値が残っていれば、その分は損として扱われます。ただし相手が家族や親族の場合は扱いが変わることがありますので、税理士に確認してください。
譲るときも記録は要りますか
いつ誰に渡したかを残してください。あとで「まだ持っている」と扱われると面倒になります。
捨てた場合は何が必要ですか
帳簿に価値が残っていれば損として計上できますが、捨てたという証拠が要ります。処分の費用の領収書、業者の伝票、処分する前の写真。証拠が無いと、帳簿に残ったままになります。
情報が入っている機器はどうしますか
予約や顧客の情報が入っている機器、パソコン、タブレットは、中の情報を消してから手放してください。初期化しただけでは残ることがあります。お客様の情報が外に出ると、金額の問題では済みません。
使わないまま置いておいてはいけませんか
場所を取るうえに、事業用の設備には市区町村へ申告して納める税があり、使っていなくても持っている限りは対象に残ります。使わないものを置いておくことに、毎年お金がかかっているということです。
手放す時期は関係しますか
損が出る形で手放す場合、計上するのは手放した年です。利益が出ている年に手放せば、その年の負担が軽くなります。ただし、税のために使える機器を捨てるのは本末転倒ですので、もともと手放すつもりのものについて順番を考える、という使い方にしてください。
消費税の扱いはどうなりますか
納める立場になっている場合、機器を売った代金は消費税の計算に関わってきます。施術の売上と同じように、預かった分として扱われます。金額が大きくなることもありますので、売る前に税理士へ伝えてください。
リースの機器も売れますか
売れません。自分のものではないためです。途中でやめたい場合は契約を解く話になり、残りの期間の分をまとめて払うことを求められるのが一般的です。どちらなのか分からなくなっている場合は、契約書を確認してください。
リースが終わったあとも使っています
その場合、所有が自分に移っていることがあります。移っていれば、売ることも譲ることもできますので、契約の内容を確かめてください。
内装や造作はどうなりますか
持ち運べませんので、店を続けるかぎり手放せず、退去するときは原状回復の話になります。まだ帳簿に価値が残っている状態で撤去した場合は、その分の扱いが出てきますので、改装の前に残っている額を確かめてください。
知り合いに売るときの注意はありますか
金額の話がしにくく、売ったあとに調子が悪くなると「聞いていない」と言われることがあります。関係が近いほどこじれますので、使用した年数・直した履歴・いま出ている不具合を伝え、そのやり取りを記録に残してください。「現状のまま渡します」と一行、書面にしておくと安全です。
まだ使える機器を捨てるべきですか
使えるなら、まず売るか譲るかを考えてください。捨てるのは、引き取り手がない場合です。ただし、置いたままにするのは避けてください。
何から手をつければよいですか
この一年で一度も使わなかったものを書き出すことからです。そして、そのうち一つだけ手放し方を決めてください。全部を一度に片づけようとすると、また来年になります。

