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資金・融資・補助金

年の途中で先に納める税金|減らす申し出には期限があります

公開: 2026年8月25日

夏に、税務署から封筒が届きました。

開けると、税金の額が書いてあります。申告はもう済ませたはずなのに、また払えということです。

しかも、金額が小さくありません。

心当たりを探しても、思い当たりません。去年は忙しかったので、たしかに税金は多めに納めました。ですが、今年は違います。近くに新しい店ができて、お客様が減っています。

去年の話で、今年のお金を持っていかれる。

そういう仕組みだと知らないまま受け取ると、たいていの人は驚きます。そして、驚いたまま払ってしまいます。

減らせる場合があることを、知らないからです。

去年の実績で、今年の分を先に納めます

まず、この封筒が何なのかをはっきりさせます。

所得税は、その年の所得が確定してから納めるのが基本です。ですが、去年それなりの額を納めた人については、今年も同じくらい納めるだろうと見込んで、年の途中で先に納めさせる仕組みがあります。

理由は二つあります。国の側から見れば、税収が一年分まとめて入るより平準化されるほうが都合がよいこと。そして納める側から見ても、一度に大きな額を用意するより分けたほうが楽なはずだ、という考え方です。

後半の理屈は、売上が安定している人には当てはまります。

問題は、去年と今年で状況が変わっている人です。この仕組みは、去年の数字しか見ていません。

前払いの流れを示した図。1は去年の申告で、納めた税額が基準になる。2は通知が届く段階で、税務署の側が計算するため自分では計算しない。3は年の途中で納める段階で、手元の資金が先に減る。4は確定申告で、その年の税額から差し引かれる。損得ではなくいつ払うかの話だが、戻るのは申告のあとになる。
前払いの流れを示した図。1は去年の申告で、納めた税額が基準になる。2は通知が届く段階で、税務署の側が計算するため自分では計算しない。3は年の途中で納める段階で、手元の資金が先に減る。4は確定申告で、その年の税額から差し引かれる。損得ではなくいつ払うかの話だが、戻るのは申告のあとになる。

自分で計算するものではありません

通知は、税務署の側から送られてきます。

去年の申告書をもとに、あちらが計算しています。ですから、自分で「今年はいくらだろう」と計算して用意しておくものではありません。

これが厄介なところです。何もしなければ、そのまま納めることになります。

そして、届く時期は年の途中です。年が明けてから慌てるのではなく、夏に手元の資金を減らす出来事が起きる、と考えておいてください。資金繰りの組み立て方はサロンの資金繰り表を5行で作る|利益が出ているのに払えない理由で扱っています。

今年が去年より落ちるなら、減らせます

ここからが本題です。

今年の見込みが去年より低いなら、その分を減らしてくださいと申し出ることができます。

申し出が認められれば、先に納める額は下がります。何もしなければ、去年の水準のまま納めることになります。

つまり、動いた人だけが減らせる形です。通知の紙には、そういう制度があることが書かれていますが、多くの人は金額だけを見て封筒を閉じます。

減らせる場面は、思ったより身近です。

  • 近くに競合ができて、来店が減っている
  • 体調を崩して、施術できる日数が減った
  • 産休や育休で、営業を縮小している
  • スタッフが辞めて、回せる客数が落ちた
  • 去年だけ特別な売上があった。物販が当たった年、式場の仕事が続いた年

最後の一つは見落とされがちです。去年が良すぎただけで、今年が悪いわけではない場合も、去年基準の前払いは重くなります。

申請には、期限があります

そして、ここが最大の落とし穴です。

減らしてくださいという申し出には、提出の期限が決められています。期限を過ぎると、その分についてはもう減らせません。

具体的な期日は、制度の改正で動きます。ですから、この記事には書きません。

書けるのは、次のことだけです。通知が届いてから期限まで、それほど長くはありません。届いた封筒を開けずに置いておくと、それだけで選択肢が一つ消えます。

届いたら、その日のうちに期限だけ確認してください。中身を読み込むのは、あとでかまいません。

何を根拠に示すのか

「今年は少ない見込みです」と言うだけでは通りません。

見込みであっても、根拠のある見込みである必要があります。求められるのは、だいたい次のようなものです。

  • 年の途中までの、実際の売上と経費
  • そこから年末までを見通した計算
  • 落ち込みの理由が分かる資料

つまり、途中までの数字が出せる状態でなければ、そもそも申し出ができません。

ここで効いてくるのが、日々の記帳です。年に一度、確定申告の直前にまとめて入力している人は、夏の時点で今年の数字を持っていません。数字が無ければ、根拠も作れません。

毎月の記帳を続けている人だけが、この制度を使えます。習慣の作り方はサロンの経費管理を月末30分で回す|記帳の習慣と家事按分の考え方にまとめてあります。

制度を使うために記帳するわけではありませんが、結果として記帳している人が得をする場面の一つです。

通知が届いたあとの順番を示した図。1は届いた日のうちに封筒を開ける、2は期限を見る、3は年の途中までの売上と経費を出す、4は申し出る。記帳していて今年の数字が手元にある人だけが根拠を作れる。一度期限を逃しても、後のほうの分についてあらためて申し出られる場合があるが、納めた分はさかのぼって戻らない。
通知が届いたあとの順番を示した図。1は届いた日のうちに封筒を開ける、2は期限を見る、3は年の途中までの売上と経費を出す、4は申し出る。記帳していて今年の数字が手元にある人だけが根拠を作れる。一度期限を逃しても、後のほうの分についてあらためて申し出られる場合があるが、納めた分はさかのぼって戻らない。

通らないこともあります

申し出れば必ず減るわけではありません。

見込みの根拠が薄いと判断されれば、そのままになります。また、減らす額が申し出たとおりになるとも限りません。

ですから、減額されることを前提に資金を組まないでください。申し出はしておいて、通らなかった場合の資金も一応用意しておく。この順番が安全です。

一度逃しても、もう一度の機会がある場合があります

期限を過ぎたから今年は終わり、と決めつけないでください。

前払いは年の途中に分けて納める形になっているため、後のほうの分について、あらためて申し出られる場合があります。そのときには、より後の時点までの実績が手元にあるので、見込みの根拠はむしろ作りやすくなっています。

ただし、こちらにも期限があります。そして、すでに納めてしまった分がさかのぼって減るわけではありません。

一度目に間に合わなかった場合は、次の機会がいつなのかを税務署か税理士に確認してください。何もしなければ、そのまま最後まで去年の水準で納めることになります。

消費税にも、同じ構造があります

所得税だけの話ではありません。

消費税を納めている場合も、前の年の税額が一定を超えると、年の途中で先に納めることになります。自分が納める側かどうかは消費税を納める側になる境目|売上の基準と、備えの時期で確かめられます。

しかも、回数が一律ではありません。前の年にどれだけ納めたかによって、年に何回納めるかが変わります。納めた額が大きいほど、回数が増える仕組みです。

所得税と消費税の両方で前払いが発生すると、年の途中で出ていく額はかなりのものになります。片方だけを見ていると、資金繰りの見通しが崩れます。

消費税は、計算し直す方法もあります

消費税の側には、もう一つ選べる道があります。

前の年の実績で決められた額をそのまま納めるのではなく、その期間について実際に計算して、その結果で納める方法です。

今年の売上が落ちているなら、こちらのほうが少なくなります。

ただし、実際に計算するということは、その期間について申告と同じ作業をするということです。事務の手間は増えます。

金額の差と手間を比べて決めることになります。ここは税理士に、両方の見込みを出してもらうのが早いはずです。

先に納めた分は、最後に精算されます

大事な前提を一つ。

年の途中で納めた分は、取られっぱなしではありません。確定申告のときに、その年の税額から差し引かれます。

納めすぎていれば、戻ってきます。

ですから、長い目で見れば損得の話ではありません。同じ額を、いつ払うかという話です。

問題は、その「いつ」が経営に効くことです。

戻るからといって、放っておけません

戻ってくるなら気にしなくてよい、とはなりません。

戻るのは申告のあとです。それまでの数か月から一年近く、そのお金は手元にありません。

その間に設備が壊れたら。仕入れの支払いが重なったら。手元にお金が無いという状態そのものが、経営を狭めます。

開業して間もない時期であれば、なおさらです。入金と支払いのずれについては開業直後のキャッシュフロー管理|入金サイクルと支払サイクルのズレにどう備えるかで扱っています。

減らせるものは減らしておく。それだけの話です。

二年目に、まとめて来ます

開業した人が最初につまずくのが、ここです。

一年目は、税金の負担が軽く見えます。所得が確定していないので、先に納めるものが無いからです。

二年目に、まとめて来ます。前の年の所得に対する住民税、国民健康保険の保険料、そして所得税の前払い。これらが重なります。

一年目の売上をそのまま使ってしまうと、二年目にきつくなります。売上が少なかった年の考え方は開業したばかりで売上がまだ少ないサロンオーナーも確定申告は必要か|赤字申告のメリットにまとめてあります。

一年目に儲かった人ほど、二年目に効いてきます。

住民税と保険料には、同じ仕組みがありません

ここは、はっきり分けて理解しておいてください。

所得税の前払いは、今年の見込みが低ければ減らしてくださいと申し出られます。ところが、同じ時期に来る住民税と国民健康保険の保険料には、この「見込みで減らす」という仕組みがありません。

これらは去年の所得で額が確定しており、今年どうなるかは反映されないからです。

減らす方向の道がまったく無いわけではありませんが、それは見込みによる調整ではなく、災害や失業など事情がある場合の減免として、別の窓口で別の判断がなされるものです。

つまり、夏に出ていく三つのうち、見込みで動かせるのは所得税の分だけです。残りは動かせないものとして、先に資金を分けておくしかありません。

ここを混同して「全部まとめて相談すれば減るはず」と考えると、当てが外れます。

夏に出ていく三つのうち、動かせるのは一つだけであることを示した図。見込みで減らせるのは所得税の前払いで、今年の見込みが去年より低ければ申し出ることができる。見込みでは減らせないのが住民税と国民健康保険の保険料で、去年の所得で額が確定している。災害や失業などの減免は、窓口も判断のしかたも別。
夏に出ていく三つのうち、動かせるのは一つだけであることを示した図。見込みで減らせるのは所得税の前払いで、今年の見込みが去年より低ければ申し出ることができる。見込みでは減らせないのが住民税と国民健康保険の保険料で、去年の所得で額が確定している。災害や失業などの減免は、窓口も判断のしかたも別。

口座引き落としにしている場合

納付を口座からの引き落としにしている場合、指定された日に自動で引かれます。

便利ですが、届いた通知を開けないまま忘れていると、残高が足りずに引き落としに失敗することがあります。

失敗すると、あらためて納める手続きが必要になり、遅れた分の負担が生じる可能性もあります。

引き落としにしている人ほど、通知が届いた時点で日付と金額を控えておいてください。自動なのは引き落としであって、残高の用意ではありません。

途中でやめた年、休んだ年

年の途中で廃業した場合や、長く休業した場合も、前払いの通知は前の年の実績で作られています。

今年はほとんど売上がないのに、去年基準の額が請求される形です。

こういうときこそ、減らす申し出が効きます。事情がはっきりしているので、根拠も示しやすいはずです。

やめる、休むと決めた時点で、その年の前払いがどうなるかを確認してください。あとから戻ってはくるものの、いちばん資金が細い時期に持っていかれることになります。

通知が来ること自体は、悪い話ではありません

最後に、見方を一つ。

前払いの通知が届くのは、去年それなりに納めたからです。つまり、それだけ利益が出ていたということです。

初めて届いた年は、驚くより先に、そこまで来たことを確認してよい場面です。

そのうえで、今年の見込みと照らして、減らすかどうかを決めてください。仕組みを知らないまま驚いて払うのと、知ったうえで払うのとでは、同じ金額でも意味が違います。

今日やる一つ

去年の申告書の控えを出して、納めた税額の欄を見てください。

そこに書かれた額が、今年の夏に届くかどうかを決めています。額が大きければ、届くと考えて資金を分けておいてください。

そして、届いたら封筒をその日に開けてください。開ける日が遅れるほど、選べることが減ります。

よくある質問

なぜ、申告が終わったのにまた請求が来るのですか

去年の実績をもとに、今年の分を先に納める仕組みがあるためです。取られっぱなしではなく、確定申告のときに精算されます。

今年は売上が落ちています。減らせますか

減らしてくださいと申し出ることができます。ただし提出の期限があり、過ぎるとその分については減らせません。通知が届いたら、まず期限を確認してください。

申し出れば必ず減りますか

必ずではありません。見込みの根拠が薄いと判断されれば、そのままになります。減らす額が申し出たとおりになるとも限りませんので、通らなかった場合の資金も用意しておいてください。

期限を過ぎてしまいました。今年はもう無理ですか

後のほうの分について、あらためて申し出られる場合があります。すでに納めた分がさかのぼって減ることはありませんが、残りについては動かせることがあります。次の機会がいつなのかを確認してください。

何を用意すればよいですか

年の途中までの実際の売上と経費、そこから年末までを見通した計算、そして落ち込みの理由が分かる資料です。途中までの数字が出せる状態であることが前提になります。

記帳が追いついていない場合はどうなりますか

今年の数字が無ければ、根拠を作れません。結果として、申し出そのものが難しくなります。毎月記帳している人だけが使える制度だと考えてください。

消費税にも同じものがありますか

あります。前の年の税額が一定を超えると、年の途中で納めることになります。しかも前の年の税額によって、年に何回納めるかが変わります。

消費税のほうも減らせますか

前の年の実績で決められた額をそのまま納めるのではなく、その期間について実際に計算した結果で納める方法があります。売上が落ちていれば少なくなりますが、申告と同じ作業が必要になるため、手間との比較になります。

納めすぎた分は戻りますか

確定申告のときに精算され、納めすぎていれば戻ります。ただし戻るのは申告のあとで、それまでの期間は手元にありません。

引き落としにしていれば安心ですか

引き落としは自動ですが、残高の用意は自動ではありません。残高が足りないと引き落としに失敗し、あらためて納める手続きが必要になります。通知が届いた時点で日付と金額を控えてください。

開業一年目にも届きますか

一年目は、前の年の所得が確定していないため、原則として届きません。二年目に、住民税や保険料と一緒にまとめて来ます。一年目に儲かった人ほど、ここで効いてきます。

住民税や保険料も、同じように減らせますか

減らせません。これらは去年の所得で額が確定しており、今年の見込みは反映されないためです。災害や失業などの事情がある場合の減免は別にありますが、窓口も判断のしかたも違います。夏に出ていくもののうち、見込みで動かせるのは所得税の分だけだと考えてください。

年の途中で廃業した場合はどうなりますか

通知は前の年の実績で作られているため、売上がほとんど無い年でも請求されます。事情がはっきりしているので、減らす申し出の根拠は示しやすいはずです。決めた時点で確認してください。

分割で納めることはできますか

前払いそのものが、年の途中に分けて納める形になっています。それでも払えない場合は、納付の猶予について税務署の窓口で相談してください。放置して延滞するより先に相談するほうが、選べる道が残ります。

去年だけ特別に良かった場合も同じですか

同じです。仕組みは去年の数字しか見ていないためです。物販が当たった年や大口の仕事が続いた年の翌年は、前払いが重く感じられます。減らす申し出を検討する場面です。

誰に相談すればよいですか

顧問の税理士がいれば、通知が届いた時点で写しを渡してください。いない場合は、税務署の相談窓口で聞けます。制度の名前を覚えていく必要はなく、去年の申告書と今年の途中までの数字を持っていけば話が進みます。