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資金・融資・補助金

家族から開業資金を借りる|信用しているからこそ、形にする

公開: 2026年8月25日

Summary

親や家族から資金を借りるときに決めておくことを整理します。書面が要る3つの理由、自己資金として扱われないこと、書面に書く6項目、利息の扱い、振込で受け取る理由、返済を実際に行う意味、借入と贈与と出資の違い、他の家族への共有、配偶者の場合の違いまでを扱います。

開業の資金が足りず、親に相談しました。「そのくらいなら出すよ」と言ってもらえて、翌週には振り込まれていました。返す約束はしましたが、書面は交わしていません。金額も、返し方も、口で決めただけです。

そのときは、それで十分だと思っていました。家族なのだから、と。

ところが、後から3つの場面で困りました。融資の相談に行ったときに「これは自己資金ですか、借入ですか」と聞かれたとき。数年後に「あれは返さなくていいと言ったつもりだった」と言われたとき。そして、兄弟からその話を持ち出されたとき。

家族から借りるのは、悪い選択ではありません。むしろ現実的な方法です。ただ、家族だからこそ形にしておく必要があります。この記事では、そのために何を決め、何を残すかを整理します。

家族からでも書面が要る3つの理由を並べた図。税の扱い(返す前提のない受け渡しは贈与とみなされる可能性)、金融機関の見方(通帳の大きな入金は出どころを聞かれる)、記憶のずれ(金額も返す時期も数年経てば必ずずれる)。下段に、借りたお金は自己資金とは扱いが違い、曖昧だと審査の場で説明できないことが書かれている。
家族からでも書面が要る3つの理由を並べた図。税の扱い(返す前提のない受け渡しは贈与とみなされる可能性)、金融機関の見方(通帳の大きな入金は出どころを聞かれる)、記憶のずれ(金額も返す時期も数年経てば必ずずれる)。下段に、借りたお金は自己資金とは扱いが違い、曖昧だと審査の場で説明できないことが書かれている。

なぜ、家族なのに書面が要るのか

理由は3つあります。どれも、信用していないから書くのではありません。

1つめは、税の扱いです。返す前提のない受け渡しは、贈与とみなされる可能性があります。返す約束があったことを、あとから口だけで示すのは難しくなります。

2つめは、金融機関の見方です。融資の相談をするときに、通帳に大きな入金があれば、その出どころを聞かれます。そのとき「親から借りました」と言うだけでは、扱いが定まりません。

3つめは、記憶のずれです。貸した側と借りた側で、金額も、返す時期も、そもそも返すのかどうかも、少しずつ違って残ります。悪意はなくても、数年経てば必ずずれます。

書面は、疑うために作るのではありません。数年後の自分たちを助けるために作ります。

自己資金として見られるとはかぎらない

ここは、融資を考えている方には重要です。

創業の融資では、自己資金がどれだけあるかが見られます。そして、借りたお金は自己資金とは扱いが違ってきます。

親から受け取ったお金が、贈与なのか借入なのか。ここが曖昧なままだと、審査の場で説明できません。そして、説明できないものは、良いほうには扱われません。

ですから、融資を受ける予定があるなら、なおさら形をはっきりさせておいてください。贈与なら贈与として、借入なら借入として。どちらであるかが明確なほうが、話が進みます。

創業の融資で見られるものは日本政策金融公庫 創業融資 完全ガイドで扱っています。自己資金の考え方も、そこに整理があります。

書面に書く6項目と、お金の動かし方を並べた図。左は誰が誰に貸すのか、金額、いつ渡すのか、返し方、利息、日付と署名。2通作って双方が持つ。右は現金で受け取らず振込にすること、受ける口座は事業用にすること、返済も決めた日に振込にすること。下段に、利息は自己判断せず専門家に確認すること。
書面に書く6項目と、お金の動かし方を並べた図。左は誰が誰に貸すのか、金額、いつ渡すのか、返し方、利息、日付と署名。2通作って双方が持つ。右は現金で受け取らず振込にすること、受ける口座は事業用にすること、返済も決めた日に振込にすること。下段に、利息は自己判断せず専門家に確認すること。

書面に書くこと

難しい書式は要りません。1枚で足ります。

書くのは次のものです。

  • 誰が誰に貸すのか
  • 金額
  • いつ渡すのか
  • どうやって返すのか(毎月いくら、いつまで)
  • 利息をどうするか
  • 日付と、双方の署名

このうち、決めにくいのが返し方と利息です。ただ、決めにくいからこそ書いてください。決めていないものは、あとで揉めます。

そして、書いたら2通作って、双方が1通ずつ持ってください。片方しか持っていない状態は、無いのと同じになりがちです。

なお、書式そのものは市販のものでも、自分で作ったものでもかまいません。項目が入っていることのほうが大事です。

利息をどうするか

ここは、自己判断しないでください。

家族間で利息を取らない取り決めをすることは、実際によくあります。ただ、無利息であることが税の扱いにどう影響するかは、金額や状況によって見方が変わることがあります。

金額が大きい場合や、返済の期間が長い場合は、専門家に一度確認してください。「親から借りるのですが、書面をこう作ろうと思っています」と伝えれば、見てもらえます。

そして、確認したという事実も記録に残しておいてください。いつ、誰に、何と言われたか。

現金で受け取らない

実務的な注意です。

手渡しで受け取ると、記録が残りません。あとから「いつ、いくら渡したか」を示せなくなります。

ですから、振込にしてください。そして、その通帳は事業用の口座にしてください。生活用に入れてしまうと、事業の資金として使ったことを示しにくくなります。

事業と私用の口座を分ける考え方は事業用と私用を分けるで扱っています。開業のときに借りるのであれば、この分離と同時に進めてください。

返済を、実際に行う

いちばん大事なところです。

書面を作っても、返していなければ意味がありません。「返す約束だった」ことを示すのは、返している事実だからです。

ですから、少額でもよいので、決めた日に決めた額を振り込んでください。手渡しにしないでください。ここでも記録が要ります。

そして、返済の記録は残しておいてください。通帳に履歴が残っていれば、それで足ります。

なお、途中で返せなくなった場合は、書面を作り直してください。「そのまま止まっている」状態が、いちばん扱いにくくなります。

返済を、資金繰りに入れる

家族への返済も、支出です。

金融機関への返済と同じように、資金繰りの表に1行として入れてください。入れていないと、あるはずのお金として計算してしまいます。

そして、家族への返済は後回しにしやすいものです。催促されないからです。ただ、後回しにした結果、何年も返さないまま来てしまう例は多くあります。

作り方はサロンの資金繰り表を5行で作るで扱っています。金融機関の返済の下に、もう1行足すだけです。

借入・贈与・出資の3つを並べた図。借入は返せば関係が終わり経営に口を出す立場ではない。贈与は返さないが税の扱いが別に生じる。出資は相手が事業に関わる立場になり、利益の分配や経営への関与が生じうる。下段に、他の家族への共有と、借りる場合でも金融機関に相談する理由。
借入・贈与・出資の3つを並べた図。借入は返せば関係が終わり経営に口を出す立場ではない。贈与は返さないが税の扱いが別に生じる。出資は相手が事業に関わる立場になり、利益の分配や経営への関与が生じうる。下段に、他の家族への共有と、借りる場合でも金融機関に相談する理由。

出資と借入は、別のもの

混同しないでください。ここを曖昧にすると、あとで大きな問題になります。

借入は、返すお金です。返し終われば関係は終わります。相手は、店の経営に口を出す立場にはありません。

一方、出資として受け取ると、相手は事業に関わる立場になります。利益の分配や、経営への関与が発生しうる形です。

家族が「応援するから」と言ってお金を出す場合、どちらのつもりなのかが曖昧なままになりがちです。そして、うまくいったときにも、うまくいかなかったときにも、そこで食い違います。

ですから、受け取る前に確認してください。「これは返すお金として受け取ってよいですか」。この一言で、後の何年かが変わります。

共同で事業を行う形については共同経営の取り決めで扱っています。出資に近い形を考えているなら、そちらを先に読んでください。

他の家族に伝えておく

見落とされやすい点です。

親から借りた場合、他の兄弟姉妹は知らないことがあります。そして、何年か経ってから、別の場面でその話が出てきます。

とくに、相続に関わる場面では、過去の受け渡しが問題になることがあります。借入なのか贈与なのかで扱いが変わりますし、書面がなければ主張のしようがありません。

ですから、伝えておいてください。全員に細かく説明する必要はありませんが、「借りていて、返している」という事実だけは共有しておくほうが安全です。

とくに、いずれ店を継ぐ話が出ている場合は、早めに整理しておいてください。お金の受け渡しと事業の引き継ぎが混ざると、どちらの話をしているのか分からなくなります。

配偶者から借りる場合は、また別

同じ「家族から」でも、配偶者の場合は考え方が変わります。

生計を一つにしている相手とのやり取りは、親から借りる場合とは扱いが違ってくることがあります。同じ財布から出ているものを、貸し借りとして扱えるのかという問題です。

そして、事業を手伝ってもらっている場合は、給与との関係も出てきます。貸してもらったのか、働いてもらったのか、生活費として出してもらったのか。この3つが混ざると、あとから整理できません。

ですから、配偶者との間でお金が動く場合は、親から借りるとき以上に、専門家に確認する価値があります。金額が小さくても、毎年繰り返されるぶん、積み上がると大きくなります。

返し終わったあと

これも決めておいてください。

返済が終わったら、その事実を書面に残してください。「◯年◯月◯日をもって完済」と1行書き、双方が確認すれば足ります。

そして、借用の書面と、返済の記録は捨てないでください。何年か経ってから話が出ることがありますし、相続の場面で必要になることもあります。

保管の場所は、事業の書類と一緒でかまいません。ただ、家族に関わるものなので、どこにあるかを配偶者には伝えておいてください。

関係が壊れるリスクを、見込んでおく

正直な話をします。

家族から借りると、関係の性質が変わります。返済が遅れれば気まずくなり、店の調子を聞かれるたびに構えるようになります。

そして、貸した側は「口を出すつもりはない」と言いながら、心配から意見を言うようになります。それが助言なのか干渉なのかは、受け取る側の状態によって変わります。

ですから、借りる前に一度考えてください。この関係を、返し終わるまで維持できるか。数年かかることもあります。

金額を小さくする、期間を短くする、あるいは借りないという判断も、十分に成り立ちます。

借りないという選択

最後に、これも書いておきます。

家族から借りるのは、審査がなく、早く、金利の面でも有利になりがちです。だから選びたくなります。

ただ、金融機関から借りる場合、審査という過程で計画を見てもらえます。無理のある計画なら、そこで止まります。家族からの借入には、その機能がありません。

つまり、通らない計画のまま始められてしまう、という危うさがあります。

ですから、家族から借りる場合でも、金融機関に相談だけはしてみてください。借りるかどうかは別として、計画を第三者に見てもらう価値があります。

自己資金と融資と補助金の組み合わせ方は自己資金・融資・補助金をどう組み合わせるかで扱っています。家族からの借入も、その組み合わせの一部として位置づけてください。

決めること内容
性質借入か贈与か出資か。受け取る前に確認する
書面誰が誰に・金額・時期・返し方・利息・日付と署名。2通作る
利息自己判断しない。金額が大きいなら専門家に確認
受け取り方現金ではなく振込。事業用の口座で受ける
返済少額でも決めた日に振込。手渡しにしない
資金繰り家族への返済も1行として入れる
他の家族「借りていて、返している」という事実だけは共有する
借りる前金融機関にも相談する。計画を第三者に見てもらう

今日やる一つ

家族から受け取ったお金があるなら、それが借入なのか贈与なのかを、いまはっきりさせてください。曖昧なままなら、相手に一度聞いてください。「あれは返すお金でよかったですか」。何年経っていても、聞くのが早いほど扱いは簡単になります。

よくある質問

家族からでも書面は要りますか

要ります。信用していないから書くのではありません。税の扱いで贈与とみなされる可能性があること、融資の相談で出どころを聞かれること、そして数年経てば記憶が必ずずれること。この3つが理由です。

自己資金として認められますか

借りたお金は自己資金とは扱いが違ってきます。贈与なのか借入なのかが曖昧なままだと、審査の場で説明できません。融資を受ける予定があるなら、なおさら形をはっきりさせておいてください。

書面には何を書きますか

誰が誰に貸すのか、金額、いつ渡すのか、どうやって返すのか、利息をどうするか、日付と双方の署名。1枚で足ります。決めにくいのは返し方と利息ですが、決めにくいからこそ書いてください。2通作って双方が持ちます。

利息は取るべきですか

自己判断しないでください。家族間で利息を取らない取り決めはよくありますが、無利息であることが税の扱いにどう影響するかは、金額や状況によって見方が変わることがあります。金額が大きい場合は専門家に確認してください。

現金で受け取ってもよいですか

振込にしてください。手渡しでは記録が残らず、いつ、いくら渡したかを示せなくなります。そして、受け取る口座は事業用にしてください。生活用に入れると、事業の資金として使ったことを示しにくくなります。

返済が遅れています

書面を作り直してください。「そのまま止まっている」状態が、いちばん扱いにくくなります。そして、返している事実こそが「返す約束だった」ことを示すものですので、少額でも続けてください。

家族への返済も資金繰りに入れますか

入れてください。入れていないと、あるはずのお金として計算してしまいます。家族への返済は催促されないぶん後回しにしやすく、何年も返さないまま来てしまう例が多くあります。

「出資」と言われました

借入と出資は別のものです。借入は返せば関係が終わりますが、出資として受け取ると相手は事業に関わる立場になります。受け取る前に「これは返すお金として受け取ってよいですか」と確認してください。

他の家族に伝えるべきですか

「借りていて、返している」という事実だけは共有しておくほうが安全です。相続に関わる場面で過去の受け渡しが問題になることがあり、借入か贈与かで扱いが変わります。書面がなければ主張のしようがありません。

関係が悪くなりませんか

関係の性質は変わります。返済が遅れれば気まずくなり、心配から意見を言われるようになります。借りる前に、この関係を返し終わるまで維持できるかを考えてください。金額を小さくする、借りないという判断も成り立ちます。

家族から借りれば審査が要らないので楽です

そこが危うい点でもあります。金融機関の審査には、無理のある計画をそこで止める機能があります。家族からの借入にはそれがありません。借りるかどうかは別として、金融機関に相談だけはして、計画を第三者に見てもらってください。