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資金・融資・補助金

回収できなかった売上|諦めた分を、税の計算から落とす

公開: 2026年8月25日

Summary

面貸しの席料や法人との取引で代金が回収できなくなったときに、諦めたあとに残っている手続きを整理します。売上をいつ立てているかで扱いが正反対になること、落とせると言える三つの形、連絡が取れないだけでは足りないこと、消費税の側の調整、残す書類、処理する年、廃業する年の整理までを扱います。

面貸しで席を使ってもらっていた方が、来なくなりました。

三か月分の席料が、そのままです。電話をかけても出ません。共通の知人に聞いても、連絡が取れないと言われました。

しばらくは待ちました。事情があるのかもしれないと思ったからです。

半年が過ぎて、諦めました。金額を考えると、専門家に頼んで取り立てるほうが高くつきます。

ここで、たいていの人は終わりにします。

もったいない話です。諦めたあとに、もう一つだけ残っている手続きがあるからです。

諦めたあとに、もう一つ残っています

回収できなかったお金は、そのまま損して終わり、ではありません。

考えてみてください。その席料は、売上として帳簿に載っています。載っているということは、その分にも税金がかかっているということです。

入ってこなかったお金に、税金だけ払っている状態です。

これを直す仕組みがあります。回収できないと判断した分を、その年の経費として落とす形です。

つまり、取り戻せるのはお金そのものではなく、そのお金にかかっていた税金のほうです。全額ではありませんが、何もしないよりは残ります。

ただし、売上に上げていなければ話が変わります

ここが、いちばん取り違えられるところです。

多くのサロンは、その場で代金をいただきます。ですから、入金があった日に売上として記録している方が少なくありません。日々の記帳のしかたはサロンの経費管理を月末30分で回す|記帳の習慣と家事按分の考え方で扱っています。

入金の日に売上を立てているなら、入ってこなかったお金は、そもそも帳簿に載っていません。

載っていないものは、落とせません。

これは損をしているわけではなく、二重に数えないための当然の話です。最初から売上に入れていないので、税金もかかっていません。だから、あらためて落とす必要がないのです。

問題になるのは、施術や納品をした時点で売上に立てている場合です。面貸しの席料、法人との取引、物販の掛売り。これらは請求書を出した時点で売上に上げていることが多いはずです。

自分がどちらのやり方をしているのか。まず、そこを確かめてください。

売上をいつ立てているかで扱いが変わることを示した図。入金の日に売上を立てている場合、入ってこなかった分はそもそも帳簿に載っておらず、載っていないものは落とせない。二重に数えないための扱い。施術や納品の日に売上を立てている場合は、入っていないのに売上に載り、その分にも税金がかかっているため、落とす手続きの対象になる。
売上をいつ立てているかで扱いが変わることを示した図。入金の日に売上を立てている場合、入ってこなかった分はそもそも帳簿に載っておらず、載っていないものは落とせない。二重に数えないための扱い。施術や納品の日に売上を立てている場合は、入っていないのに売上に載り、その分にも税金がかかっているため、落とす手続きの対象になる。

どういうときに落とせるのか

「回収できないと思った」だけでは足りません。思っただけで落とせるなら、誰でも好きなときに税金を減らせてしまうからです。

落とせると言える状況は、おおまかに三つの形に分かれます。

  • 法的な手続きによって、その債権が正式に消えた場合
  • 相手の状況から見て、全額が回収できないことがはっきりしている場合
  • 取引をやめてから相当の期間が経ち、督促しても返ってこない場合

一つ目は、はっきりしています。書面が残るからです。

二つ目は、判断が要ります。相手に財産がなく、支払える見込みがないことが客観的に分かる状態を指します。連絡が取れないというだけでは、この状態にあたるとは限りません。

三つ目は、期間の条件があります。ただし、この期間の長さや細かい要件は税務の通達で決まっており、状況によって当てはまり方が変わります。ここに具体的な月数を書くと、それを鵜呑みにして判断を誤る方が出ますので、書きません。税務署か税理士に、自分の状況を伝えて確かめてください。

落とせると言える三つの形を並べた図。一つ目は法的な手続きで債権が正式に消えた場合で、書面が残る。二つ目は相手の状況から全額回収できないとはっきりしている場合で、判断が要る。三つ目は取引をやめてから相当の期間が経ち、督促しても返ってこない場合で、期間の条件がある。連絡が取れないというだけでは当てはまるとは限らない。
落とせると言える三つの形を並べた図。一つ目は法的な手続きで債権が正式に消えた場合で、書面が残る。二つ目は相手の状況から全額回収できないとはっきりしている場合で、判断が要る。三つ目は取引をやめてから相当の期間が経ち、督促しても返ってこない場合で、期間の条件がある。連絡が取れないというだけでは当てはまるとは限らない。

「連絡が取れない」だけでは足りません

冒頭の例に戻ります。

電話に出ない。住所も分からない。これだけでは、相手にお金がないことの証明にはなりません。単に避けられているだけかもしれないからです。

ですから、諦める前に、やっておくと後で効くことがあります。

  • 請求書を送った記録を残す
  • 内容証明などの形で、督促した事実を残す
  • 相手の状況について分かったことを書き留めておく
  • 連絡を試みた日付と方法を、一覧にしておく

これは取り立てのためというより、あとで「回収できない状態だった」と説明するための材料です。

面倒に見えますが、やっていない場合との差は大きくなります。何もしていないと、税務の側から見たときに、単に請求をやめただけの状態と区別がつかないからです。

面貸しの相手との取り決めそのものは面貸し利用時の業務委託契約書で確認すべき条項(利用料・時間帯・キャンセル規定・管理美容師の所在)で整理しています。契約の段階で支払いの期日を決めておくと、この場面での説明がしやすくなります。

消費税を納めているなら、そちらでも調整があります

見落とされやすいのが、消費税の側です。

売上に立てたということは、その中に預かった消費税も含まれています。回収できなければ、預かっていない消費税を納めることになります。

これについても、調整する仕組みがあります。回収できなくなったことがはっきりした期間に、その分に対応する消費税を差し引く形です。

自分が納める側なのかどうかは消費税を納める側になる境目|売上の基準と、備えの時期で確かめられます。

ただし、条件があります。売上を立てたときに免税だったなら、この調整は使えません。そのときは消費税を納めていないので、差し引くものがないからです。

所得税のほうは落とせて、消費税のほうは落とせない。そういう組み合わせが起こりえます。両方を同じ話だと思っていると、計算が合わなくなります。

書類が要ります

落とす処理には、根拠になる書類の保存が求められます。

何を残すかは、どの形で落とすかによって変わります。法的な手続きなら、その通知や決定の書面です。相手の状況による場合は、状況を確かめた記録です。期間の経過による場合は、最後の取引の日と、その後の督促の記録です。

書類の保存そのものの考え方は領収書と帳簿の保存|紙で残すか、データで残すかで扱っています。

処理をした年の書類だけを残せばよい、という話ではありません。いつの売上なのかを示すために、元の請求書や取引の記録もさかのぼって必要になります。

だから、諦めた時点で一式をまとめておくことをおすすめします。数年後に見返したとき、記憶だけでは復元できません。

個人的に貸したお金は、別の話です

同じ「返ってこないお金」でも、事業と関係のないものは経費になりません。

知人にお金を貸した。スタッフに個人的に立て替えた。こういうものは、事業の売上から生まれた債権ではないからです。

見分け方は単純で、そのお金がもともと売上として計上されたものかどうかです。売上ではないなら、落とす対象になりません。

スタッフへの貸付は、判断が分かれる場面です。給料の前渡しなのか、個人的な貸し借りなのか。帳簿でどう処理していたかによって扱いが変わりますので、金額が大きいときは税理士に見てもらってください。

前払いの回数券は、逆向きの話です

ここで混同しやすいものを一つ整理しておきます。

回数券や前払いのチケットを買ったまま、来なくなった方がいる場合。これは、お金が返ってこない話ではありません。逆に、お金は受け取っています。

受け取ったまま役務の提供が終わらない状態が続くと、どこかの時点で収入として確定させる処理が要ります。つまり、税金が増える方向の話です。

未回収の処理と、未使用の前受けの処理。この二つを一緒に考えると、必ず混乱します。年に一度、それぞれ別々に棚卸ししてください。

落とすのは、どの年か

これが実務では、いちばん厄介です。

回収できないと言える状態になった年に処理する、というのが原則です。自分の好きな年を選べるわけではありません。

そして、あとから気づいて前の年に戻そうとしても、簡単ではありません。申告済みの年を直すには別の手続きが要り、それにも期限があります。

ですから、年末に一度、未回収の一覧を見る習慣をつけてください。「まだ待ってみよう」を毎年繰り返しているうちに、落とせるはずだった年が過ぎていきます。

諦めた時点でまとめておくものを示した図。残す記録は、請求書を送った記録、督促した事実が分かるもの、相手の状況について分かったこと、連絡を試みた日付と方法。落とすのは回収できないと言える状態になった年で、好きな年を選べるわけではなく、過ぎてから直すにも期限がある。年末に一度、未回収の一覧を見る。
諦めた時点でまとめておくものを示した図。残す記録は、請求書を送った記録、督促した事実が分かるもの、相手の状況について分かったこと、連絡を試みた日付と方法。落とすのは回収できないと言える状態になった年で、好きな年を選べるわけではなく、過ぎてから直すにも期限がある。年末に一度、未回収の一覧を見る。

サロンで、実際にどこで起きるか

その場で会計が済む商売なので、自分には関係ないと思われがちです。実際には、次のような場面で起きています。

  • 面貸しや業務委託の相手からの、席料や手数料
  • 法人との取引。撮影、式場、施設への訪問、社内イベント
  • 物販を卸したときの代金
  • 事情があって後払いにしたお客様の分
  • 閉店した同業者に貸していた機材や商品の代金

いずれも、共通点があります。その場で現金を受け取らない取引だということです。

言い換えると、後払いを始めた瞬間から、この話が自分ごとになります。回収そのものへの向き合い方はサロンで代金が支払われない場合|その場の対応と、回収の判断にまとめてあります。

金額が小さいときの考え方

少額なら追わない、という判断は経営として合理的です。取り立てにかかる時間で施術をしたほうが、手元に残るからです。

ただし、追わないことと、記録しないことは別です。

記録がなければ、落とす処理もできません。追わない判断をした場合こそ、いつの、誰との、いくらの取引だったかを残してください。数が積み上がると、まとまった金額になります。

そして、年に一度その一覧を見ることで、運用の問題にも気づけます。同じ相手で繰り返しているなら、後払いをやめる判断のほうが先です。

閉めるとき、休むときに残っている分

廃業や休業を考えている場合、未回収の整理は先送りできません。

事業をやめたあとでは、事業の経費として処理する土台そのものが無くなるからです。

やめると決めた段階で、回収する分と諦める分を分けてください。諦める分については、諦めた根拠を残します。

これを最後の申告に間に合わせられるかどうかで、手元に残る額が変わります。

税理士に聞くときの言い方

制度の名前を覚えてから相談する必要はありません。むしろ、次のように状況を伝えるほうが早く進みます。

  • いつの売上か
  • いくらか
  • 相手は誰で、いまどういう状態か
  • 請求と督促を、いつ、どうやったか
  • 自分は消費税を納める側かどうか

この五つが揃っていれば、落とせるかどうかの見当はすぐつきます。逆に、これが曖昧なままだと、何度も確認のやりとりが発生します。

顧問がいない場合は、確定申告の相談窓口でも聞けます。ただし混み合う時期を外してください。

今日やる一つ

帳簿を開いて、入っていない売上があるかどうかを確かめてください。

一件も無ければ、この記事は当面あなたには関係ありません。その場で会計が済む商売の強みです。

一件でもあるなら、いつの分かを書き出してください。それが、この話の出発点になります。

よくある質問

回収を諦めれば、すぐに経費にできますか

できません。諦めたという気持ちではなく、回収できない状態にあることを示せるかどうかで決まります。示し方は状況によって変わりますので、税務署か税理士に確認してください。

売上に上げていない分は、どうなりますか

落とす対象になりません。入金の日に売上を記録しているなら、入ってこなかったお金は最初から帳簿に載っていないためです。損をしているわけではなく、二重に数えないための扱いです。

連絡が取れなくなっただけでも該当しますか

それだけでは足りない場合があります。相手に支払う力がないことがはっきりしている状態と、単に連絡がつかない状態は違うためです。請求と督促の記録を残しておいてください。

消費税のほうも同時に調整されますか

自動では調整されません。納める側であり、かつ売上を立てたときに納める側だった場合に、差し引く処理ができます。免税だった時期の売上については使えません。

白色申告でも使えますか

回収できなくなった分を経費にする処理そのものは、記帳の方式にかかわらず考えられます。ただし、あらかじめ見込みで計上しておく仕組みのほうは、青色申告を選んでいる場合に限られます。詳しくは税理士に確認してください。

いつの年に処理するのか、選べますか

選べません。回収できないと言える状態になった年に処理するのが原則です。過ぎてから気づいた場合、前の年の申告を直す手続きが必要になり、それにも期限があります。

知人に貸したお金も対象になりますか

なりません。事業の売上から生まれたものではないためです。事業と個人の区別は、この場面ではっきり効いてきます。

少額なら、記録も要らないのではありませんか

記録がなければ処理もできません。追わない判断をした場合こそ、いつの、誰との、いくらの取引だったかを残してください。年間で積み上げると、無視できない額になっていることがあります。

回数券を使い切らずに来なくなった方の分は、これに含まれますか

含まれません。そちらは受け取ったお金の話で、扱いが逆になります。未回収と未使用の前受けは、別々に棚卸ししてください。

廃業する年に残っている分は、どうすればよいですか

やめると決めた段階で、回収する分と諦める分を分けてください。事業をやめたあとでは、事業の経費として処理する土台が無くなります。最後の申告に間に合わせられるかどうかで、手元に残る額が変わります。

どのくらい戻るものですか

戻るのは回収できなかった金額そのものではなく、その分にかかっていた税金です。所得の水準によって変わりますので、一律にいくらとは言えません。

相手に請求し続けている途中でも処理できますか

回収する意思がある状態では、まだ回収できないと確定していないと見られる可能性があります。請求を続けるのか、諦めるのか。その判断を先に決めてください。

面貸しの相手の未払いも、同じ扱いですか

売上として計上していたのであれば、同じ考え方になります。契約の段階で支払いの期日を決めておくと、あとで説明しやすくなります。

記録は、どのくらい残せばよいですか

処理をした年の書類だけでなく、元の請求書や取引の記録もさかのぼって必要になります。諦めた時点で一式をまとめておくと、数年後に見返したときに困りません。

毎年少しずつ出る場合は、どうすればよいですか

年に一度、未回収の一覧を確認する習慣をつけてください。「まだ待ってみよう」を繰り返していると、落とせるはずだった年が過ぎていきます。